執筆:角 大祐 弁護士
交通事故の損害賠償において、「過失相殺」という言葉があります。
皆様の中にも、ジュウゼロ(10:0)とかヒャクゼロ(100:0)という表現を聞いたことがある方もいるかもしれません。被害者に落ち度がなく、加害者に100%の責任があるという意味で、このような言葉が使われることがあります。
典型的には、信号待ち等で停止中に後方から追突されたような事故では、被害者が事故を避けることが不可能ですので、基本的に被害者の落ち度は考えられませんので、いわゆるヒャクゼロ(100:0)の事故となります。
一方、被害者にも、前方不注意などの落ち度があった場合には(先ほどの追突の場合でも、被害者の不要な急停止があった場合等には落ち度が認められます。)、その落ち度の割合に応じて、損害額が減額されることになり、これを法律上、過失相殺と呼んでいます。
過失相殺をする割合(過失割合)については、「動いている車同士」の事故で100:0はないなどと聞いたことがあるかもしれませんが、その説明は正確ではありません。
過失割合は、当事者(歩行者、四輪車、単車、自転車)や事故の類型に応じた基準に従って考えられ、確かに、動いている車同士の事故で100:0の過失割合となる事故類型は多くはありません。
しかし、動いている車同士でも、過失割合が100:0の類型はありますし(例えば、対向車がセンターオーバーしてきたような場合や、交差点の直進車同士の一方が青信号で一方が赤信号無視のような場合)、過失割合の基準も基本的な割合に具体的な個別事情を加味して考えるため、個別事情による修正で、結果として100:0になるというケースもあり得ます。
このように、過失割合の判断は、事故の具体的状況に応じた個別の判断が必要になりますので、過失割合が問題になるような事故においては、専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
以上