執筆:とまこまい総合法律事務所
竹田 美由紀 弁護士
借りていたマンションやアパートから出ていく時、どのようなことに気をつければよいでしょうか?
出ること(退去)が決まったら、早めに賃貸人に通知します。直前に通知した場合はすぐに解約ができず1か月分以上の賃料を払わなければならないことがあります。
また、退去する時は、部屋に持ち込んだ家具や物はすべて持ち出さなければならず、持っている鍵をすべて賃貸人に返す必要があります。賃貸人の了承なく物を残していたり鍵を返却しないと、退去が完了したことにはならず、契約の内容によっては賃料以上の金額を払わなければならないことがあります。
事前に契約書の内容を確認しておき、余裕をもったスケジュールを組んでおくことをおすすめします。
後日のトラブル防止のため退去の際の立ち会いは必ずしましょう。入居時にも立会って部屋の状況を確認していると、傷や壊れた箇所が借りる前からあったのか住んでいる間に生じたのか判断することができます。
賃貸人から原状回復義務違反を理由に費用を請求されたり、敷金から差し引かれることがありますが、賃借人が責任を負う場合と負わない場合があります。
賃借人が普通に部屋に住み、普通に部屋を使っていても発生すると考えられるものについては、賃借人は責任を負いません。通常の住まい方、使い方をしても、時間が経つと借りた当時の状態よりも悪くなります(これを経年劣化、通常損耗と言います)が、これらの分は賃料の中に含まれているからです。
家具を置いたために床についた跡などは、通常の住まい方、使い方をしても発生するので、賃借人は責任を負いません。床に飲み物などをこぼした場合のシミやカビは、こぼすこと自体は通常の生活をしても起こりうるものですが、シミやカビは手入れ不足で生じたものと考えられますので賃借人は責任を負うと考えられます。
ただし、賃借人が責任を負う場合でも、経年劣化や通常損耗の分は賃料として支払っているため、全額負担させるのではなく、部屋の経過年数を考慮して決める(年数が経つほど少なくする)のが相当であると考えられています。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、このような考え方になっています。
なお、賃貸借契約書に、賃借人が通常損耗による原状回復費用を負担しなければならないと書かれている場合(特約)もありますが、裁判所は、そのような特約があっても無条件に賃借人の義務が認められるものではないと判断しています。また、定めた規定自体を無効と判断したケースもあります。
具体的なケースで判断に迷ったら弁護士に相談してください。
以上