周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が平成27年7月からお送りしている「札 幌弁護士会の知恵袋」。
第11回目は,離婚問題でよく問題になる「財産分与・年金分割」を取り上げます。ゲストは、札幌弁護士会所属 の段林君子さんです。
離婚をするとしたら,今ある自分名義,相手名義の財産はどうなる のかしら・・・と悩んでいませんか?特に,夫婦の一方に財産を集中させていたような場合には,今後の生活に関わる大事な問題ですよね。よ くある事例をもとに財産分与・年金分割を簡単に説明していますので,参考にしてください!
放送日 | 2015年9月15日 |
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ゲスト | 段林君子 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
財産分与、年金分割、共有財産、特有財産、専業主婦、家事労働、厚生年金保険、共済年金、国民年金 |
— 今日も始まりました「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談に寄せられる皆様の質問に、今日も弁護士がズバリお答えします。
今日のゲストは段林君子(だんばやしきみこ)さんです。
段林:こんにちは。弁護士の段林です。よろしくお願いします。
— さてさて,5回にわたり離婚事件のコーナーをもうけており,今回は第3回目になります。テーマは財産分与と年金分割です。
では,早速今週の相談に行きますね!
段林:はい。お願いします。
第1 財産分与とは?
— はい。典型的な財産分与の相談事例を段林さんに用意してもらいました。
夫と結婚して30年が経ちましたが,このたび離婚をすることになりました。婚姻期間中,夫名義で自宅を購入したり,保険に加入をしました。夫の収入は,夫名義の口座に入れていました。来年には,夫が会社を退職するため退職金が会社から支給されると思います。私名義の財産はほとんどありません。
私自身は,専業主婦でしたので,実際に家計に収入を入れていたわけではありませんが,家事や育児をして家庭の生活を支えて頑張ってきました。
離婚の際に,夫名義の財産を分けてもらうことは出来るのでしょうか?
・・・という相談です。
さて,結婚してから築いた財産の大部分が旦那さん名義,という場合に,奥さんは財産の一部を分けてもらうことが出来るのでしょうか?
段林さん,このような相談は結構多いのですか。
段林:はい。いわゆる財産分与の問題ですが,離婚の相談の際には必ずといっていいほど,問題になりますね。
民法上,離婚時に夫婦の一方が他方に対し,財産の分与を請求することが出来るとされています。要するに,名義を問わず,夫婦の一方は他方に対し,共有財産といって,婚姻期間中に夫婦で形成した財産の分与を請求することが出来ます。
— なるほど。専業主婦の方でも,夫婦で財産を形成したといえるのですか?
段林:家事労働をして,夫婦の生活を支えてきているので,実務上は認められることがほとんどです。
— それはそうですよね。
育児や家事をしてきたわけですから,その貢献分は清算しないと納得出来ませんよね。
段林:そうですね。
ちなみに,婚姻期間が長ければ長いほど,夫婦で形成した財産が多くなる傾向にありますので,特に長年連れ添われた夫婦の場合,きちんと押さえておいた方が良いと思いますよ。
第2 財産分与の対象は?
— 今回の相談では,旦那さん名義の財産として,自宅不動産や保険,預金,退職金なんかが出てきていますが,これらは全て財産分与の請求が出来るのですか?
段林:婚姻後に形成されたといえるものについては,不動産や保険の解約返戻金,預金は財産分与の対象になりますね。ただ,旦那さんの婚姻前からもっている財産であったり,相続なんかで取得した財産については,旦那さんの特有財産ですので,基本的に財産分与の対象にはならないです。
退職金については,既に支給されているものについては基本的に財産分与の対象になりますが,将来支給されるという場合には,事案によりますね。
— といいますと?
段林:退職金の支給時期がかなり先という場合には,退職金をもらう前に会社の業績が悪化して倒産してしまうとか,実際に退職金が支給されない可能性もあるので,退職金を財産分与の対象にすると,公平ではない場合があります。そのため,会社の規模や支給時期等から総合的に考えて,近い将来支給される蓋然性が高い場合に限り認めるというのが裁判実務の現状です。
将来支給される場合には,どのように財産分与の対象となる退職金の額を計算するかという問題もあるので,なかなか複雑な問題が生じるところだと思います。
— 今回の事例では,1年後に退職金が支給される予定ということなので,認められる可能性はありますかね?
段林:会社の業績や退職金規定があるかという事情を総合的にみて,1年後退職金が支給される蓋然性が高いといえれば,認められることになりますね。
ちなみに,婚姻前から旦那さんがこの会社に就労していた場合には,婚姻期間とトータルの就労期間との割合から財産分与の対象となる金額を限定するのが一般的だと思います。
第3 財産分与の割合は?
— これらの財産について,財産分与の対象となるという場合に,割合はどうやって決めるんですか?
段林:通常は2分の1の割合で分けることが多いですよね。財産形成の貢献度に応じて分けるべきとされていますが,夫婦の一方がギャンブルで浪費の限りを尽くしたとか特殊な事情が無い限りは,貢献度を厳密に立証するのは難しいですから,裁判になった場合も,大体2分の1で分けられるのが多いかと思います。
第4 財産分与の請求はいつまで?
— ちなみに,財産分与の請求はいつでもできるのでしょうか?
段林:いえ,民法上,離婚してから2年以内にしなければならないとされています。
離婚してから2年以内に請求をしたとしても,離婚後に旦那さんが財産を処分してしまうということも考えられるので,出来れば離婚と同時に話し合いをして解決しておくのが良いと思いますよ。
— 財産分与は後回しにして,早く籍を抜いてしまいたい,という方もいらっしゃると思いますが,請求の期間も限定されているとなると,気を付けないといけませんね。
段林:そうですね。
今回お話ししたのは,典型的な事例です。実際は,より複雑な事情があることが多いので,財産分与について悩むことがあれば,弁護士に相談していただきたいですね。
それと,この事案の場合には,旦那さんが厚生年金保険に加入していると思いますが,忘れずに年金分割の手続きをしていただきたいと思います。
第5 年金分割とは?
— 年金分割,聞いたことはあっても,あまり詳細を把握していないという方も多そうですね。
段林:財産分与と混同されている方もおられるんですが,年金分割制度は,平成16年に,婚姻期間中に,一方の配偶者を支えた配偶者の貢献度を年金に反映させるという趣旨から新たに導入された制度で,全く別のものです。
— そうなんですね。年金であれば何でも分割出来るんですか?
段林:いいえ,厚生年金保険と共済年金のみになります。
— じゃあ,国民年金は対象にならないんですね。
年金分割をすると,旦那さんが受給する年金の半分をもらえるということですか?
段林:そうではないです。よく間違われるんですが,年金額を算出する基礎になっている保険料納付実績を分割するものですので,年金受給年齢に達する等の年金を受けられる状態になったときに,分割後の保険料納付実績に基づいて算定された年金受給権が分割を受けた人に発生するということです。
— ・・・難しいですね。旦那さんの年金を半分もらえる,という単純なものではないんですね。ただ,事例のように専業主婦の方で旦那さんしか年金を支払っていないようなケースですと,年金分割をしておいた方が絶対に良い,ということですよね。
段林:そうですね。
手続きの方法ですが,年金分割は比較的新しく出来た制度ですので,入籍時期によって取りうる手続きが違ったりします。弁護士に相談をする機会のある方は弁護士に聞いていただいても良いですが,ご自分で年金分割を含めて全部されるという方は,それぞれの年金の窓口になる年金事務所や共済組合に相談をして頂くのが良いと思います。
年金分割も離婚してから2年以内に手続きを行わないといけないので,注意してください。
— 離婚時の問題は出来るだけ早く解決しないといけないのですね。
段林:そうですね。
— ありがとうございました。本日のコーナーはこれにて終了です。
次回の離婚相談第4回目のテーマは養育費と婚姻費用です。先週来ていただいた弁護士の伊藤絢子さんをゲストとしてお迎えします。
次回もお楽しみに。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士伊藤絢子、弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年9月15日