周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
弁護士の日常について
第2、今週のテーマ
交通事故(物損事故)
第3、目次
(1)物損事故に遭ったら
(2)任意保険
(3)過失割合
放送日 | 2017年8月22日 |
---|---|
ゲスト | 菊地亮介 弁護士、山口治香 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
弁護士,交通事故,保険会社,物損,人損,過失割合,交通事故証明書,慰謝料 |
―はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
今回は,「弁護士の日常について」というテーマで放送します。
ゲストは札幌弁護士会に所属の山口治香(やまぐちはるか)さんと菊地亮介(きくちりょうすけ)さんです。
山口・菊地:よろしくお願いします。
―今回と次回は,交通事故についてのお話ということですが,まずは,前回に引き続いてですので,簡単にお二人の自己紹介をお願いします。
山口:私は札幌弁護士会に所属しております山口治香と申します。どうぞよろしくお願い致します。
菊地:同じく札幌弁護士会に所属しております菊地亮介と申します。よろしくお願い申し上げます。
―さて,今回は,交通事故のお話しをお伺いしますが,お二人は,交通事故を扱う機会は多いのですか。
山口:私は,所属事務所が損害保険会社の顧問をしておりますので,交通事故を扱う機会は多いです。
菊地:私も,山口先生と同じように所属事務所が損害保険会社の顧問をしておりますので,交通事故を扱う機会は非常に多いですね。
―お二人とも,交通事故に大変お詳しい方とお呼びしてもよろしいみたいですね(笑)。それでは,具体的にお話しをお伺いしていきます。
まず,北海道は交通事故が多い印象です。夏は,広く長い直線道路があって,ついついスピードを出してしまうような道が多いですし,冬は冬で、雪道でスリップしたりすることが多いんじゃないでしょうか。
菊地:仰るとおり,全国でも北海道は交通事故が多い地域です。これから,事故が起きたときにどのように対応して行くかという話をするというのになんですが,やはり,交通事故は起こさないことが一番です。
ただ,どうしても巻き込まれてしまうこともあるので,今日はそのようなお話をさせてもらえればと思います。
第1、物損事故に遭ったら
―なるほど。では,一般的に交通事故が起きた場合,まずどうすべきでしょうか。
山口:はい。まず今回は,物損,いわゆる車が壊れた場合についてお話ししていきます。必ずしなければならないことは,どんな事故であっても警察を呼ぶことです。警察への通報は,道路交通法上定められた義務です。また,警察に届け出ないと,交通事故証明書というものが発行されません。後々,修理費用や過失割合でもめて,裁判になったときに,この交通事故証明書がないと,事故があったこと自体の証明が面倒なことになります。
ですから,たとえ運転者の方に怪我がなかったとしても,必ず警察への届出は行って下さい。
―なるほど。皆さん交通事故に遭った際には,必ず警察に届けて下さい。
では,事故に遭った後,弁護士さんとはどのように関わっていくのでしょうか。
第2、任意保険
菊地:そうですね。一般的には,事故に遭った瞬間から弁護士が関わるということは少ないと思います。
まずは,自分が加入している任意保険会社の担当者に相談することがほとんどではないかと思います。
少し,話はずれますが,田島さんは任意保険に加入されていますか。
―加入しています。
菊地:さすがです。というのも,最近,若い方を中心に保険料が高いとの理由で任意保険に加入しない方が増えているようです。自分を守るためにもそうですし,もし自分が事故を起こしてしまった場合,相手の方を守ることにもなりますから,任意保険には加入しておくことを強くお勧め致します。
―保険の加入は大事なんですね。ちなみに,私は,自賠責保険というものにも加入しているんですがこれは任意保険とは違うものなんですか。
菊地:違います。特に大きな勘違いは,どのような場合でも自賠責保険が使えるというものですが,自賠責保険が使えるのはあくまで人損,人が怪我をした場合の治療費等です。今回のような,物損,いわゆる車の修理費などには使えません。
第3、過失割合
―そうなんですね。気をつけねばなりませんね。それでは,保険会社の担当者に連絡した後はどのようになるのでしょうか。
山口:詳しい説明は省きますが,自分が100%悪いという事故ではない限り,保険会社の担当者が相手の方や相手の保険会社の担当者と折衝することになります。
これで話がつけば,問題はないのですが,やはり保険会社同士等では話がつかない場合も数多くあります。そのときに,我々の出番が回ってきます。
―話がまとまらない場合というのはどういう場合ですか。
山口:やはり多いのは,過失割合,つまり,どちらがより悪いのかという点ですね。
運転者の方は,感情的になってしまうことも多いですし,その調整も含めて,法的に適切かつ妥当な解決に導くために,私たちが関与することになります。
弁護士が介入した場合,以後の交渉は,すべて弁護士が行います。また,話し合いがつかず,やむを得ず訴訟になった場合もそのまま弁護士が代理人として活動しますので,車の所有者や運転者の方が特別に何かをする機会はほとんどありません。
―そんなに過失割合でもめることが多いのですか。そんなに事故の判断は難しいのですか。
菊地:そうですね,田島さん,たとえば,田島さんが片道2車線くらいの道路を走っていて,横から一時停止の標識を無視して田島さんが走る道路に進入してきた結果,事故が起きてしまった場合,田島さんに悪いところはありますかね。
―相手が標識を無視してるんだから,相手が完全に悪い気がしますね。私に悪いところはないと思います。
菊地:そうですよね。でも,実際そう簡単な話ではないんです。
基本的な裁判例の考え方では,この場合でも1割ないし2割は,田島さんも悪いといわれてしまうことがあるのです。
―そうなんですか!驚きですね。
菊地:もちろん必ずしもそうだとは言えません。個別の事情によっては,判断も変わってきますから。だから,このような難しい判断を自分だけでせずに,弁護士に依頼をして,きちんと法的に適切な判断をしてもらうということが大切です。
―自分のためにも早めに相談,ということなんでしょうね。でも,弁護士さんの費用は高いのでは・・・
山口:確かに,物損事故で修理費用が10万円以下の場合,普通に弁護士を頼んでしまうと費用倒れになる可能性があります。ただ,最近は,任意保険に弁護士費用特約という特約がついていることが多く,この特約で弁護士費用をすべて賄うことができる場合があります。
この特約を使っても,等級などには影響しないようですので,詳しくは,ご自分が加入されている任意保険会社の担当者に聞いてみることが良いかと思います。
―今日は,交通事故についてですが,とても勉強になりました。皆様ももし,事故に遭われてしまったら,弁護士さんに相談してみることが良いかも知れませんね。
また、交通事故の物損事故に関しては、札幌弁護士会の知恵袋の第1回と第2回でも取り上げていますので、ぜひ、バックナンバーを札幌弁護士会のホームページで聞いてみてください。
さて,本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。札幌弁護士会の知恵袋は,札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また,音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記、弁護士髙橋健太、弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士山口治香、弁護士菊地亮介(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士山口治香、弁護士菊地亮介(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年8月22日