執筆:佐藤 光太 弁護士
現代では、インターネットが普及したことで、誰でも世界中に発信できる状況となっており、口コミサイトやSNS等のネット上の誹謗中傷が問題となっております。ネット上の誹謗中傷の場合には匿名で投稿される場合も多く発信者の特定から必要になることもあります。いずれにせよ、ご自身が誹謗中傷を受けたと感じた投稿内容が、「違法」と評価されるものでなければ、発信者の特定も発信者に対する損害賠償請求もできません。
そのため、ネット上の誹謗中傷に対して損害賠償ができる場合というのは、投稿内容が「違法」と評価される場合になります。
名誉毀損を例に取り上げてみましょう。例えば、ある会社について「あの会社はどれだけ残業をしても残業代が出ない」と投稿されたとしましょう。この場合、投稿内容が真実に反しており、その会社は実際には残業代を出している場合には名誉毀損が成立し違法と評価される可能性が高いです。他方で、「あの会社は勤務時間がハードであり、40代以上が働くには厳しいと思う」と投稿された場合には、名誉毀損が成立しない可能性が高いと思われます。二つの投稿の違いは事実を摘示したものか、主観的な意見ないし感想を記載したにすぎないかというものです。前者は、「残業をしても残業代が出ない」という事実が摘示されています。そして、残業代を払わない会社という事実は会社の社会的評価を低下させるため、真実でない場合には名誉毀損が成立します。なお、記事の内容が真実であれば違法性が阻却され名誉毀損が成立しない可能性が高まります。他方で、後者の「勤務時間がハード」「40代以上が働くには厳しい」はいずれも投稿者の主観的な意見ないし感想であり、その者の評価にすぎません。ある者が勤務時間がハードという感想を持っていたとしても、それは一般化されないため、直ちに会社の社会的評価は低下しません。
このように、誹謗中傷をされたと思ったとしても、実際にそれが「違法」といえるかどうかは、法的な判断が必要になります。
そのため、誹謗中傷を受けて相手に損害賠償請求したいと考えている方は、まずは法的に「違法」と評価される誹謗中傷なのかにつき、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
以上