執筆:むらやま法律事務所
徳永 賢太郎 弁護士
雪解けが始まり、北海道にもようやく春が訪れた中、皆様いかがお過ごしでしょうか。私事ではありますが、弊所でも今年の1月より、めでたく1人の新人弁護士を迎えることができ、賑やかな春らしい雰囲気の中で仕事をしています。
今回はそんな私の日常の中で弊所の新人とふとした際に話題になった“内容証明郵便”についてお話させて頂きたいと思います。
皆さんもその名称を聞いたことはあるかと思いますが、世の中には文書の郵送の方法の一つに、“内容証明郵便”というものがあります。ご相談にお越しになる方の中には、この内容証明郵便を送って欲しいとご相談にお越しになる方もいらっしゃるのですが、実のところ、弁護士の目から見ると、内容証明郵便を送る=問題が解決する、ということはほぼありません。
内容証明郵便を送って欲しいという趣旨のご相談の多くは、“お金を貸したが返してくれない”、“暴力を振るわれて怪我をしたが相手は謝りもしなければ賠償もしてくれない”、という相談であったりします。しかし、内容証明郵便とは、読んで字のごとく、送った文書の内容がこういうものですよ、と証明してもらえる郵便であるというだけであって、内容証明郵便を送ったからお金を返さなければならなくなる、差押えができる、といった効果は一切ありません。送った文書の内容がこういうものだ、という証拠としては有用なのですが、内容証明郵便を送ること自体には大きな効用がある訳ではないのです。
そのため、弁護士が内容証明郵便を使う場合には、同時に、配達証明というものも付けて、相手方に対して、いつ、どんな内容の文書を送付し到達したのかを後々の裁判等で証明できるようにするために使うものであるのが通常です。つまり、弁護士にとっては、内容証明郵便は、事件の始まり、ということになります。
それ故に、内容証明郵便を送るというのは、確かに弁護士から仰々しい文書が相手方に届きますので、それでびっくりして払ってくれるような、ある意味憎めない人が相手ならそれで話は済むのですが、世の中そんなに甘いものではありません。大抵の場合、内容証明郵便を送って欲しいと弁護士に相談したいときには、それは“事件の始まり”を迎えている状況であることが多いのです。
そして、内容証明郵便を送ってからどう対応して依頼者のオーダーにお応えするのか、そもそも内容証明郵便を送るのが有効なのか、そのあたりを的確に判断し、依頼者のオーダーに応えるプロが弁護士です。
“あいつに内容証明郵便を送りつけてやりたい”そんな気持ちを抱いた時は、弁護士に相談し、弁護士に事件を依頼する始まりなのかもしれません。ご自身の日常で、そんな気持ちを抱いた際には、お気軽に弁護士の所へ相談にお越しください。きっと“相談して良かった”、と思っていただけると思います。
以上