執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
小荒谷 勝 弁護士
競馬情報提供会社のXと名乗る男から、「絶対に勝てる競馬の情報を30万円で売る」との電話がありました。「インサイダー情報である」「確実に儲かる」との言葉を信じ、30万円を支払いました。ところが、Xの指示どおり馬券を購入したものの当たりませんでした。そのため、競馬情報提供会社に苦情を言ったところ、「Xではなく代わりにYが担当する」「追加で20万円を支払えば次は絶対に当たる情報を提供する」などと説得されて、さらに20万円を支払いました。しかし、今度も当たりませんでした。情報料として支払った合計50万円を返してもらうことはできるでしょうか。
法的根拠を考えてみます。まず、競馬必勝法など存在しないにもかかわらず、「絶対に勝てる」などと言って勧誘した相手の行為は、消費者契約法が定める不実告知や断定的判断の提供にあたるといえます。そして、相手が提供する必勝法を用いれば確実に利益を得ることができると誤認して競馬情報の売買契約を締結してしまったといえます。そこで、消費者契約法に基づいて売買契約を取り消し、売買代金の返還を求める方法が考えられます。
また、競馬必勝法といった存在しない虚偽の情報を持ちかけて勧誘した相手の行為が詐欺であるとして、民法に基づき契約を取り消し、代金の返還を求める方法も考えられます。
なお、信用性も有用性もない競馬の情報を確実な情報であるかのように装って勧誘し、多額の金銭を送金させた詐欺行為が不法行為にあたるとして、損害賠償請求をすることで代金相当額の返還を求める方法も考えられます。もっとも、この方法によると、購入者側に落ち度があるとして、減額されてしまう可能性もあります(これを法律上、過失相殺といいます。)。
ところで、表題の「競馬必勝法」ですが、先述したように、そのようなものは残念ながらありません。日本中央競馬会(JRA)のホームページには、前もって結果が分かっているレースは一切存在しないと掲載されています。国民生活センターの報道発表資料にも、「競馬には様々な不確定要素があることから、『必ず当たる』情報はあり得ない」との記事が掲載されています。競馬は、生身の人間が生きた馬に乗り、様々な気象条件やコースで行われるものですので、絶対はありえません。
以上