周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会の新企画「札幌弁護士会の知恵袋」。
第1回テーマは「交通事故」の中から「物損事故」を取り上げます。
ゲストは、ラジオ番組プロデューサーも兼任する北山祐記氏。藤波辰爾のドラゴン・スリーパーと三沢光晴のエルボーを受けきった?こともある同氏が、三角山放送局の美人アナ田島美穂さんと時間無制限2本勝負のトークバトルを繰り広げます。
既に交通事故にあわれ、交通事故法律相談を予約された方の予習にはもちろん、お車を運転される方には必聴・必読のコーナーです。
放送日 | 2015年7月7日 |
---|---|
ゲスト | 北山祐記 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
物損事故、過失割合、自動車保険料、もらい事故、交通事故裁判、実況見分調書、ドライブレコーダー、家族限定割引、年齢制限割引、任意保険・共済の未加入 |
第1、「札幌弁護士会の知恵袋」という番組が始まりました。
— 今日から始まる新コーナー、その名は「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送していきます。
さっそく今日のゲストを紹介しましょう。
札幌弁護士会に所属の北山祐記(キタヤマ ユウキ)さんです。
北山:よろしくお願いします。
— 胸に光る弁護士バッジをお見せできないのが残念ですが、金色ですね。
北山:はい。素材は「銀」らしいのですが、「金メッキ」をしてあります。
ただ、ドラム式の洗濯機で何度も洗ってしまったので、だいぶくすんだ色になってしまいました。
— 背広ごと洗ってしまったということですか?
北山:いいえ。交通事故や建築関係の事件の場合、道路の幅を計測したり、建物の床下に入ることもあるので、私服で仕事に出かけることも多いのです。
そんな時、ジーパンのポケットに弁護士バッジを入れておくと・・・
ついつい、出し忘れて洗濯機の中に行ってしまうという、そそっかしい話です。
— では、今週のテーマに早速、行ってみましょうか?
北山:行きましょう!
第2、今週のテーマは交通事故の物損事故
— 夏は行楽のシーズン、車でのお出かけも増える時期ですから、もし、交通事故にあってしまったら、ということで!
北山:はい。
— それでは質問を紹介していきましょう。
札幌から小樽にぬける海沿いの道路の交差点で、信号が赤になったので、車を止めていたら、後ろから来た車に追突されました。
幸い、私も衝突した相手も怪我をしませんでしたが、私の車の後ろ側のバンパーが壊れて、ガラスも割れてしまいました。
一方、相手の車の前のバンパーも壊れ、ボンネットも大きく凹んでいます。
私にも過失はあるのでしょうか?
そして、私の自動車保険料は上がってしまうのでしょうか?
北山:基本的に相談者さんの過失はない、過失割合は0%ということになります。
ただし、暗くて、霧がかかっていた時などで、相談者さんがテールランプを点けていなかった等の事情があれば、過失割合が10%~20%ついてしまう可能性もあります。
第3、「過失割合」・「もらい事故」とは?
— 過失割合は、よく揉めると聞きますね~。
北山:そうなんですよね。
今回の相談者さんの場合は、完全に停車しているので、過失がないと判断されることが多い、いわゆる「もらい事故」と呼ばれるものです。
あと、「ゼロジュー(0:10)」とも言ったりします。
しかし、多くの交通事故は、動いている車同士の事故ですから、基本的に双方に過失があるということを前提に、「どっちが何割だ」という話になって揉めるんですね。
さらに、今回の相談者さんの場合でも、事故の相手方が「赤信号じゃなかった」「急ブレーキをかけて止まった」等と言い出せば、それが本当かどうか、から議論することになります。
双方が感情的になってしまうこともあって、結構、人身事故よりも物損事故の方が過失割合で揉めることが多いんですよ。
第4、過失割合で揉めた時の解決方法、裁判で解決するための時間の目安
— 双方の言い分が食い違って、過失割合で揉めてきたら、どうやって解決したらいいんですか?
北山:それが大変なんです。
どちらかが折れて、双方が合意できればいいんですが、それが出来ないと結局、裁判にかけて裁判所に判断してもらうのが一般的です。
— 時間がかかりそうですね。
北山:正直にお答えすると、結構、時間かかります(笑)。
早くて4か月くらい、遅いと1年くらいかかるものもあります。
— 大変そう。
北山:裁判の途中で、裁判所が「3対7でどうですか?」みたいな和解案を提示して、比較的、早く解決することもあるのですが、目撃者の証人尋問や交通事故の当事者双方の尋問までやって、判決をもらうみたいな感じだと1年くらいかかったりするんですよね。
— 裁判所で尋問をやっても、両方の言い分が食い違ったら、結局、裁判所でもわからないということになりそうな気もするのですが・・・。
北山:そうなんですよね。
ただ、交通事故は過去の蓄積がたくさんあるので、裁判所や保険会社としても、こういう状況なら、「2対8」みたいにパターン化してあるんです。
そして、もちろん尋問だけではなく、車の凹み方で、スピードを推測したり、信号の赤色・青色・黄色の秒数変化をまとめた信号サイクル表なども証拠にしたりして、裁判を進めていくのです。
ただ、結局、最後は裁判所の権威で、ドーンと決めるみたいな。
— 結果が、楽しみなような、不安なような。
どっちかと言えば、不安かな~。
北山:そうですね。
事件を担当している弁護士は、裁判の中で予め裁判官と何度も話をしているので、判決内容のおおよそは予測できているんです。
ただ、判決で、それまでに聞いていた話と違う結論が出ることもあるので、私たち弁護士も不安なんですよね。
それでも、いい結果を依頼者の方に伝える時の喜びは、この仕事をしている中で最高の瞬間なんですよ。
第5、物損事故の裁判における証拠
— さっき、事故の目撃者という話があったと思うんですが、テレビドラマで観ているように事故の目撃者がいて、裁判で証言してくれるケースって本当にあるんですか?
北山:たまたま、事故を目撃していても、本当に裁判にまで出てきてくれる人は物損事故では殆どありません。
事故に遭った車両の同乗者が証人というケースがありますが、この場合はどちらかの車両の運転手の味方っていうのもあって、目撃証人としての価値は少し低いですね。
人身事故の場合は、警察が実況見分調書というのを事故の後に作ってくれるので、その実況見分調書が過失割合を決めていく重要な証拠になることが多いのです。
けれども、物損事故では実況見分調書が作られないので、物証や客観的証拠と言われるものが少ないんですよね。
— 防犯カメラやドライブレコーダーとかは、裁判の証拠に使われないのですか?
北山:大きな人身事故の場合は、警察が防犯カメラ映像を捜したり、たまたま事故現場に居合わせた他の車両のドライブレコーダー映像を取り寄せたりしてくれることも多いので、刑事裁判や民事裁判の証拠として使われるのを見かけるようになりました。
国土交通省の調査によれば、ちょっと古いデータですが、バスやトラック、タクシー等、最近登録された事業用自動車の10%以上に、ドライブレコーダーが搭載されているようです。
— 札幌市内でタクシーに乗ると、ドライブレコーダーみたいなカメラが付いている車が多いですよね。
北山:国土交通省が、事業用自動車のドライブレコーダーの装着に補助金を出していたりしていたこともあって、普及してきたんですよね。
自家用車を乗られている人でも、最近は結構ドライブレコーダーを付けている人が増えてきましたよ。
— お値段的には、どのくらいなんですか?
北山:自動車部品を販売するお店などでは、本体価格だけなら1万円を切る商品も出てきました。私も、万が一、交通事故にあった場合などには、ドライブレコーダーがあった方がいいな~、と思っているので購入を検討中です。
— ドライブレコーダーが、100%近く普及したら、過失割合で揉めることが減って、交通事故の裁判は減りますか?
北山:物損事故でも、過失割合以外が争点になることもあるので、裁判が減るとは断言できません。ただ、裁判に出てくる証拠がシンプルになり、裁判所や弁護士の負担は減るだろうと予測しています。
第6、物損事故を起こしたら、翌年の自動車保険料は上がるのか?
— そうだ。相談者さんから、翌年の自動車保険の値段が上がらないか?という質問も受けていました。今回の相談者さんの場合は、過失割合が0%みたいなので、保険料は上がらないですよね。
北山:事故の相手自身か、相手が加入している保険会社が、きちんとこちらの車の修理代を支払ってくれて、相談者さんの加入している保険の「車両保険」を利用しなかったならば、保険料は上がらないですね。
しかし、相談者さん自身の過失割合が1割ある等の理由で、相手の車両の修理費を相談者さんが加入する保険会社に支払ってもらったり、相手が任意保険に入っていなくて修理代を払ってくれないため、相談者さんが加入する保険会社の方の「車両保険」を使って自分の車の修理したりするようなことがあると保険料は上がってしまいます。
— 相談者さんに過失が1割あるか、無過失かで、保険料が上がる、上がらない、の違いが出てきたりするんですね。
北山:もし、相談者さんに1割だけ過失があった場合には、保険料を上げないために、相手の車の修理代の1割を自分で払っておくという方法が一つ。
保険料が上がることは我慢して、保険会社に相手の車の修理代の1割を払ってもらうという方法が一つ。
どっちが得か迷う場合も多いんですよね。
— もらい事故や相手の過失の方が大きい時に、保険料は上げたくないな~。
北山:被害者側の心情的にはそうですよね。
ご説明してきたとおり、相手方が対物賠償保険に入ってくれていれば、保険料を上げない方法を比較的簡単に探すことができます。
ただ、一番問題なのは、対人賠償・対物賠償の保険や共済に入っていない車両が、全国平均で10%以上あるということなんですよね。
— え~。そんなに多いんですか?
北山:そうなんです。
日本損害保険協会の調べによれば、全国で約27%の車両が任意保険に加入しておらず、北海道では約30%の車両が任意保険に加入していないという調査結果があります。
ただ、自動車共済という制度もあるので、それの加入者を計算に入れると、保険と共済の加入者の合計は80%以上になるけれども、90%には達しないという状況のようです。
事故の相手が任意保険や共済に入っていない場合、もらい事故なのに泣く泣く自分の「車両保険」を使うことになって、保険料が上がってしまうということもあるんです。
第7、任意保険や共済の重要性
— 交通事故は、誰でも加害者になる可能性があるから、みんな任意保険や共済に入って欲しいですね~。
北山:私もそう思います。
最近では、任意保険には入っているけれども、運転者「家族限定」や「年齢限定」が入っていて、いざ事故が起こった時に、保険金が支払われないというケースも増えています。
家族限定割引や年齢制限割引を選択した時には、絶対に疲れたからといって他人に運転させることがないように注意していただきたいですね。
— 疲れたら休憩をすると。
私も車両についているナビに「運転を開始してから2時間が経ちました。休憩してください。」とたまに注意されます。
北山:私もナビによく注意されます。
北海道は、高速道路の「サービスエリア」や「道の駅」の間隔が長いので、休める時に確実に休んでおくのがお勧めですね。
あと、私の場合、ロングドライブによる運転の疲れよりも、トイレ行きたい問題で悩むことが多いです。
— 本日の札幌弁護士会の知恵袋は終了です(笑)。
北山:あれ?
— 札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年7月7日