執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
小荒谷 勝 弁護士
婚姻が成立するためには、法律上、婚姻の届出が必要とされています。もっとも、婚姻の届出がなくても当事者の意識や生活実態において事実上夫婦同然の生活をする男女関係については、「内縁」として、婚姻に準ずる一定の効果が認められています。
このように内縁は、婚姻に準じた扱いを受けることから、社会的にも婚姻の実質を備えたものでなければならず、内縁の成立には、①婚姻意思の存在②これに基づく事実上の夫婦共同生活の存在という2点が必要とされています。
それでは、具体的に検討してみます。自分が異性と性的関係を持ち、1週間の半分を互いの家に宿泊し食事を共にするようになり、次第に家賃を2軒分払うことが不経済であることから一緒に住むようになりました。そして3年が経ち、近所の人に「奥さん」「旦那さん」と呼ばれるに至っていますが、お互い将来にわたって一緒に生活をする意思まではありません。これは内縁関係といえるでしょうか。答えは、「いえない」です。なぜなら、そもそも①の婚姻意思の存在という要件を欠くからです。
次に、内縁関係が認められた当事者において、本稿のテーマである、相続権が認められるかという点を考えたいと思います。結論から言うと、内縁の一方配偶者が死亡した場合、他方の内縁配偶者には相続権が認められていません。
内縁の一方配偶者に相続人(子など)がいる場合に、他方の内縁配偶者に財産(遺産)を取得させるためには、生前に贈与をするであるとか、遺言によって贈与をするといった手段を講じておく必要があります。
他方で、婚姻の届出をした場合、配偶者は、相続人として、死亡した一方配偶者の遺産を相続することになります。客観的に同じような夫婦生活を営んでいても、婚姻の有無により相続にはこのような差が生じます。
なお、最高裁判所は、内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法の規定を使うことはできないと判断しています。したがって、生存内縁配偶者が、死亡内縁配偶者の相続人に対し、遺産の一部を分与してもらうこともできません。
もし、このような問題で悩んでいる方がいらっしゃいましたら、お近くの弁護士か札幌弁護士会の法律相談センターへご連絡ください。
以上