周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
5月の月間テーマは、「不倫問題」です。
番組プロデューサーを兼ねる北山祐記弁護士と初登場の栗田みち子弁護士が、不倫問題の解決方法や不貞行為のもたらす結果等について、具体的に解決プロセスを分かりやすく説明していきます。
5週間にわたってお送りする「不倫問題」大特集。
今回は、第3週です。
ぜひお聞きください。
放送日 | 2017年5月16日 |
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ゲスト | 北山祐記弁護士、栗田みち子弁護士 |
今週の放送 キーワード |
不倫問題の解決に向けて、被害配偶者からのご相談、加害者側からのご相談、判決か和解か、そのメリットとデメリット、被害配偶者が注意しなければならないこと、離婚後の生活設計を考えていこう |
―はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
5月は5週連続で,不倫問題について取り上げています。
今回はその3週目で,引き続き、北山祐記(きたやま ゆうき)さんと栗田みち子(くりた みちこ)さんのダブルゲストにお話しいただきます。
栗田:栗田です。
今週もよろしくお願いします。
北山:北山です。
今週もよろしくお願いいたします。
第1 不倫問題の解決に向けて
―はい。引き続きよろしくお願いいたします。
今月の1週目は、主に不倫事件の証拠のお話しでした。
そして、2週目は、不貞行為が離婚問題に発展するお話や慰謝料請求のお話しが中心でした。
今週は、どのようなお話しになりますでしょうか?
栗田:はい。
今週は、どのような流れで、不倫問題を解決していくか、というテーマでお話ししたいと思います。
まず、不倫事件に限らず、全ての事件について言えることですが、私たち弁護士が扱う事件は、原告側と被告側が金銭等を巡って争うため、必ずといってもいいほど、感情的な対立を抱えた状態で始まっていきます。
不倫問題もその例外ではなく、被害配偶者の側は大きな怒りを抱えて弁護士のところに相談に見えられるわけです。
―先週までにも、不倫は恋の一種というお話しもありましたし、当事者が少なくとも3人いて、男男女か男女女ですから、三角関係の時のような複雑な感情が芽生えるのでしょうね。
北山:そのとおりです。
加害者2人が男女で、被害配偶者が1人で、男性か女性という構造ですから、被害者の側は数的にも2対1で、孤独な気持ちになります。
また、夫又は妻としてのプライド、男性又女性としてのプライド等が傷つけられてしまうわけですから、人生の中で精神的にかなり厳しい局面だといっても過言ではないでしょう。
第2 被害配偶者からのご相談
―弁護士さんが、そのような辛い立場の被害者の側の相談を受けられた時はどのように応対されるのですか?
栗田:被害者の方の相談を受ける時は、事件の内容をうかがう、つまり、不倫の事実内容や不倫の証拠の有無・内容を聞き取ることも大切ですが、被害者の方の感情を受け止めてあげることが大切だと思います。
したがって、相談を受ける弁護士は、相談のために十分な時間を割くことが大事だと思います。
―北山さんはどのように相談を受けていますか?
北山:そうですね。
不倫事件や離婚事件の相談を受ける場合は、1時間から2時間くらいは、後ろのスケジュールがない時間帯に設定するようにしています。
そうすると平日の夜間や休日になってしまうことが多いのですが(笑)。
―エンドレスみたいになってしまいますか?
北山:エンドレスにはしないようにしています。
私たち弁護士は事件を解決するのが仕事ですから、被害配偶者の方からの相談の場合には、離婚を選択するのか、その上で、慰謝料や財産分与・養育費はこのくらいになる見通しである旨を説明して、相談者に「決断」を求めます。
離婚を選択する場合には、人生設計の大幅な変更が必要となりますから、特に専業主婦の方や住宅ローンを抱えた家に住んでいる方の場合には、弁護士が厳しい現実を突きつけなければいけない時が頻繁にあります。
―栗田さんは、どうお考えですか?
栗田:そうですね。
感情的になられて相談に見えられる方は少くないと思いますが、離婚後の生活設計のお話しをすることによって、母親・父親として、あるいは一人の人間として、冷静に今後の人生を考えていただけるケースは多いと思います。
ただ、配偶者の気持ちを不倫相手から取り戻したい、あるいは、不倫相手に仕返しをしたい等、弁護士が一生懸命説得を続けても、お請けできない方向性や立場を変えていただけない場合も稀にあります。
―気持ちを取り戻すのは、難しそうな気がします。
北山:そうですね。
有責配偶者の側が不倫発覚と同時に、自らの家庭等を守ろうという気持ちが湧き上がってくれれば、つまり、恋が冷めてくれれば良いのですが・・・。
逆に、開き直って被害配偶者の悪口を言い始めているケース、あるいは、逃げ回っているケースもわりとあります。
―恋愛は、急に燃え上がったり、冷めたりしますよね。
でも、弁護士さんでも、その恋が冷めてくれるかどうか、は中々、分からないのではないですか?
北山:そうでもないと思っています。
私たちが、弁護士だから、あるいは様々な事件を見てきているから、という理由ではなく、ちょっと引いて、第三者的に事件を見てみると、ある程度、予測できるのだと思います。これは、その夫婦のことをよく知っている友達なんかでも同じ予測は出来るのだと思います。
被害配偶者の方から伺った様々な情報を整理して、その状況分析というか、予測というか、そこは事件解決の方向性を決めるにあたって重要なポイントなので、私の場合は「間違ってるかもしれないけど・・・」と前置きした上で、ズバッといいます。
―:ズバッとですか・・。
初対面の方に伝える弁護士さんも大変そうですね。
北山:大変ですよ(笑)。
栗田:不倫発覚の瞬間や直後、被害配偶者の方は相当動揺していますし、感情を制御することも難しいということは理解しています。「自分たち夫婦のことを客観的に見てみましょう。」と指導することもナンセンスだと思いますし・・。
ただ、不倫にどう対処するか、それは結局、離婚に向けて一歩進み出すのかどうか、という人生の重大な分岐点なので、誰かが「現実の状況」を被害配偶者の方に伝えなければならないのだと思います。
しかるべき誰かに客観的分析の結果を「言って欲しかった。」という相談者の方も多いと思います。
―それは、友達からの恋の相談とかでもあるかもしれないですね。
北山:ズバッというと、「私の気持ちを分からない弁護士だな。」とか、「物わかりが悪い弁護士だな。」という目で見られることもありますが、正直に状況の分析結果を伝えた方が「やっぱり、そうですよね。」という感じで、落ち着きを取り戻して、紛争解決を弁護士に依頼していただけることの方が多い気がします。
第3 加害者側からのご相談
―では、加害者側の有責配偶者や不倫相手の側から相談された場合は、どうなんでしょうか?
栗田:「不倫中なんですけど、バレますか?」みたいな相談は受けたことがありません。
99%の方は、「離婚調停を起こされました。」とか、「相手の奥さん又は旦那さんの弁護士から慰謝料請求の手紙が来ました。」とかで、何らかの書面を持参でご相談に見えられます。
ただ、第81回知恵袋でも紹介させていただいたように、携帯電話やメール等で個人間通信が簡単な時代ですから、不倫相手に対しても、被害配偶者が直接電話やメールでお怒りの慰謝料請求がなされて瞬間的に事件化することもあります。
―直接、電話やメールしてしまう気持ちはわからなくもないですが・・・。
でも、自分でお金を請求するって自分でも結構怖いですよね。
栗田:そうなんです。
携帯電話で電話をした場合は「録音」が、メールした場合は「メールの内容」が証拠として残ってしまいます。
現実には、そのような展開には中々ならないですが、怒りのあまり言葉が過ぎると、あるいは度を超した不当な慰謝料請求により「脅迫罪」や「恐喝未遂罪」に問われることもありえます。
―いずれにしても、冷静な対処が必要ですよね。
そうだ。不倫をしちゃった側からの相談の話でした。
北山さんは、どう対処していますか?
北山:加害者側は、原則として事件の把握が被害者側より、相当簡単です。
野球で言えば、被害者側、つまりピッチャーが既に球を投げてくれているので、やってきた書面を読んで事件の大筋をサクッと把握してしまいます。
弁護士が代理人として作成した文書だと、請求してきた金額や文面等で、被害者側弁護士の意向や方針がわかったりするので、私たちが「落としどころ」と呼んでいるものを想定しやすくなります。
―「落としどころ」とは何ですか?
北山:事件を解決するための「和解案」と考えていただければいいと思います。
第4 判決か和解か
―「和解や示談」と対立する言葉は「判決」ということだと思いますが、どちらがいいのでしょうか。
北山:私は個人的には、和解派です。
少なくとも不倫の慰謝料請求事件で、何十件とやっているはずですが、判決には一度も至っていません。
冒頭で申し上げたとおり、元々、感情のしこりが大きいタイプの事件ですから、判決にもっていっても、感情のしこりが無くなるものでもありません。
また、慰謝料相場の急低下で、判決まで持っていくと、被害者側の方がよりがっかりする金額になることが多いのだと思います。
―感情のしこりが大きい当事者の間で和解はまとまるのでしょうか?
栗田:時間をかけて、双方の弁護士がそれぞれの依頼者に相場や落としどころを説得していくことで、溝は埋まっていくのだと思います。
相手方を金額面で説得するというよりは、自分の依頼者を説得するのが和解をする上で重要な作業です。
北山:もちろん、離婚訴訟や民事訴訟の「判決」というものを裁判官や弁護士が作り上げてきてくれたから、慰謝料の相場や、その慰謝料の増減にあたって考慮される事情が明らかになってきたという功績はあります。
慰謝料の相場の低下についても、常に誰かがチャレンジして「判決」が出されてきたからこそ、それを参考にして私が「和解案」を出せるわけです。
他人のフンドシで相撲をとっていると言われるかもしれませんが、自分の依頼者にとって良い結論、つまり「和解」を選びたいというのが私の考え方です。
―他にも「和解」や「示談」のメリットはありますか?
栗田:離婚を選択せずに、夫婦関係を修復しようとするケースでは、不倫の再発防止を誓約させる、具体的には連絡や接触禁止を誓約させたいわけですが、判決では「いくらを支払え」としか、書かれていないわけです。
それが、「和解」だと、「謝罪の言葉」や「再発防止誓約」等をきめ細かく設定できることも魅力の一つですね。
―気になる慰謝料の相場の低下には訳があるのでしょうか?
栗田:それは、依頼者にも理由を説明しにくい部分です。
第81回知恵袋で述べたように不倫事件の増加という事情があり、もし、慰謝料の相場を上げて威嚇をしても、社会の流れ的に不倫の数は減りそうもないという諦めみたいなものはあるのかもしれません。
しかも、慰謝料の相場を下げないと、結局、加害者側が「払えない」という問題が生じるから、双方が和解することも出来ず、訴訟の進行がダラダラして裁判所の負担が重くなるという事情もあるのだと思います。
北山:不倫慰謝料は、金額を増減させる要素が相当あるので、裁判官もしっかり金額を弾こうとすると、相当、長い判決文を書かなければならないのです。
また、離婚事件の本質は、財産分与や年金分割。そして、未成熟のお子さんがいる場合は、親権や養育費・面会交流等が特に大切なので、慰謝料額に拘ると本質を見失うことになると思います。
第5 加害者側からのご相談における注意点
―加害者側の相談は、被害者側よりも簡単という話がありましたが、他に注意されていることはありますか?
栗田:不倫を認めている相談者の方については、相場を説明して、具体的に払えるか、という問題に直ぐに入っていきます。
被害者側に回答するにあたって、いくらをいつまでに支払うという部分は大切です。一括払いが不可能なら、分割払いのシミュレーションもする必要があります。
北山:不倫を「やってない。」と言われる相談者さんの場合は、慎重な対処が必要になります。
本当にやってないという場合もあるのでしょうが、後から「実は、先生・・・」という話が出てこないとも限らないので、お話しを伺って、どうも正直に話していないな~、という感じの時は、結構、「それはちょっとおかしな話ではないか。」とストレートな質問をぶつけたりします。
―そういう場合は、事件を引き受けられるのですか?
北山:結局、真実はわかりませんが、依頼者が弁護士に真実を話してくれない、一方、弁護士も依頼者の言うことを信じられないという状況だと思いますので、私は受任しないです。
不倫事件は、依頼者と弁護士との間に信頼関係がないと和解に至ることが難しいタイプの典型例です。
幸い、私は受任したお客さんには、後から「実は、先生・・・」と言われたこともありません。
栗田:大阪弁で怖いからじゃないですか?
北山:普段は標準語ですが、ちょっとピリッとすると、大阪弁が出ますね。
竹内力さんみたいな感じで・・・
―それは、怖い。
事件はまだまだ解決していないようですが、それは来週以降にいたしましょう。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士北山祐記、弁護士栗田みち子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士北山祐記、弁護士栗田みち子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年5月16日