執筆:原 英士 弁護士
自転車で外出しやすい季節になりました。自転車は、道路交通法(以下「同法」といいます。)において「車両」として扱われるため(同法第2条8号、11号イ)、自転車の運転にも同法が適用されます。例えば、自転車運転で信号無視や一時停止違反をした場合、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金の刑罰(同法7条、43条、119条1項2号、同項5号)を受ける可能性があります。また、昨今の法改正により、自転車の乗車用ヘルメットの着用が「努力義務」になりました(同法63条の11)。具体的には、自転車運転者のヘルメット着用だけでなく、自転車運転者が他人をその自転車に乗車させるときはその他人にもヘルメットをかぶらせることや、児童・幼児の保護責任者は、児童・幼児が自転車を運転するときはその児童・幼児にヘルメットをかぶらせることが努力義務になっています。
自転車は気軽に運転できるため、未成年者が交通事故の加害者になることもあります。この場合、未成年者に責任能力(自己の行為の責任を弁識するに足りる知能)があれば、未成年者自身が被害者に対し損害賠償責任を負うことになります。また、未成年者に責任能力がなく、未成年者自身が損害賠償責任を負わない場合(民法712条)においても、未成年者の監督義務者(親権者等)は、監督義務を怠らなかったとき又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときでなければ、被害者に対し損害賠償責任を負うことになります(民法714条1項)。具体的な裁判例として、①未成年の少年が、パトカーの追跡を受け、自転車を運転して逃走中、進路前方の20代警察官と衝突し、警察官が死亡した事故につき、少年本人が約9330万円の損害賠償責任を負った事案(高松高裁令和2年7月22日判決)や、②自転車を運転していた小学5年生の男子児童が、歩行していた60代女性と衝突し、女性が極めて重い後遺障害を負った事故につき、男子児童の親権者が約9520万円の損害賠償責任を負った事案(神戸地裁平成25年7月4日判決)などがあります。
交通事故について疑問やお悩みがあるときは、すぐにご遠慮なくお近くの弁護士にご相談いただければと思います。