執筆:村本 耕大 弁護士
以前、当コラムで相手の財産を差し押さえてお金を回収する方法について、判決や公正証書が必要になるということを紹介しました。では、差し押さえる相手にどのような財産があるかはどうやって調べたらよいのでしょうか。
まず、相手の住所地の土地や建物、畑などがその相手の所有するものか、それとも誰かから借りているものなのかを、不動産登記簿を取得して調べることができます。また、これまでの相手との取引で、相手の口座にお金を送金したことがあれば、どこの銀行のどこの支店に銀行口座を持っているかが分かりますね。
では、それでも財産が見つからない、どこに財産があるか分からないときにどのような手段を取るとよいのでしょうか。
まず、「弁護士会照会」という手続があります。これは弁護士に依頼した上で、依頼を受けた弁護士が弁護士会を通じて預貯金のありそうな金融機関や保険会社に相手の財産があるかどうかを調査する手続です。もっとも、相手の財産を一括して調べることはできず、金融機関ごとに個別に手続を取る必要があります。
では、それでも財産が分からない場合はどうしたらよいでしょう。ひとつは裁判所に対して「財産開示手続」という手続を申し立てることができます。これは相手を裁判所に呼び出して、財産目録を提出させ、裁判官の目の前で財産の内容を質問する手続です。裁判所の呼び出しに理由なく応じなかったり、嘘の事実を述べたときは6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられるため、正直に財産の内容を説明することが期待できます。また、この手続は請求する側の本人と弁護士も立ち会うことができ、手続が終わった後、相手に今後の支払方法を約束してもらうこともあります。
「財産開示手続」でも財産が明らかにならなかったがどこかに不動産があるはずだという場合は、令和2年4月から運用されている「第三者からの情報取得手続」という新しい手続を利用して、登記所に対して不動産の有無を調査する方法があります。また、養育費や生命・身体の侵害による損害賠償など、差押えの必要性が高い場合に限られますが、「第三者からの情報取得手続」を利用して、市町村や年金事務所に対して相手方の勤務先の情報を調べることもできます。勤務先が分かると給与の差押えの可能性が出てきますね。
差押えのための財産調査には上記のとおり様々な手続があります。弁護士に相談して、状況に応じた適切な手続を選択することが重要になります。
以上