執筆:むらやま法律事務所
徳永 賢太郎 弁護士
弁護士の仕事は、弁護士を含めた法曹の常識と、一般常識とのずれを感じる事が日常茶飯事です。その一つとして、我々弁護士は、①弁護士に相談をするということ、②弁護士に依頼をするということ、③裁判を起こすということは、全く別次元の事であると当たり前に考えていますが、相談対応をしていると、極端に言いますと、弁護士に相談=弁護士に依頼=裁判、という図式で捉えられている方もいらっしゃると感じます。今回はこれらの違いをご説明したいと思います。
弁護士へのアクセスが弁護士への相談から始まるのは間違いありませんが、弁護士への相談は、相談をしたら必ず相談をした弁護士に依頼をしなければならないものでは決してありません。
そのため、当会で運営をしている法律相談センターもそうですが、“相談料は無料です”とうたっているところでご相談だけをするのであれば、一切お金をとられることはありません。相談料が無料であれば、弁護士に相談してみたいことを話し、弁護士からアドバイスを受ける――ここまでは一切費用はかからないのです。
弁護士に相談をした後、自分に代わって問題を解決して欲しいと頼むこと、これが②弁護士に依頼をする、ということです。先ほどお話した①弁護士に相談をする、という場合と異なり、基本的に依頼の内容に応じて弁護士費用がかかりますが、一方で、弁護士に依頼をしたからといって直ちに裁判となるのではありません。
依頼者の代わりとなって、(代理人となって)紛争の相手方と電話や手紙のやりとり等をして、問題が解決するよう相手方との間で話をして、紛争解決に導く、ということも弁護士の重要な業務の一つで、実際に裁判をすることなく依頼が終了することも多くあります。また、相手方の連絡先等がわからず話し合いができない場合、相手方の連絡先等を調べ、話をすることができるようにすることも、弁護士のみが担うことができる大きな役割であると思います。
そして、話をしても紛争解決に至らない、話合いの余地がない、早々に裁判を起こした方がいい…こういった場合に初めて活用するのが③裁判を起こす、という手段です。裁判を起こすということは、弁護士にとっても最終手段なのです。あまりお勧めはしませんが、弁護士に依頼をしなくても、裁判は起こせます。
弁護士に相談をしたら大事になってしまうのではないか、そのような躊躇は無用です。弁護士は、相談にお越しになった方が望んでいないのに、依頼を受けることはしませんし、相談者や依頼者の方が望んでいないのに裁判を起こすこともしません。困ったからちょっと聞いてみるか、くらいの感覚で是非ご相談にお越しください。
以上