周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が今年7月からお送りしている「札幌弁護士会の知恵袋」。
今週は、マンションやアパートの部屋を借りている方が「引っ越す」時に、必ず向き合わなければいけない法律問題です。
近日、引っ越しを計画されている方はもちろん、まだ住み続ける予定だけど・・・という方も将来に備えてマメ知識を仕入れておきましょう!
今週のゲストも引き続き岡崎拓也弁護士です。「台本なし」のため、「番組の尺(制限分数)は大丈夫か?」等と心配する番組プロデューサーを尻目にきっちり尺も合わせてきます。
次週と次々週は、「分譲マンションのトラブル」、つまり新築マンションや中古マンションを買った方のトラブルを取り上げます。
こちらについても、お楽しみに!
放送日 | 2015年11月10日 |
---|---|
ゲスト | 岡崎拓也 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
原状回復費用、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、敷金、通常損耗、自然損耗、特別損耗 |
— はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
今回のゲストは札幌弁護士会に所属の岡崎拓也さんです。
岡崎:よろしくお願いします。
— 岡崎先生といえば、サツベン放送局でゲストの方をお迎えしていましたが、あまり法律の話をしていた記憶がないのですが。
岡崎:そうなんですよ。今回は番組コンセプトというものがありますから。
第1 原状回復の範囲、自然損耗について
— では、質問なんですが、北広島市在住の26歳男性の方からの質問です。
私は大学生の頃から現在に至るまで賃貸マンションで暮らしてきたのですが、会社に近い場所に引っ越すことを決めて、先日、長年暮らしてきたマンションを引き払いました。明け渡す際に、マンションの管理会社の人が部屋の壁やフローリング等をチェックしていたのですが、この前、突然、約27万円の請求書が来て驚きました。敷金として入れていた5万円を差し引いて、27万円とのことです。
そして、その請求書には、①壁のクロスの張り替え費用、②床のフローリングの入れ替え費用、③家の鍵のシリンダー交換費用、④清掃料等の項目が挙げられていました。
たしかに、約8年暮らしてきたので、壁の色は変色していましたし、床にもキズはあったと思います。しかし、壁や床に穴を空けたわけでもありませんし、部屋でタバコも吸っていませんでした。
ただ、入居した時に鍵は2本預かっていたと思いますが、1本は落としてしまい、明け渡しの時には1本しか返却できませんでした。
私は、27万円を払わないといけないのでしょうか?
岡崎:よく賃貸マンションでも退去の時に問題となることがあります。通常は大家さんの申出のとおり払っていることが多いですよね。結論からいうと、自然損耗、通常損耗は支払う必要がないということになります。
— 難しい言葉が出てきましたが、自然損耗って何ですか
岡崎:人間は暮らしていると、クロスなんかは通常損傷、損耗していきますよね。住んでいることによって生じる通常損耗については、賃借人が負担する必要がないということになります。
— さっきのケースですと、壁のクロスや床のフローリングが該当するということですか。
岡崎:そうですね。
クロスが何年で100%損耗になるかという目安として、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というのがあります。裁判では、これが絶対というわけではありませんが、参考にされることがあります。
— 物によって自然損耗の年数が変わってきますよね。
岡崎:そうですね。クロス、床のフローリング、畳などで異なってきますね。
第2 家の鍵のシリンダー交換費用について
— 家の鍵のシリンダー交換費用はいかがでしょうか。
岡崎:退去する際、通常はシリンダー交換をしなくてもよいと考えられますが、今回は鍵を一本落としていますので、大家としては不法侵入の可能性などもありますので、交換費用は負担せざるをえないと思います。
第3 清掃料について
— その他に清掃料というのがありますが、これはいかがですか。
岡崎:これについては、契約書に定めがあるかによります。ただし、契約書に清掃料負担の記載があり、そして、20万円、30万円という高額なものでもなく、合理的な金額であれば、清掃料は認められます。
第4 特別損耗について
— 契約書はちゃんと見ておかなければならいなんですね。先ほど自然損耗の話が出てきました、これは、別の損耗というのもあるんですか。
岡崎:言葉としては、特別損耗といいます。クロス、壁に、ワイン、コーヒーをこぼしたという賃借人の過失で損傷したものをいいます。借りている方の過失で損耗したものですので、賃借人で費用を負担しなければいけないものになります。
— どのような場合に、弁護士に相談すればよろしいでしょうか。
岡崎:大家さんから請求を受けた段階で、弁護士に相談してもらうのがよいと思います。何が通常損耗かは難しいところですので、是非弁護士に相談して頂ければと思います。
— なるほど、引っ越しも回数を重ねてくると経験で対応できるところもありますが、払うべきお金と払う必要のないお金があるのですね。言われるままに何でも払ってきた自分もちょっと後悔です(笑)。
さて、本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士岡崎拓也(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士岡崎拓也(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年11月10日