執筆:竹信 航介 弁護士
私は弁護士として労働者側での労働事件を比較的多く担当していますが、不当に解雇されたという相談も少なくありません。
解雇は自由にできると思っている経営者の方も少なくないようですが、日本には「解雇権濫用法理」というのがあって、合理的な理由がない解雇などは無効になります。
では、解雇が無効になると、その後はどうなるのでしょうか。
解雇というのは、会社などから一方的に労働契約を終了させるものです。すなわち、解雇が無効になるということは、労働契約を終了させるものが無効になるということですから、労働契約は終了していなかったことになります。
労働契約というのは、労働者が働いて、その対価として給料をもらう契約ですが、一方的に解雇を言い渡された労働者は、働こうとして出勤しても「解雇されただろ!」と追い返され、働けないと思われます。しかし解雇が無効の場合なら、会社的には解雇したつもりでも、法的には労働契約は続いていて、契約に従って労働者が働こうとしたら、会社のせいで働けなかった、ということになります。こういう場合、労働者は働かなくても給料を請求することができます。
さて、それを前提に、無効な解雇をされた労働者が弁護士のところに駆け込み、「解雇は無効だから復職させろ!」と訴訟を起こしたとします。そして、解雇を言い渡されてから1年後に裁判所から復職命令の裁判が出たとします。そうすると、それと合わせて、解雇から判決までの1年分の給料も支払うよう会社に命じる裁判もくっついてくるのが普通です。月給20万円なら240万円、月給40万円なら480万円です。また裁判が長引いて2年になれば、さらにこの2倍になります。働いてないのにこれだけのお金が動くのですから、会社の側から見れば大打撃です。
このように解雇というのはインパクトの大きな事件に発展する可能性があります。ですから、経営者の方は解雇をするかどうか慎重に考えてほしいと思いますし、解雇する前に弁護士に相談してほしいと思います。また不当解雇された労働者の方は違法を見過ごさないで立ち上がってほしいと思いますし、その際には弁護士に相談してほしいと思います。
以上