執筆:とまこまい総合法律事務所
竹田 美由紀 弁護士
Aさんは令和2年8月1日に90歳で亡くなりました。Aさんは息子のBさんとBの妻Cと一緒に住んでいました。BさんとCさんとの間に子どもはいません。Aさんの配偶者Dさんはすでに亡くなっています。Aさんが寝たきりになった後も、CさんがAさんの身の回りの世話をしていました。Bさんが亡くなった後も、Cさんは変わらずAさんの身の回りの世話をしていました。Bさんには弟Eさん、妹Fさんがいますが、どちらも遠方に住んでおり、Aさんの面倒を見ることはありませんでした。Cさんは長年Aさんの面倒を見てきており長年貢献してきましたが、Cさんの貢献について何らかの配慮をしてもらうことはできないのでしょうか?
Aさんの相続人はEさん、Fさんであり、Cさんは相続人ではありません。Bさんが生きていればBさんも相続人となるため、Cさんの貢献をBさんの寄与分として考慮する裁判例もありますが、事例のケースではBさんは亡くなっており考慮してもらうことはできません。そのため、これまでの民法では、AさんがCさんのために遺言書を作成したという事情がない限り、CさんはAさんの財産(遺産)を取得することができませんでした。
平成30年に民法の相続の部分が改正されましたが、改正されたものの一つが「特別の寄与」という規定です。これは、Cさんが無償でAさんの療養看護をしたり労務の提供をしたことにより、Aさんの財産を維持したりAさんの財産が増えた場合には、Cさんの「特別の寄与」が認められ、EさんとFさんに特別寄与料の支払いを請求することができるようになりました。
「特別の寄与」が認められるには、療養看護をしたり労務の提供をしたことにより、亡くなった人の財産を維持したり財産の増加について寄与したことが必要になります。そのため、身の回りの世話をしただけで当然に「特別の寄与」が認められるものではなく、Cさんが行った世話について具体的に検討する必要があります。
また、無償で行ったことが必要ですので、CさんがAさんからお金を受け取っていた場合は、すでに対価をもらっていたと評価され、要件をみたさない可能性があります。
「特別の寄与」はいつまでも請求できるのではなく、CさんがAさんの相続が開始したことを知った時から6か月、または相続の開始したときから1年を経過すると請求できなくなりますので、早めに請求することが必要です。
このように請求できる期間が限られていること、「特別の寄与」にあたるかどうかは具体的事案によるため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
以上