執筆:とまこまい総合法律事務所
竹田 美由紀 弁護士
昨今のペットブームもあり、犬や猫などのペットを飼う人が増えてきました。民間団体の調査によると、全国で飼育されている犬と猫の数は、平成24年度で、犬が約1153万頭、猫が約975万頭であり、世帯数で見ると、犬が約900万世帯、猫が約550万世帯であり、2割近い家庭で飼われている計算になります。それ以外のペットを含めると、ペットを飼育している家庭はもっと増えることになります。
このように、相当数の人が犬や猫をはじめとするペットと生活を共にしており、それに伴い、ペット同伴の可能な喫茶店や宿泊施設も増えるなど、ペットは家族の一員ともいえる時代になりました。
他方で、ペットをめぐるトラブルもよく聞かれるようになり、飼い主の責任が問題とされるようになりました。例えば、散歩中に飼い犬が他人を噛んで怪我をさせた場合、飼い主は、無過失を証明しない限り、治療費をはじめとする損害賠償責任を負わなければなりません。また、散歩中に飼い主が犬の糞を処理せずにそのままにしていた場合、軽犯罪法違反として処罰される可能性がある他、放置した場所や状況によっては損害賠償責任を負わなければなりません。さらに、共同住宅や住宅地においては、ペットの鳴き声や異臭に対して、近隣住民から苦情が寄せられることがあり、その場合には、同様に賠償責任が生じる可能性がある他、賃貸住宅の場合は家主から契約解除をされる可能性があります。
ペットをめぐるトラブルが原因で、人間同士がトラブルになり、ペットや人間が犠牲になる悲劇も少なくありません。ペットのトラブルの主な原因は、飼い主のマナー、ペットの管理方法やしつけにあり、飼い主がこれらを適切にしていれば、トラブル防止は十分可能です。家族の一員ともいえるペットを守るため、また、飼い主自身がペットと充実した生活を送るために、飼い主のモラルと努力が求められることになります。