執筆:原 英士 弁護士
人口減少による問題のひとつに「空き家の増加」があり、空き家が適切に管理されておらず、近隣住民に迷惑がかかるケース(例えば、①隣の空き家が倒壊しそうな状態にある、②実際に倒壊し被害を受けた等)が増えています。具体的な事情によって異なりますが、一般的に、このような場合、空き家の所有者に対し、①については、空き家が倒壊しないような措置を求めること、②については、損害賠償請求すること等が法律上可能と考えられます。なお、空き家の所有者が亡くなっている場合、所有者の相続人の有無を調査する必要があり、相続人がいないときは、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることを検討することになります。
また、①については、行政機関に対し、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年11月公布、平成27年5月施行)に基づく対応を相談することも考えられます。
同法第2条2項は、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」を「特定空家等」と定めています。そして、同法第14条によって、市町村長は、特定空家等の所有者に対し、特定空家等の除却、修繕、立木竹の伐採等、周辺の生活環境の保全を図るための必要な措置をとるよう助言、指導、勧告、及び、命令することができ、また、行政代執行法の定めに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、または、第三者にこれをさせることができます。
同法の施行から8年が経過した現在(令和5年5月31日時点)、増え続ける空き家問題に対応するため、同法の一部を改正する法律案が国会で審議されています。法律案の内容として、例えば、「空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等」を「管理不全空家等」と定め、市町村長は、「管理不全空家等」が「特定空家等」になることを防止するため、管理不全空家等の所有者に対し、必要な措置をとるよう指導や勧告をすることができるという規定等が新設されています。
空き家に関する疑問やお悩みがあるときは、すぐにご遠慮なくお近くの弁護士にご相談いただければと思います。
以上