執筆:むらやま法律事務所
徳永 賢太郎 弁護士
昨今世間を騒がせた大きなニュースとして、東京、池袋の自動車死傷事故の事件がありましたが、社会の声では一部に “あれだけの重大事故であるのに逮捕されないのはおかしい”といった意見があるのを耳にします。しかしながら、弁護士の立場から見ると、この事件は、むしろ“逮捕される方がおかしい!”と考えられるケースでもあると感じています。
日本の報道では、事件が発生して、容疑者が逮捕されたという報道が実に大々的になされるため、逮捕されない=厳重処罰がされない、という感覚がある方もいらっしゃるかと思いますが、それは誤りです。被害者が亡くなる等の重大事件であれば、それだけ厳しい刑事処罰が科される刑事裁判がその後に控えていますから、決して不公平な刑事処罰の運用がなされているのではありません。
逮捕というのは、事件の捜査のために必要であるから容疑者の身柄を拘束するもので、容疑者に罰を与えるためにされるものではないのです。
言い換えれば、この容疑者を逮捕しなくても、容疑者は逃げないし、証拠を隠すこともないだろう、と判断できるだけの材料があれば逮捕はされない、ということになります。
冒頭で触れた事故について報道を見る限りでは、加害者は入院通院の治療が必要な高齢者であり、事故が大々的に報道されていることも考えると、この人が果たして逃亡するだろうか、証拠を隠す余地などあるのだろうか、というところには強い疑問を覚えるところで、それ故に、弁護士の目線から見ると、逮捕されるのはおかしいのではないか、という考えに至るのです。
更に、刑事事件に携わる弁護士から見ると、たとえ容疑者といえども、その人にはその人の生活があり、生活を捨ててまで逃げる人が果たしてどれだけいるのだろうか、という疑問を感じることはよくあります。
あれだけの重大事故であるのに逮捕されないのはおかしい!との意見が広がり、不公平感が沸き上がるのでは、大きな誤解が置き去りにされてしまい、誰の利益にもなっていません。日々多数なされる容疑者が逮捕されたという事件こそ、この事件は本当に逮捕する必要があるのだろうか、という点に焦点を充てた報道が充実することを願うばかりです。
ご自身が逮捕される、ご家族が逮捕されるといった事態が発生することは、非常にショッキングな出来事です。しかし、万が一そういう事態が生じてしまった時は、決してそのショックに負けず、できる限り早急に弁護士に相談をしてください。弁護士であれば、その逮捕はおかしい!と声をあげて、早期の釈放を求めて戦うことができます。
以上