執筆:角 大祐 弁護士
銀行のキャッシュカードの偽造あるいは盗難被害に遭ってしまい、気づいた時にはすでに口座から預金が引き出されていた・・・このような場合でも、預貯金者保護法に基づき、原則として、金融機関により被害額が補償されることになっています。
ただし、被害に遭ったことについて、被害者側に「重過失」や「過失」が認められる場合には、全く補償されなかったり、被害の一部しか補償されなかったりするので注意が必要です。100%の補償を受けるためには、次の点に気をつけなければいけません。
1 偽造カード・盗難カード共通の注意事項
被害者に「重大な過失」があった場合には,金融機関による補償は行われません
「重大な過失」とは、具体的には、本人が他人に暗証番号を知らせてしまった場合、本人が暗証番号をキャッシュカード上に書き記していた場合、本人が他人にキャッシュカードを渡してしまった場合などです。
2 盗難カードの注意事項
次に、被害者に「過失」があった場合には、盗難カードについては75%しか補償されなくなります(偽造カードの場合は「過失」があっても全額補償されます。)。
「過失」とは、具体的には、暗証番号が生年月日、自宅や勤務先の電話番号・郵便番号の一部のように他人に推測されやすいものを使用し、かつキャッシュカードと暗証番号を推測させるもの(運転免許証等)を一緒に携帯していた場合などです。
3 補償期間
預貯金者保護法で補償される期間は、被害者が金融機関に被害を通知した日から遡って30日までと限定されています(長期入院や海外出張があったときは30日を超えても補償されることがありますが、その場合でも2年を経過すると補償がされません。)。
そのため、預金者保護法による保護を受けるためにも、通帳の記帳をする習慣のなかった方も、最低でも1か月に1回以上は自分の銀行口座のチェックを行い、不正な出金がないか確認しておくと良いでしょう。
4 キャッシュカードの偽造・盗難被害が判明したら
最後に、万が一キャッシュカードの偽造・盗難被害が判明ときは、速やかに警察へ被害届を提出し、併せて金融機関への通知と事情説明を行ってください。
以上