周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が平成27年7月からお送りしている 「札幌弁護士会の知恵袋」。
第13回目は,離婚問題でよく問題になる「離婚に伴う慰謝料」を取り上げます。ゲストは、札幌弁護士会所 属の段林君子さんです。
愛し合って結婚した夫婦でも,婚姻期間中に相手を傷つけてし まったり,傷つけられたりということがありますよね。そんなとき,どんな解決がありうるのか,よくある不貞のケースをメインに分かり やすく解説していますよ!
放送日 | 2015年9月29日 |
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ゲスト | 段林君子 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
慰謝料、不倫、浮気、不貞行為、共同不法行為、婚姻関係の破綻、求償権、不貞慰謝料の相場、モラルハラスメント、浪費 |
— 今日も始まりました「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談に寄せられる皆様の質問に、今日も弁護士がズバリお答えします。
今日のゲストは段林君子(だんばやしきみこ)さんです。
段林:こんにちは。弁護士の段林です。よろしくお願いします。
— 今日は,5回にわたった離婚相談のコーナーの最終回です。
今日で段林さんは最後なんですね。
段林:そうですね。ようやく慣れてきたところで,名残惜しいですが・・・。
— また伊藤さんと遊びにきてくださいね!
段林:ありがとうございます。
第1 不倫に関する慰謝料請求の相談について
— さて,離婚相談,最後のテーマは慰謝料です。
今日もよくある相談事例を段林さんに用意してもらいました。
夫と結婚して6年目になりますが,夫が会社の同僚と不倫をしていることが発覚しました。夫は反省してその女性との関係を断つと言っています。私も子どもがいるので離婚をしたくないのですが,夫の浮気相手の女性のことはどうしても許せません。この女性に慰謝料を請求することは出来ますか?
・・・という相談です。
このような相談はよくあるんですか?
段林:非常によくあります。不倫というのは,われわれ法律家は「不貞行為」と言っているんですが,個人的には最近このような相談が多いなぁと感じています。
離婚相談なのに,離婚しない前提の事例を選んでしまいましたが,後から離婚する場合にも触れますね。
— 最近多いんですか・・。そう言われると何だか複雑な気分になりますね。
段林:まあ,たまたま私に集中しているだけかもしれませんが。
ところで,不貞の問題が生じたときには,どうしても関係者が感情的になってしまって,冷静な判断が出来なくなることが多くて,当時者どうしで交渉をしていく中でより複雑な問題に発展していくこともあるんですね。ですので,請求する方もされた方も,行動にうつす前に出来るだけ早い段階で弁護士に相談していただいた方が良いとは思います。
弁護士に依頼とまではいかなくても,早い段階で相談してもらえれば,第2,第3のトラブルは防げたのかな,と思うことがあります。
— ええ?第2第3のトラブルですか?
段林:よくあるのが,お金の請求の方法が少し行き過ぎてしまって,相手から恐喝と言われてしまったりですね。まれに傷害事件に発展することもあります。そのような相談も多いんですよ。
— ああ,やっぱりお金が絡んでくると,専門家に適切な指示を仰いだ方が無難なんですね。
段林:はい。
— そういえば,不貞行為というと,初回のコーナーで離婚原因にもなると言っていましたね。
段林:おお,よく覚えていらっしゃいましたね。
第2 不貞相手への慰謝料請求について
— おかげさまで離婚問題に詳しくなってきましたよ。
この場合,夫への慰謝料請求は認められるんじゃないかなと思うんですが,妻からの不貞相手の女性に対する慰謝料請求は認められるのでしょうか?
段林:夫は,妻に対して自らの貞操を守る義務がありますので,妻に対し,不法行為が成立し,慰謝料を支払う義務があります。
他方で,不貞相手の女性については,夫に妻がいることを知って不貞関係に至ったという場合には,妻との関係で夫との共同不法行為が成立しますので,慰謝料を支払わなければならないことになると思います。
ただ,不貞相手の女性が,妻と夫の婚姻関係が破たんしていたと過失なく信じていた場合には,共同不法行為は成立しませんので,妻の慰謝料請求は認められません。ただ,不貞相手の女性が婚姻関係の破綻を過失なく信じたと立証するのは難しいことが多いですけどね。
— 共同不法行為というのは,夫と不貞相手の女性が一緒に妻の権利を侵害したということですか?
段林:そのようなイメージで良いと思います。
— 事例では,妻は夫と離婚をしないで夫婦関係を続ける前提のようですが,一緒に権利を侵害したのに,不貞相手の女性に対してだけ慰謝料を請求するということは出来るのですか?
第3 求償関係について
段林:夫と不貞相手の女性の共同不法行為が成立する場合,妻は慰謝料の全額を不貞相手の女性に請求することが出来ます。
ただし,不貞相手の女性が妻に慰謝料を支払った後,夫に対して「あなたも一緒にしたことなんだから,私一人が払うのは公平じゃないでしょ。いくらか負担してよ。」ということで夫に求償の請求がされることがあります。
— そのような請求は認められるのですか?
段林:共同不法行為者の一人が全額の損害賠償をした場合,他の加害者に対して負担部分を求償することが出来るとされています。
不貞に至る経緯にもよるでしょうが,そもそも妻に対して貞操義務を負っているのは夫なので,最低でも半分は不貞相手の女性に支払わないといけないのではないでしょうか。
— なるほど。そうすると,妻としては,夫に後から求償がくる前提で考えないといけないのですね。
段林:そうですね。後のことは考えず,不貞相手の女性に対し全額請求することもありますし,話し合いでまとめるときには,不貞相手の女性の支払うべき慰謝料の金額について,最初から夫の負担分を差し引いた金額にして,夫への求償権を放棄させるような解決をすることもありますね。
第4 慰謝料額の相場について
— なるほど。
ちなみに,このようなケースで慰謝料額の相場はいくらくらいなんですか?
段林:当事者としては気になるところですよね。
協議でおさめる場合には,お互いが納得した金額になります。
裁判だと,不貞の期間や婚姻期間等によるんですが,破綻にまで至らない場合には,数十万円に限定されている裁判例が多かったかなと思います。
— 離婚してしまった場合とでは,慰謝料額が違うんですか?
段林:そうですね。やはり離婚にまで至ってしまった,或は不貞の発覚を機に夫婦が別居した等,不貞行為が原因で夫婦関係が破たんした場合には,その分不貞された配偶者の精神的,経済的ダメージが大きいことが多いので,慰謝料額には当然影響してきますね。
150万円から200万円くらいまで認めた裁判例は結構ありますし,事案によってはさらに高額の金額が認められることもあります。
第5 不貞以外の原因に基づく夫婦間の慰謝料請求について
— 今回,慰謝料というと,不貞の問題が事例として多いということで,事例を出していただいたのですが,他に夫婦間で慰謝料が問題になることはあるのですか?
段林:離婚をする際に,夫婦の一方に対して不貞以外の理由で慰謝料を請求することはありますよ。婚姻期間中に夫婦の一方に暴力やモラルハラスメントがあったり,夫婦の一方が浪費をして家計を困窮させた場合なんかに慰謝料を請求することはあります。
— 裁判では不貞以外の場合でも慰謝料請求が認められるんでしょうか。
段林:事案によります。暴力があったことを立証出来れば,裁判上慰謝料が認められることが多いですが,慰謝料の額は暴力の程度や頻度によります。暴力以外では,夫婦の一方に不適切な行動があったとしても,程度によって,慰謝料請求そのものが認められないこともありますから,その他のものについては,弁護士に相談してみてください。
— なるほど。分かりました!
— ありがとうございました。
5回にわたった,離婚相談のコーナーは本日で終了です。
次回もお楽しみに。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士伊藤絢子、弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年9月29日