周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
第3週は、中島正博弁護士が「医療事故の種類」についてご紹介します。
ゲストのトークが軽快過ぎたこともあり、収録時間は知恵袋史上最短となりましたが、内容は知恵袋史上最高(?)の仕上がりです。
皆様、ご参考にしていただければ幸いです。
放送日 | 2017年3月21日 |
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ゲスト | 中島正博弁護士 |
今週の放送 キーワード |
医療事故,医療過誤,医療水準,転医義務,転院義務,説明義務違反 |
— はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
3月は第1週目から4週連続で,医療トラブルについて取り上げていきます。今回はその3回目で,ゲストは,弁護士の中島正博さんに来ていただきました。中島さん,自己紹介をお願いします。
中島:はじめまして。札幌弁護士会の中島と申します。弁護士としては12年目です。特殊な経歴としては、3年間ほど北海道の名寄市で弁護士業務を行っていたことでしょうか。
— 名寄市で業務を行っていたというのはどういう経緯なのでしょうか。
中島:弁護士の少ない地域ということで、日本弁護士連合会が赴任する弁護士を募集していたので手を挙げさせていただきました。今から約10年前のことですが、名寄市ではコミュニティFMのパーソナリティーを3年間務めさせていただくなど、貴重な経験を積ませて頂きました。
— パーソナリティーの経験がおありなのですね。それなら安心です。今日はよろしくお願い致します。
中島:いや、もう10年近く前のことなので、全然不安です。さて、医療事故をテーマとして今週で3回目となりますが、今日は医療事故の種類などについてお話ししたいと思います。よろしくお願いします。
第1 医療事故の種類
— よろしくお願いします。
医療事故の種類ということですが、どんな種類があるのでしょうか。
中島:全ての種類をテーマにするのは放送の時間的に不可能なので、今回はいくつか代表的な種類を挙げてみたいと思います。
まずは手技ミスといわれる種類ですね。
第2 種類その1 手技ミス
— 手技ミス・・・手術ミスのようなものでしょうか。
中島:手術ミスが代表的ですね。広い意味では、医療行為の際に「してはいけないことをする」、「しなくてはいけないことをしない」といった場合を指します。
— 手術ミス以外ではどんな場面が想定されますか?
中島:例えば、①大腸の内視鏡検査のときに誤って内視鏡を腸に刺して穴を開けるとか、②点滴による輸液の際に、その患者に使ってはいけない薬品を投薬するとか、③血液採取の際に血管ではなく神経に針を刺してしまうとか、手術以外でも手技ミスは存在します。
— なるほど。そう言われれば、ミスする場合って手術のときだけではないですね。他にはどんな種類の医療過誤がありますか。
第3 種類その2 見落とし
中島:他には「見落とし」という種類がありますね。本当は進行中の癌で、それを示す画像所見が出ているのに見落としてしまい、治療をせずに経過観察にしてしまったといったケースが代表的ですね。
— 見落としというのはたまに聞きますが、たとえば検査結果からは癌かどうかわからないようなケースの場合も医療過誤になるのですか。
中島:通常の一般的なお医者さんが見て、癌と判断できないようなケースの場合は、仮に見落としであったとしても医療過誤ではないでしょうね。スーパードクターの誰々なら見つけられたはずだ、と言う主張は裁判所では通らないことになります。
— そうすると、現在の医療技術や医療水準を満たした医療行為だったのかどうか、という点が重要になりそうですね。
中島:そのとおりです。その点を普通の人は知らないし、わからないので、良くない結果が出ていることを重視して医療過誤だと考えてしまう人が多い印象です。仕方ないことですが。
— 見落とし以外にはどんな医療過誤がありますか。
第4 種類その3 転医義務違反・転院義務違反
中島:転医義務違反・転院義務違反といった種類がありますね。例えば頭痛や目眩が酷いために脳神経外科へ通院したとして、実際には耳鼻科に関する病気だった場合、脳神経外科のお医者さんは、耳鼻科へ行くよう指示する必要があります。これが転医義務ですね。
— そのまま脳神経外科の医師が、原因不明として帰宅させた場合、どうなりますか。
中島:やはり通常の一般的なお医者さんからみて、耳鼻科関連の病気が疑われる兆候があるのかどうかといった点が問題になるでしょうね。明らかに耳鼻科関連(例えば、三半規管)の病気と疑われる場合に帰宅させるのは転医義務違反の可能性が高いでしょう。
— 患者としては、自分がどこの科に行けばよいかわからないとき、結構ありますよね。
中島:そうですね。私も似たような経験をしたことがあります。
次に転院義務ですが、例えば自宅の近くの小さい病院に通院したけども、手術設備や入院看護体制の問題から、その小さい病院では十分な治療ができない場合、設備や体制の整った大きな病院へ転院させなければならないという義務を指します。
— これはなんとなくイメージがつきますね。そもそも手術室のない病院もありますし、そういう病院での治療はほぼ不可能ですもんね。
中島:昔と違って、最近は大きな病院にいきなり行くことは推奨されて居らず、まずは小さな病院へ行ってから紹介状をもらって大きな病院へ行くというルールがあるようです。そういった状況からすれば、この転院義務というのは極めて重要になってきますね。
— 医療過誤といっても色々あるのがわかりました。そのほかにもまだ何かありますか。
第5 種類その4 管理・監督義務違反
中島:ほかには管理・監督義務違反などがあります。手術後の出血状況を把握せずに大量出血させたとか、手術後に激痛で暴れる患者のベッドに柵を設けずベッドから転落させたといった事案ですね。
そのほか、厳密には医療過誤ではないものの説明義務違反というのもありますね。きちんと説明を受けていればその手術は受けなかったのに、といったパターンです。この説明義務というものは、医師だけではなく、弁護士などの専門家一般が負っているといってよいでしょうね。
— 説明義務違反というのはよく聞く言葉ですね。といったところでお時間がきてしまいました。今日はありがとうございました。
中島:ありがとうございました。
— 札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士川島英雄,弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士中島正博(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士中島正博(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年3月21日