執筆:辰野 真也 弁護士
今回は、「相続」のお話です。
急に家族が亡くなったときはもちろん、例えば「20年前に亡くなった祖父の名義の土地を処分したい」とか「存在すら知らない親戚の相続人だったらしく、突然連絡がきた」といった場合、その対処は意外に大変なことがありますよ、というお話です。
急に身内が亡くなったとき、我々弁護士がまず気になるのが「相続放棄」と「相続税」です。どちらも時間制限(相続放棄は原則3カ月、相続税の申告納税は10か月)がある上、それぞれ固有の問題があります。
相続放棄は、遺産がプラスだろうがマイナスだろうが一切受け継がないというもので、亡くなった方に借金が多い場合や、相続に関わりたくない場合などに利用されますが、実は法律には「●●したらもう相続放棄できなくなる」という規定があります(民法921条)。例えば遺産の一部を自分で消費したり売却したりすれば、もう相続放棄できないルールです。
相続税は、遺産が多額のときの話ですが、期限内に納税、つまり支払いが必要という点がネックです。実際に現金が必要なのです。
例えば「手持ち現金に余裕がないが、遺産には多額の預貯金があるので、遺産を分けて得たお金で税金を払おう」と思っていても、相続人間で紛争になると、現実として遺産を分け終わるまでに何年もかかることがあります。
10ヶ月の納税期限を守るためのお金を手に入れようとして、不本意な条件での遺産分割に応じてしまい、大損することもあるのです。
身内が亡くなってすぐに遺産の話をするのは難しいのですが、借金が多い、または遺産が多い場合は、対処方法について早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。
昔に亡くなった人の遺産の話なら簡単かというと、そうでもありません。
例えば、昔に亡くなっている人の名義の土地を売るなら、その人の相続人全員の同意が必要です。誰が相続人か調べねばならず、年月によっては10人、20人になることもあります。全国に散らばっていることも多く、資料の収集だけで時間も費用もかかります。その中に認知症の人がいれば、どうやって同意を得るかも問題です。調査費用や同意を得るための費用の方が、土地の売値より高くつくこともあり得るのです。
大変そうだ・・・とお分かりいただけましたでしょうか。
まだまだお話したいことは山のようにありますが、今回はこのあたりで。
以上