執筆:大谷和広法律事務所
大谷 和広 弁護士
最近、苫小牧市内のさまざまな高齢者団体の集まる研修で「個人情報保護法」の解説を頼まれました。「そんな固い話でいいの?」と聞いたら「関心が高いので、ぜひ!」との答え。個人情報に敏感な会員が増え、会員名簿への掲載を断るケースが増えています。運営側は対応が分からず、とまどうのだそうです。
そんなわけで、今回は個人情報保護法について解説します。
法律は約13年前に施行されました。個人情報とは、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど、本人を特定できる情報すべてです。「個人情報」という語感から、私生活の秘密など、人に知られたくないことを連想しがちです。しかし法律では、会員名簿で公表してもあまり支障ないはずの事項を広く個人情報に含めています。
法律は、個人情報の取得や管理について、ルールを決めました。たとえば個人情報を取得する時は、どんな目的に利用するかを定め、本人の同意を得ます。また個人情報を保管する時は、パスワードやウイルスソフトなどの安全対策をし、情報の内容を最新に保つようこころがけます。
法律は、個人情報を扱う事業者に、こうしたルールに従うよう指導しました。昨年法律が改正され、小規模でもすべての個人・団体が事業者に該当します。私が担当した研修では、受講者は全員、なんらかの高齢者団体のリーダーです。よって法改正後は、ルールに従い会員の個人情報を守る立場となりました。
法律が改正されたのは、インターネットと情報端末の普及によって、個人情報の価値が飛躍的に高まったからです。たとえば企業が、「ネットで何を買ったか」「どの検索ワードで何の記事を閲覧したか」などの個人情報を何千万件集めたとします。その情報を分析すると、ある商品はどの客層にどのくらい売れるか、正確な予測ができます。一方、価値のある個人情報を、悪質な事業者に売りつける人もいます。こうして、個人情報を有効活用しつつ、消費者被害は避けるため、ルールを細かく、厳しくする必要が生じました。
最近は、振り込め詐欺などの被害にあう高齢者も増えています。高齢者団体も、会員の個人情報の取り扱いには慎重になる必要があるでしょう。
ただ私見ですが、高齢者団体の役割は、地域社会で互いに顔の見える関係をつくることです。隣人のふだんの暮らしぶりなどの生活情報がないと、誰かが困った時に助けあうことができません。胆振東部地震のような被災時には、緊急性の高い支援から優先的に行う必要があります。地域住民、特に高齢者の生活情報が不足すると、支援が機能せず、人命にかかわる事態となります。
個人情報だけでは地域の人々の顔は見えません。高齢者団体も、顔を合わせて初めて分かる会員の生活情報を、普段からコツコツ集める必要があります。
以上