周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会の新企画「札幌弁護士会の知恵袋」。
第2回テーマは「交通事故」の中から「物損事故」を取り上げます。
ゲストは、ラジオ番組プロデューサーも兼任する北山祐記氏。自らが突発的に立ち上げた新企画のキャスティングが間に合わなかったため、罰ゲームとして自ら出演し、超テキトーに物損事故を語ります。
交通事故のイロハをすっ飛ばして、チリヌを語る同氏のトークを受け止めるのは三角山放送局の田島美穂アナ。4週にわたって放送される交通事故特集の第2弾です。
放送日 | 2015年7月14日 |
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ゲスト | 北山祐記 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
物損事故、交通事故に対する備えと対処法、もらい事故、示談交渉、弁護士費用特約(LAC)、着手金・報酬金・実費、保険料値上げ、弁護士を選ぶ、日弁連交通事故相談センター、弁護士検索、格落ち損害【評価損】、証拠保全、相談料無料 |
第1、「札幌弁護士会の知恵袋」という企画が生まれた経緯
— さあ、先週から始まった新コーナー、その名は「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送していきます。
さっそく今日のゲストを紹介しましょう。
札幌弁護士会に所属の北山祐記(キタヤマ ユウキ)さんです。
北山:よろしくお願いします。
— さて、「札幌弁護士会の知恵袋」という新企画、初回ゲストはなぜ、北山さんだったのですか?
北山:私は、札幌弁護士会の広報委員会で昨年まで、ホームページを担当していたのですが、今年の4月からラジオの担当に配属替えになったのです。
私がホームページの担当だった頃から、ホームページの中で、実際に札幌弁護士会で行われている法律相談のように具体的な、そして、より実践的な法律や裁判の実務を紹介できるコンテンツを世の中に発信していきたいな~と考えていたのです。
そこで、三角山放送局のラジオ番組制作の中で、そのような「ラジオとインターネットを融合させたコンテンツ」を作っていけないのかな~、と考えて企画してみました。
私の番組出演は、札幌弁護士会の委員会活動でありがちなことなのですが、企画の言い出しっぺが、罰ゲーム的に、企画の実行をやらされるという「古き良き伝統」です。
— 罰ゲームって・・・ご愁傷様でした。
来週以降も、北山さんが罰ゲームとしてスタジオに来て話していただけるのですか?
北山:広告代理店出身の私は、今後もプロデューサーとして、番組の制作にタッチしていきますが、来週以降は、現在700人以上いる札幌弁護士会の精鋭達の中から多数の弁護士がゲスト出演してくれます。
様々なキャラクターの弁護士が登場してくれますから、放送のアーカイブスも含めて、実践的な法律・裁判・マメ知識をリスナーの皆様に楽しんでいただければ、プロデューサー冥利につきます。
第2、交通事故に対する事前の備えと交通事故に遭った場合の対処法
— 来週以降もどんな方がゲストに来られるのか楽しみですね。
さあ、今週も引き続き、交通事故。物損事故の話ですよね。
先週は、もらい事故や過失割合を中心にお話しいただきました。
今週は、どんな事件を紹介いただけますか?
北山:はい。
今週は「交通事故に対する備え」と「交通事故にあった後の対処法」について解説していきたいと思います。
通常の物損事故、すなわち、双方に過失がある事故では、双方の保険会社の担当者が、示談交渉を行ってくれるので、事故にあわれた方は、保険会社に「お任せ」みたいな感じで事件が解決することが多いです。
しかし、もらい事故の場合には、過失がない側が加入している保険会社が示談交渉を行えないため、相手方、すなわち、過失が一方的にある側の保険会社の担当者と、事故をもらっちゃった人自身が、直接、示談交渉をしなければなりません。
— 保険に加入していると、事故対応は全てやってくれると思っていました。
北山:もちろん、相談やアドバイスはしてくれると思いますが、もらい事故の場合、事故をもらっちゃった側の保険会社は、お金を払う立場にないので、代理人にとして示談交渉ができないのです。
— ただでさえ、事故をもらってイライラしている時に、自分で示談交渉するのはイライラがさらに募りそうですね。
北山:そうなんです。そして、さらに最悪のケースは、過失が100%ある側が任意保険や自動車共済に加入していない場合なんです。
— もしかして、事故を起こした当事者同士が話し合うということですか。
北山:ピンポン!そのとおりです。
うまくまとまりそうな気がしないでしょう?
— 絶対、まとまらないし、ストレス溜まりそうです。
北山:自動車の修理費や代車費用など、一括払いで支払いますよ、なんて話でまとまることは、まずないんですよね。
— 一括払いで修理費を払える人だったら、任意保険や自動車共済にも入っていそうですものね。そんなストレスの溜まりそうな示談交渉や裁判は弁護士さんに頼みたくなりますね。
北山:物損事故で、私たち弁護士が裁判を依頼されるケースのうち、事故の相手が任意保険や自動車共済に未加入というケースは多いのです。
しかも、車の修理費も回収できないうちに、さらに、弁護士にお金を払って裁判を起こすということになると、事故をもらっちゃった方としては「泣きっ面に蜂」状態なわけです。
— お金が出ていく一方ですものね。
では、交通事故に備えて、どのように準備しておくのが良いのでしょうか?
北山:一つは、追加の保険料が安くはないですが、「車両保険」に加入しておくこと。
そして、もう一つは「弁護士費用特約(LAC)」に加入しておくことです。
第3、弁護士費用特約とは?
— 「弁護士費用特約」は保険の更新の度に気になっているのですが、ついつい前年と同条件で、と簡単に済ませてしまっているので、私はまだ入っていないですね。
北山:年間数千円程度ですから、次回更新時にはぜひご加入を!
弁護士費用特約は、もらい事故で保険会社が示談交渉を代行してくれない時はもちろん、過失割合や損害額が食い違い、交通事故が解決しない場合に保険会社の費用で弁護士を利用できる便利なサービスです。
弁護士費用を立て替えてくれる上限金額が300万円に制限されている保険会社が多いですが、弁護士の着手金・報酬金・実費の合計が300万円を超えることは珍しいので、「弁護士を無料で利用できるサービス」と言い切っちゃっても良いでしょう。
— 修理費が10万円の物損事故でも、利用できるのですか?
北山:はい。一部の保険会社を除いては問題なく利用できます。
しかも、誤解されている方が多いのですが、弁護士費用特約を利用しただけでは、翌年の保険料は上がらないのです。
— 保険料は何か使うと、上がりそうな気がしてました。
北山:自動車損害保険の仕組みは難しいですよね。
保険証書の裏なんかに、細かい字で色々書いてありますが、私もプライベートでは読んだことはないです(笑)。
弁護士費用特約でカバーされる事故状況は、保険会社によっても違うし、同じ保険会社の中でも、弁護士費用特約のバリエーションがあって、その中から選ぶようになっていることもあります。
そして、家族が横断歩道ではねられた場合などにも使える商品もあるし、使えない商品もあるので、お客様から「弁護士費用特約が使えますか?」という相談を受けた場合には、老眼に鞭打って、「約款」に書いてある細かい字を泣く泣く読んでいます。
— どんな場合に使えるか、全部の保険会社で統一してくれたら、わかりやすいのにな~。
そうもいかないのかな~。
北山:私も「統一して欲しい派」です。
しかし、保険会社は弁護士費用特約の内容、つまり、カバーされる事故状況のことですね、それで競い合っていますし、価格でも競い合っているので、そうもいかないのでしょうね。
第4、交通事故の解決を依頼する弁護士の探し方
— 弁護士さんは、自分が加入している保険会社に紹介してもらうのですか?
北山:保険会社に紹介してもらう方法もあるし、弁護士を自分で選ぶこともできるんですよ。
一応、自分で選ぶ場合には、保険会社に報告して同意を得なければならないという建前ですが、あっちこっちの保険会社と裁判をやって喧嘩している私でも保険会社から拒否されたことはないので、誰でもいいということでしょう(笑)。
— 自分が加入する保険会社と相手の保険会社が同じ会社の時とかは、保険会社に紹介されるのも嫌だけど、自分で探すのも大変そうですね。
北山:札幌弁護士会に弁護士は700人以上いますが、交通事故は専門性が強いですから、ある程度、交通事故が得意な人に任せたいですよね。
— どうすればいいか、教えてください。
北山:2種類の方法をお教えしましょう!
一つは、札幌弁護士会のホームページに載っている「日弁連交通事故相談センター」の予約をとり、実際に弁護士と面接相談を行ってみて、その弁護士に頼むという方法です。
特別な試験があるわけではないですが、こちらの相談センターは、交通事故事件を取り扱っている弁護士の登録制になっています。
— 交通事故相談センターの場所はどこにあるのですか?
北山:①札幌市中央区北1条西10丁目、②厚別区の新さっぽろ、③北区の麻生(あさぶ)、④小樽市、⑤室蘭市、⑥苫小牧市の6箇所ですね。《平成27年6月現在》
— もう一つの方法は?
北山:やはり、弁護士会のホームページの機能なのですが、「弁護士検索」という機能を使って「交通事故」を取り扱っている弁護士を直接探す方法です。
ただ、この前、試しに調べてみたら、交通事故を取り扱うという弁護士は330人も出てきたので、あまり絞り込めませんでした(笑)。《平成27年6月23日現在》
— ははは(笑)。
330人からは選びきれませんね。
北山:広報委員会のホームページチームに、改良を提案しておきます。
ただ、お時間のある方は、各弁護士のプロフィールを見て、「重点取扱分野」などをチェックいただきたいですね。
交通事故だけではなく、離婚や相続など、様々なジャンルを取り扱っている弁護士が検索できますよ。
ホームページのアクセス統計を見ていても、年々、この弁護士検索を利用されている方が増えてきています。
第5、弁護士費用特約のメリット
— 弁護士費用特約の話から、弁護士の選び方に話が移っていきましたが、もう一度、弁護士費用特約のメリットをまとめていただきましょう。
北山:はい。
まず、もらい事故の場合や、相手が無保険・無共済だったりした場合には、保険会社任せということが難しく、弁護士を利用しないと解決が困難な場合があるということを覚えておいて欲しいのです。
次に、弁護士費用特約は、年間の保険料が数千円とお安く、そんなに負担が増えるわけではありません。
さらに、弁護士費用特約を利用しただけでは、翌年の保険料は上がらないということです。
ここからは、個人的な意見としてお聞きいただきたいですが、弁護士費用特約に入っておいて良かったな、と皆さんが感じることがあるとすれば、発生頻度の高い小さな事故、つまり物損事故の場合です。
弁護士の費用は、弁護士の数が増えたことで価格競争が進んで、一般的に下がってきていますが、それでも正直に申し上げて安くはないです。
大きな事故、すなわち、後遺障害を残すような人身事故の場合は、請求できる金額も大きいですから、この弁護士費用をある程度、受け取る賠償金で吸収できるのです。
一方、物損事故、特に修理費が数十万円以下の場合に、過失割合や損害額を争いたいと思っても、回収できる賠償金が最大で数十万円ですから、自分で弁護士費用を出してまで、争ったり、裁判をやることは躊躇してしまいます。
そうすると、自分では過失割合は「2:8」だと考えていても、「4:6」で泣き寝入りしてしまったり、買ったばかりの新車にぶつけられて、「格落ち損害(評価損)」も回収したいと考えていても、裁判までは出来ないな~と考えて、妥協される方も多いのです。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば、しぶとい示談交渉はもちろん、裁判まで保険会社の費用で起こせますから、納得が行くまで、あるいは、裁判所が白黒をつけてくれるまで戦うことが可能になります。
もちろん、大きな人身事故にあってしまった場合も、弁護士費用特約は有効な武器です。
交通事故にあってしまわれた私のお客様の中でも、弁護士費用特約をつけていなかった方は後悔されている方が多いですし、更新時には必ず加入されていますね。
— 私自身も、交通事故は起きるかもしれないと思っているから保険に入っているけれど、どこかで、まさか自分には起きないだろうと信じているから、弁護士費用特約には入っていないのかも・・・。
北山:気持ちは良く理解できます。
— 最後にお聞きしたいのですが、事故が起きてから、どの段階で弁護士さんに相談に行くのがいいのですか?
北山:事故直後でもかまわないし、示談交渉がこじれてからでもかまわないですよ~。
ただ、事故直後に証拠の保全をきちんとやっておく必要があるし、相手方への対処法を間違えてはいけないので、早い段階で相談をしていただきたいですね。
弁護士費用特約に入っていれば、お金の負担もないので、少なくとも弁護士費用のことでは悩みがなくなるはずです。
自分の頼みたい弁護士のところに直接、相談に行った場合の「相談料」もカバーしてくれる弁護士費用特約も多いですよ。
また、先に紹介した「日弁連交通事故相談センター」は相談料が無料ですから、弁護士に頼まないにしても、相談には早い段階で行き、対処法についてアドバイスを受けておきましょう。
— 駆け足になりましたが、2週間にわたって、交通事故の物損事故についてお話いただきました。
来週からは人身事故のお話です。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年7月14日