執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
葉山 裕士 弁護士
平成27年5月26日、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、「空家対策特措法」といいます)が施行されました。これまでも自治体によっては空家対策条例等により、空家対策が行われてきましたが、今後はこれまで条例の整備がされていなかった自治体においても空家対策が行われることとなります。
空家対策特措法では、市町村長等は特に危険であったり、衛生上有害な空家等については、空家への立ち入り調査、除却、修繕等、周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をするよう助言、指導をすること、これらの指導に従わない場合には、必要な措置をするよう勧告、命令すること、命令に従わない場合には、所有者が行うべき行為を市町村長等が代わって行うことができることなどが定められています。なお、市町村が所有者に代わって必要な措置を行った場合でも、それに要した費用は最終的には所有者が負担しなければなりません。
近年、空家の増加は社会問題化しており、日高管内においても後継者が既に別に住宅を保有している等の事情から、既に空家となっている建物、今後空家となることが見込まれる建物が相当数あると考えられます。
空家となっていて、自身が利用しない建物であったとしても、所有者である以上、上記のように空家対策特措法に基づく様々な要請に今後対応しなければならなく事態も考えられますし、何より空家が倒壊するなどして他人に損害を与えた場合、所有者が損害賠償の責任を負うことにもなりかねません。
相続問題というと、お金をどう分けるか、土地は誰の名義にするかといった点に意識が向きがちです。しかしながら、今回取り上げた空家となる建物だけでなく、他にも借金の問題であったり、残された家族が必ずしも受け継ぎたくないと考えるものについても相続対策としては考えておかなければなりません。
「うちには財産がないから、相続のことは考えなくて良い」というお話をされる方もいらっしゃいますが、どんな方にも相続について考えなくてはいけないことが何かしらはあるはずです。
今回の空家問題をきっかけに、改めてご自身の相続のことについて考えてみてはいかがでしょうか。もし相続問題として考えるべきものなのかどうかご不明な場合やどのように相続の対策をしたら良いかわからない場合などは、お近くの弁護士にご相談ください。