周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
5月の月間テーマは、「不倫問題」です。
番組プロデューサーを兼ねる北山祐記弁護士と初登場の栗田みち子弁護士が、不倫問題の歴史やスマホ時代を迎え、大激変する不倫問題を分かりやすく説明していきます。
5週間にわたってお送りする「不倫問題」大特集。
まずは、第1週を、ぜひお聞きください。
放送日 | 2017年5月2日 |
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ゲスト | 北山祐記弁護士、栗田みち子弁護士 |
今週の放送 キーワード |
不倫問題の歴史、インターネット時代、スマホ時代、不倫の証拠のデジタル化 |
―はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
5月は5週連続で,不倫問題について取り上げていきます。
今回はその1回目で,北山祐記(きたやま ゆうき)さんと栗田みち子(くりた みちこ)さんのダブルゲストに来ていただきました。
北山さんは、知恵袋の第1回目と2回目に来ていただいているので、今日は、栗田さんの自己紹介をお願いします。
栗田:はじめまして。栗田みち子です。
私は、札幌生まれなんですが、大学と司法修習だけ関西地方に行って、また、札幌に帰ってきて弁護士をやっています。私も北山先生と同じく広報委員会所属なのですが、今日は,広報委員会の上層部の圧力に屈してスタジオまでお邪魔しました。
―はい。札幌弁護士会が縦社会だということは、今までのゲストの皆さんからも聞いていますよ。こちらこそ、よろしくお願いします。
ところで、北山さんも関西地区ご出身で、北海道まで「高飛び」されてきたんですよね。
北山:そうですね。13年くらい前に、もめ事を起こして、街にいられなくなって・・・。
田島さん、そんな話をしにきたわけではなく、今日は不倫問題がテーマですよ。
―そうでした。
第1 どうして不倫が増えているの?
―不倫問題というと、やはり、旦那さんが若い部下の女の子と仲良くなって、みたいな事件が多いのでしょうか?
栗田:たしかに、旦那さんが会社の部下の女の子と仲良くなって、みたいな事件もありますが、女性の職場進出が定着した結果、奥さんが会社の同僚と、という事件もあったりして、ものすごく多様化していると思います。
夫が不倫という場合・妻が不倫という場合の両方があると思いますし、当事者の年齢も様々です。
不倫関係にある男女の両方が結婚している、いわゆるダブル不倫も珍しくはないと思います。
―不倫問題は、芸能会から毎年、ニュースが出てきますが、最近、また、増えているように感じますよね。
北山:そうですね。
芸能人の不倫問題は、元々、写真週刊誌等に狙われてきた歴史がありますよね。
忙しくて、プライベートの時間が少ない芸能人が、どうやって密会できるのだろうというあたりが社会の関心を集めてきたというところもあります。
ただ、芸能会に限らず、一般社会でもインターネット・スマホの普及によって、個人対個人の秘密通信が活発になって、変な言い方ですが、不倫を後押ししていますね。
―携帯電話がなかった時代なんかと比べるとスマホが普及している現代では、秘密の連絡はとりやすくなってますよね。
第2 スマホから不倫がバレるの?
栗田:そうなんですよ。
LINEやメールで、ひっそりと、しかも頻繁に連絡をとれる時代なんです。仕事をやっている時間帯でもメールなら、普通に双方向の連絡がとれます。
しかし、来週以降の放送で、より具体的なお話しをしますが、スマホ時代になったからこそ、スマホ本体やスマホと同期したパソコンなどにデータが残って不倫が発覚しやすくなっていますし、慰謝料請求の裁判で不倫つまり不貞行為が簡単に証明されてしまう時代にもなっているということなんです。
―不倫事件というと探偵さんを雇って、旦那さんや奥さんの行動を監視するところから始まるのかと思っていました。
北山:数年前まで、そんな特殊な隠し撮り「写真集」を持参で相談にお越しになる人もいらっしゃいましたが、今、圧倒的多数の方は、LINEのようなコミュニケーションアプリ、又はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を写真撮影して法律相談に見えられますね。
一方で、慰謝料を請求される立場の方が、相談に見えられる場合も、証拠は何ですか、と尋ねると「LINEやメールを見られてバレました。」という方が多いです。
―スマホが普及してきたのは、ここ数年ですよね。
ここ数年で、男女交際のコミュニケーションの取り方がより簡単になってきて、不倫が増えた。しかし、不倫がバレてしまう、尻尾を捕まえる、又は、尻尾を捕まえられることも簡単になってきたということでしょうか。
栗田:そういう傾向があると思います。
普通の携帯電話、つまりガラケー時代のメールでも、両者の発信メールを1つ1つ、つなぎ合わせれば、真実があぶり出せたのですが、ちょっと不倫の事実を確信あるいは証明するには、ちょっと物足らなかったんです。
―保存されるメールの数にも制限があったような気がしますし、他人が他人に出したメールの内容って、他の人には分かりにくかったですよね。
栗田:そうなんです。
しかし、現代のLINEなんかですと、全ての会話が時系列順に会話形式で並んでいくので、1年とか、1か月とかのスパンで、どのような逢瀬があったのか、どのくらいの頻度で会っていたのか、何をしたのか、等が、わかりやすく表示され、不倫の事実がクリアに浮き上がってくるんですよね。
―料金がかからず、気楽に出せるから、本音がポロッと出ちゃうし、メールの発信数も多くなってますよね。
北山:不倫も「恋」の一種ですから、夢中になるあまり、皆さん結構、迂闊な証拠を残しがちです。直ぐにバレてしまうかどうかは別として、不倫をすると行動パターンの辻褄があわなくなってしまうので、同居している配偶者の方はいずれ気がつくと思います。
―スマホのGPS機能も不倫発覚の契機になりそうですよね。
北山:そうですね。
どこにいたか、ということが不倫の決定的証拠になることは稀なので、私たち弁護士が不倫による慰謝料請求訴訟等でGPSによる位置情報を証拠として出すことはあまりないです。少なくとも私は一度も証拠として使ったことはありません。
ただ、不倫の疑いを抱いた配偶者の方は、位置情報を観測することで、疑惑を確信に変えていくこともあるのでしょうね。
―LINEやGPS等に代表されるような技術の進化は、弁護士さんの仕事の進め方も変えてくるのですね。
栗田:刑事裁判でも、任意のGPS捜査が適法か違法か、が最高裁判所で判断されたりしていますので、私たち弁護士も、技術の進化にも対応していく必要があると思います。
中々、世の中の早い技術進歩についていくのが大変なわけですが・・・。
北山:技術の進化についていくこと、それは社会の進化に弁護士がついていくことでもあると思います。
それは、不倫事件に限ったことではなく、刑事事件、交通事故事件、労働事件等でも証拠のデジタル化が進んでいます。
刑事事件の犯人逮捕の局面では、Nシステム、GPS等のハイテク証拠が活用されていますし、共犯者同士の共謀の証拠として、LINEは出てくるようになりました。犯人が利用していた携帯電話・パソコンの押収も当たり前になっていますね。
―テレビの刑事ドラマを見ていても、捜査のやり方が昔に比べたら変わってきたと思います。
昔は、片平なぎささんや船越英一郎さんが、海辺の断崖絶壁で、犯人を自白させるのが捜査の王道だったと思うのですが・・・
北山:私もその系統のドラマは好きでした。
マネしたことはないですが、あのように簡単に自白はしてくれないと思いますけどね。
―交通事故の場合だと、北山さんが知恵袋の記念すべき第1回で言われていたドライブレコーダーがデジタル化された証拠に当たるのですね。
北山:そうです。証人の記憶はあいまいなことが多いですが、ドライブレコーダーは鮮明に事故の状況を記憶してくれているのです。
―さあ、そろそろ、本題の不倫問題に戻りましょう。
第3 昔の人の不倫は、どうだったの?
北山:そうですね。
ただ、何しろ今月は、5週にわたって不倫問題を取り上げることができるので、まず、最初に、不倫問題を歴史的に振り返ってみてみたいと思います。
―どこまで、遡りますか?
北山:戦後あたりから・・・・
栗田:私、生まれてませんから・・・。
北山:私も生まれてないんですが・・・・。
最初は、大富豪のおじいさんが経済力にものをいわせて愛人さんを抱える、という時代があったと思うんです。映画「犬神家の一族」の世界観です。
―「犬神家の一族」がわからないですよ。
北山:映画は1976年公開だそうですから、50歳以上の限定ネタかもしれません。
しかし、当時は、女性が経済的に自立することが難しい時代だったので、そのように大富豪にすがることもあったのでしょうし、大富豪の奥さんの方も、夫の不倫に目をつぶるしかなかった時代だったのだと思います。
しかし、その大富豪が亡くなった時に、腹違いの兄弟間で遺産相続争いが起こる。
これが犬神家の一族の世界観であり、不倫の第1期と呼んでいきましょう。
―第2期は、どの時代ですか?
北山:バブル経済崩壊くらいまで、飛びましょうか。
栗田:ずいぶん、飛びましたね。
北山:はい。
日本テレビ系列の「ポケベルが鳴らなくて」というドラマがあって、不倫当事者の年齢差29歳という設定でした。
このドラマでは、有責配偶者のいる家庭は不倫を切っ掛けに崩壊していきます。
これが1993年の放送ですから、1991年のバブル経済崩壊直後のドラマです。
ポケベルという通信手段の誕生で、サラリーマンの男性が、ひっそりと女性にコンタクトできるような時代になったのです。
男女雇用機会均等法は1986年の施行ですから、会社で働き続ける女性が増えてきた時期でもあり、それで職場での不倫が増えたのかもしれません。
なお、「不倫は文化だ」みたいな発言がバッシングを浴びたのは1996年のことでした。
栗田:私は当時まだ小学校に上がったか上がってないかくらいですが、私でもそのフレーズは知っていたと思います。
―私はドラマに記憶がありますが、世間というか主婦の方からの受け止め方は厳しくて、バッシングまでがされていた記憶があります。
北山:そうですよね。
この第2期に、妻が夫の不倫に怒り、夫に離婚を切り出し、慰謝料を請求する時代に突入したと考えます。
ちなみに、ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」の番組企画と主題歌作詞は秋元康(やすし)さん。主題歌は結構ヒットしました。今もそうですが、時代を捉える力はすごいですね。
栗田:ポケベルは、携帯電話に比べると、ちょっと1WAYな感じですよね。「ポケベルがなるのを待つ」ですからね。
―そうですよね。
現代のスマホに比べると不便な感じがします。
そうすると、第3期が今ですか?
北山:はい。
ポケベルから、携帯電話、そして、iモードメール、そして、出会い系サイト・SNS・LINE等と男女の秘密通信が活発になるだけではなく、バーチャル上の出会いから現実の出会い・交際に発展していく時代になっていきました。
第4 不倫をしたら、どんな制裁があるの?
―芸能会では、不倫発覚によって、それぞれそれなりの制裁を受けているような気がしますが、一般人の方の場合、どうなるんですか?
栗田:芸能会の不倫で実際に動いている金額はわかりませんが、一般人の不倫でもやはり慰謝料を請求されていますし、有責配偶者は離婚を請求され、家庭を失うことも多いです。
民法770条1項1号で裁判上の離婚事由のトップに規定されていますので、不倫した方がどんなに別れたくないとゴネても、裁判になれば離婚せざるを得なくなることがほとんどですし、慰謝料を支払えと判決で言われてしまいます。
また、不貞相手と呼ばれる、つまり奥さんや旦那さんに手を出してしまった人も、きっちり慰謝料を請求されます。相談者の中には、様々な言い訳をされる方も多いですが、法律的に正当化される理由は稀ですので、慰謝料を払わなければいけないという覚悟だけは持っていただきたいですね。
一つの不倫をめぐって誰が誰にどんな権利を持つかについても来週以降、詳しくご説明したいと思います。
北山:こんな感じで、5週、放送していきたいと思います。
果たして、来週はどんな話になるのでしょうか。これから考えていきたいと思います。
―札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士北山祐記、弁護士栗田みち子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士北山祐記、弁護士栗田みち子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年5月2日