執筆:瀧川 由希子 弁護士
自分や家族が犯罪の被害に遭ってしまったら……。そんなときは、早めに弁護士に相談することをお勧めします。裁判にならなければ弁護士に相談できないと思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。私たち犯罪被害者支援に取り組む弁護士は、被害直後の早い段階から、告訴状の提出をはじめとして、捜査機関への事情聴取の同行、加害者側への対応、マスコミ対応など幅広い支援を行っています。
被害の直後であれば、加害者側の弁護士が、被害者に対して被害弁償の申入れをすることがよくあります。被害弁償を受けるかどうかの判断はそれぞれ事件の内容によって異なりますが、仮に、被害者の方が被害弁償を受けるつもりであったとしても、犯罪による精神的被害や身体的被害によって自ら対応することができないでいるうちに、結果として被害弁償を受ける時機を逸してしまうということもあり得ます。例えば、そもそも事件が不起訴になってしまうと、加害者側の弁護士は任務終了となることが多いため、被害者としては加害者本人と交渉をしなければならなくなりますが、加害者の被害弁償への意欲も薄れてしまえば、被害弁償がなされないまま交渉が決裂してしまうこともあるのです。早い段階から被害者の方にも代理人が就いていれば、被害者自ら動けない場合でも、加害者側の弁護士からの申入れに即座に対応し、できる限り被害者の方の希望に沿った内容で交渉をすることができます。
こうした弁護士による支援を受けるには基本的には費用がかかりますが、ご自身で弁護士費用を負担することが困難な方のために、日本弁護士連合会には会員の会費を原資として弁護士費用を援助する制度がありますので、生命や身体を害する犯罪や性犯罪等の被害に遭い、一定の資力要件を満たす方は援助を受けることができます。また、今年4月には総合法律支援法の一部を改正する法律が成立し、今後は国費によって早期段階から弁護士による継続的かつ包括的な支援を受けられる犯罪被害者等支援弁護士制度の運用も始まる見通しです。
札幌弁護士会では、犯罪被害者問題に取り組む弁護士を紹介する特定分野別弁護士紹介制度や犯罪被害者弁護ラインを設けていますので、まずは相談してみたいという方はご利用いただければと思います。