周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
2月の月間テーマは「刑事弁護」です。
第4週は、先週に引き続き清平温子弁護士が、「国選弁護人と私選弁護人の違い」や弁護士にどんなことが依頼できるのかについて,詳しくご紹介します。ぜひ、お聞きください。
放送日 | 2017年2月28日 |
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ゲスト | 清平温子弁護士 |
今週の放送 キーワード |
逮捕、勾留、接見禁止、当番弁護、国選弁護、私選弁護 |
— はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送していきます。
今月は、刑事弁護について取り上げていますが、4週目のゲストは先週に引き続き,札幌弁護士会に所属されている清平温子(きよひらあつこ)さんです。
清平:本日も,どうぞよろしくお願いします。
第1 「勾留」手続のおさらい
— 前回は,「ある日,突然逮捕されてしまったら」というテーマでお話しを伺いましたが,本日のテーマは,「国選弁護人と私選弁護人について」です。
前回のお話しですと,逮捕によって身柄拘束される期間というのは,最大72時間ということでしたね。
清平:はい。ただ,前回もお話しをしたとおり,逮捕だけでは終わらず,その後,「勾留」という手続によって,さらに長期間身柄を拘束されてしまうことも多いです。
— 今お話しのあった,「勾留」という手続についてもう1度,教えていただけますか。
清平:検察官は,逮捕された被疑者が逃亡したり,証拠を隠滅するおそれがある場合には,裁判所に対して,「勾留」という手続を請求することができます。勾留が認められた場合,勾留期間というのは原則10日間なのですが,検察官は,勾留期間をさらに延長するよう請求することができ,最大で20日間の勾留が認められています。
現実には,一度逮捕されてしまうと,合計20日間の勾留が認められてしまう場合が多いです。
第2 接見禁止について
— そうなんですね。
前回,「勾留」されてしまった場合,外部との連絡ができないようにする「接見禁止(せっけんきんし)」決定が出されることがあるというお話しがありましたが,「接見禁止」について詳しく教えていただけますか。
清平:「接見禁止」とは、逃亡、または証拠隠滅、第三者との口裏合わせなどの疑いがある被疑者に対して、弁護士以外の面会、手紙などの受け渡しを禁止することができる制度です。共犯者がいる場合などは,口裏合わせを防止するために,「勾留」の決定と合わせて,「接見禁止」決定が出ることがあります。
— もし「接見禁止」決定が出てしまうと,逮捕から勾留まで最大で二十日以上も誰とも会えず,手紙のやり取りもできないという状況が続くことになるんですね。
清平:捕まった方にとってはとても辛い状況ですが,「接見禁止」決定が出ていたとしても,弁護士とだけは面会することができますので,そのような事態となった場合には,すぐに当番弁護士制度を利用するなどして,弁護士と面会をしていただけたらと思います。
前回も,お話ししましたが,どの弁護士会にも,当番弁護士制度というものがあり,1回目は無料で弁護士を呼ぶことができます。また,逮捕・勾留されてしまった方のご家族でも当番弁護士制度を利用することができますので,ぜひご利用いただけたらと思います。
第3 勾留決定や接見禁止決定に対する不服申立
— 勾留や接見禁止が不当だということで,勾留決定や接見禁止決定に対して,不服を申し立てることはできるのでしょうか。
清平:はい。不服申立てをすることができます。
そもそも「勾留」の要件をみたしていないじゃないか,という場合や,勾留期間を延長する必要性がない,などという場合などは,裁判所の勾留決定,勾留延長決定に対して,「準抗告(じゅんこうこく)」という不服申立てを行なうことができます。
また,「接見禁止」については,接見禁止決定の解除を求めることもできます。
— 不服を申し立てしたい場合には,具体的にはどうすればよいのでしょうか。
清平:捕まった方ご自身では,不服を申し立てたくても難しいと思いますので,まずは,当番弁護士制度などを利用して,弁護士にご相談いただければと思います。
すぐに釈放されることが難しい事案であっても,不服申立ての結果,身柄拘束期間が短縮されたり,「接見禁止」の一部解除が認められて,親御さんや奥さんとは会えるようになった,という事例もかなり増えてきていますので,ぜひ諦めずにご相談いただければと思います。
第4 「当番弁護士」と「弁護人」
— 「弁護人」という言葉も聞きますが,当番弁護士と弁護人というのは,別のものですか。
清平:当番弁護士は原則として1回限りの制度ですが,当番で来てくれた弁護士に依頼をして,引き続き,自分の「弁護人」になってもらうこともできます。
この「弁護人」というのは,刑事手続の中で,その方の代理人のような立場で関わる人です。
弁護人は,その方のために,早期釈放や不起訴を求めて活動したり,被害者の方に連絡をとって被害弁償や示談交渉をしたりといった活動をします。
また,仮に,起訴されてしまった場合には,裁判の中で,無実を主張したりします。もし,罪を犯したことは争いがないという場合でも,その方に有利になるような事情を主張し,減刑を求めたりといった活動をすることができます。
刑事弁護人の具体的な活動内容については,第70回の岡聖子(おかさとこ)弁護士のお話しの中でご紹介させていただきましたので,そちらも,過去のテキストをご覧いただくなどしてご参考にしていただけたらと思います。
— 自分の弁護人になってもらうには,費用がかかるのですよね。
清平:費用については,「私選弁護人」か「国選弁護人」なのかで変わってきます。
自費で「弁護人」をお願いする場合の弁護人を,「私選弁護人」といいます。
「私選弁護人」を依頼する場合の弁護士費用は,担当する弁護士との協議で決めていただくことになります。弁護士費用は,その弁護士に,どこまでの活動をお願いするかによっても,変わってくるかと思います。弁護士費用の目安を知りたい方は,各弁護士が公開しているホームページや,日本弁護士連合会がかつて定めていた報酬基準というものがありますので,そちらをご参考にしていただければと思います。
第5 「私選弁護人」と「国選弁護人」
— 「国選弁護人」という言葉もよく聞きますが,「私選弁護人」と「国選弁護人」はどう違うのですか。
清平:「国選弁護人」は,被疑者として勾留されている方が,貧困その他の理由で「私選弁護人」を選任することができないときに、国の費用で,弁護人を選任してもらえるという制度になります。
ただし,国の費用で選任されるといっても,100パーセントご本人の負担がないというものではなく,一定の資力がある方などについては,のちの裁判で,訴訟費用を本人の負担とするとの裁判がなされる場合もありますので,その点,ご注意をいただければと思います。
それ以外の点では,基本的には,「国選弁護人」と「私選弁護人」で,刑事弁護人として行なわなければならない活動の内容に違いはありません。
ただし,刑事弁護活動の範囲外と思われるお願い事などは,お引き受けできないこともありますが,「弁護人」に,どこまでのことをお願いできるのか知りたいという場合や,その他ご心配に思われることなどがありましたら,まずは,担当する弁護士に遠慮なくご相談いただければと思います。
第6 国選弁護人について
— 「国選弁護人」が選任される場合というのは,具体的には,どのような場合でしょうか。
清平:「国選弁護人」が選任される場合というのは,まずは,「勾留」されていることが要件となります。
— 逮捕された段階では駄目で、勾留の段階まで進むということが必要なんですね。
清平:そうですね。逮捕された段階で,弁護士に相談したいというときは,当番弁護士制度を利用していただければと思います。
— では,万引きとか暴行とかいろんな罪があると思いますが,どのような罪で勾留されていても,「国選弁護人」が選任されるのでしょうか。
清平:現在は,法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を越える懲役若しくは禁錮に当たる罪で,勾留されていることが要件となっています。
万引きは,窃盗罪という罪にあたりますが,その法定刑は,「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。そのため,長期3年を超える懲役がありますので,国選弁護人の対象事件ということになります。
他方で,傷害にまで至らない暴行とか,建造物侵入などの比較的軽微な罪については,国選弁護人制度の対象事件になりません。
もっとも,2016年に刑事訴訟法が改正されましたので,今後,2年以内には,全ての事件で勾留されている方が対象となる予定です。
— それでは、比較的、お金を持っている人でも国選弁護人を頼むことができるのでしょうか。
清平:「国選弁護人」は,国の費用で選任してもらうことになるため,その方の財産や収入が一定の金額以下であることが要件となります。
原則として,資力が50万円以下の方が対象になりますが,資力要件にあてはまらない方でも,例外的に国選弁護人制度を利用できる場合がありますので,まずは,当番弁護士にご相談いただければと思います。
— 当番弁護士を呼ばずに,いきなり国選弁護人を依頼することもできるのですか。
清平:はい。今お話しをしたような要件を満たしている方については,留置施設に対し,国選弁護人を選任したいという申出をすることができます。
第7 起訴後の段階における国選弁護人の選任
— では,裁判所に起訴されてしまった後は,どうなるのでしょうか。
清平:裁判所に起訴されてしまったという場合,「勾留」段階で国選弁護人がついている場合には,同じ人が,起訴後もそのままその方の国選弁護人として活動してくれることになります。
また,「勾留」の段階では,国選弁護人がついていなかった人でも,起訴後に国選弁護人が選任される場合があります。
— そうなんですか。どうして,「勾留」の段階と,起訴後の段階で取扱いが変わってくるのでしょうか。
清平:「勾留」の段階では,先ほどお話しをしたように,①法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を越える懲役若しくは禁錮に当たる罪で,②勾留されていること,③原則として資力が50万円以下であること,が要件でした。
そのため,比較的軽微な事件であったり,逮捕や勾留などの身柄拘束を受けずに起訴された方については,国選弁護人が選任されないことがあります。
しかし,起訴後は,法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を越える懲役若しくは禁錮に当たる事件などの場合,法律上,弁護人がいないと裁判が開けないことになっています。そのため,先ほどお話しをした資力要件さえみたしていれば,国選弁護人を選任することができます。
— それでは,それ以外の罪で起訴された方はどうなるのでしょうか。
清平:長期3年以下の比較的軽微な罪であっても,裁判所に資力申告書を提出することで,国選弁護人の選任を請求することができます。
— その場合も資力が50万円以下であることが要件となるのですね。
清平:はい。その点は,「勾留」の段階と同じです。
その方の資力が50万円を超える場合には,原則,国選弁護人の選任を請求することができませんので,私選弁護人となってくれる弁護士に心当たりがない場合には,札幌弁護士会宛に私選弁護人の選任申出をしていただくことになります。
それでも,私選弁護人になってくれる者がいないとか,私選弁護人になることを拒絶された場合などは,例外的に,国選弁護人の選任を請求できる場合もありますので,まずは,札幌弁護士会に私選弁護人の選任申出を行ない,弁護士の紹介を受けていただければと思います。
— そうですか、大変参考になりました。
本日は,どうもありがとうございました。
札幌弁護士会の知恵袋は,札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また,音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしまみほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士見野彰信、弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士清平温子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士清平温子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年2月28日