周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
弁護士の日常について
第2、今週のテーマ
交通事故(人身事故)
第3、目次
(1)事故に遭ったら病院へ
(2)治療費
(3)通院交通費,休業損害,入通院慰謝料等
(4)後遺障害
放送日 | 2017年8月29日 |
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ゲスト | 菊地亮介 弁護士、山口治香 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
弁護士,交通事故,保険会社,物損,人損,過失割合,後遺障害,慰謝料 |
―はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
今回は,「弁護士の日常について」というテーマで放送します。
ゲストは札幌弁護士会に所属の山口治香(やまぐちはるか)さんと菊地亮介(きくちりょうすけ)さんです。
山口・菊地:よろしくお願いします。
―今回は,前回に引き続き,交通事故についてのお話ということですね。
菊池:はい,前回は交通事故に遭い,車が壊れた場合,いわゆる物損の場合についてお話をさせて頂きました。今週は,交通事故にあって怪我をしたりしてしまった場合についてお話をさせて頂きます。
―確かに,交通事故の怪我は怖いですね。車にひかれてしまったらパニックになってしまい,どう行動して良いか分からないです。
菊池:車に轢かれる,つまり,私たちが「車対人」と呼んでいる事件ですね。
鉄の塊がぶつかってきたわけですから,私もパニックになってしまうと思います。もっとも,我々がこれから話すのは事故にあった後に,どのように賠償請求をしていくか,そのために何が必要かと言うことになります。
第1、事故に遭ったら病院へ
―なるほど。それでは,具体的にお話を聞いていきたいと思います。
まず事故にあった場合,病院に行くと思うんですがどうでしょう。
山口:そうですね,救急車で運ばれてしまうような場合は自然と病院に行くことになります。身体が動かない場合はもちろんですが,頭を打った場合などは,すぐに病院に行ってレントゲン,MRIやCTといった検査を受けるべきです。
また,私たちが「車対車」と呼んでいる事故の場合,例えば,車に乗って後ろからぶつけられてしまった場合,目立った外傷がないことから病院に行かなくても良いかと思ってしまう方も多いと聞きます。
ただ,むち打ちや圧迫骨折等は,後から症状が出てくる場合もありますので,事故にあったら,直後に一度は病院に行かれた方が賢明かと思います。
―しばらく経ってから病院に行くと,本当にその事故で怪我したの?って疑われてしまいそうですよね。
山口:そうですね。法律的観点から申し上げると,後の賠償請求において事故と怪我との因果関係を争われることがあります。事故にあったら,すぐに病院に行き,痛いところはきちんとどこが痛いのかをお医者さんに伝えてください。ただ,法律的なこともそうですが,何よりご自分の身体ですから,大切にしてくれればと思います。
第2、治療費
―山口先生,お優しい言葉をありがとうございます。でも,病院の治療費などはどうなるのでしょうか。
菊池:事故の相手の方が任意保険会社に加入している場合には,その保険会社が治療費を負担することになりますので,基本的にご自分が払う必要はありません。
―それを聞けて安心しました。では,自分の財布を気にせず,十分病院に通えるということですね。
菊池:ただ,保険会社もいつまでも治療費を負担してくれるわけではありません。担当のお医者さんから情報を提供してもらうなどして,そろそろ治ってきたかな,あるいは,これ以上治療しても状況は変わらないんじゃないかなと考えたときは,治療を終了して欲しいと伝えてくることがあります。
―そうなんですか。でもやっぱり,まだ痛いというときはどうしたら良いのでしょうか。病院に通ってはいけないんでしょうか。
山口:いえ,その場合でも,相手方保険会社と交渉して治療を継続することや,相手方保険会社と交渉が決裂した場合には,ご自分の健康保険を使って通うことに問題はありません。その際の治療費を,後の賠償請求の中で請求することが可能な場合もありますので,ご心配な方は,弁護士に相談してみると良いと思います。
特に,治療の終了時期やこれ以上治療をしても改善が見込まれない,いわゆる症状固定の時期は,争いになることが多いので,前もって弁護士に相談することが良いと思います。
第3,通院交通費,休業損害,入通院慰謝料等
―それを聞いて安心しました。事故に遭ってしまった場合,治療費の他に何か請求ができるのでしょうか。例えば通院のための交通費は出るのでしょうか?
菊池:はい。通院交通費は損害賠償請求の対象になります。他には,怪我の治療によって仕事を休んでしまった場合の休業損害,入院期間や通院期間に応じた慰謝料,入院期間中の雑費等が請求の対象となります。
―結構色んなものが対象になるんですね。特に私も仕事をしているので,休業損害を受けられるというのは安心します。
菊池:ええそうですね。お仕事をされている方にとっては死活問題ですよね。ただ,もちろん無条件に請求できるわけではなく,請求の根拠となる資料が必要となります。
たとえば,休業損害を請求する場合には,仕事を休んだことやそれによってどの程度の経済的損失が発生しているかということについての資料ですね。
―それはそうですよね。それから,前回お話し頂いた物損事故の場合には,慰謝料の話は出ませんでしたが,人損の場合は慰謝料が請求できるですね。
菊池:そうですね。基本的に人損の場合には,慰謝料は請求できると考えて差し支えありません。また,慰謝料については色々考え方があります。詳しいことはあえて申しませんが,慰謝料については,一度弁護士に相談することを強くお勧めします。
第4、後遺障害
―慰謝料が気になったら弁護士さんに相談ですね(笑)。ただ,治療しても完治しない場合,後遺症が残ってしまう場合もありますよね。そういった場合は,事故の相手方に何か保証してもらえるのでしょうか,それとも泣き寝入りするしかないのでしょうか。
山口:保証という表現は正しくはないかもしれませんが,損害賠償請求の中で,後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料という形で,後遺障害によって失ってしまったとされる損害について金銭的に請求することが可能です。
―後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料ですか。それはどういったものでしょうか。先ほど出てきた慰謝料とはまた別の話なのでしょうか。
山口:はい別です。順番に説明しますと,後遺障害逸失利益とは,被害者の方が,本来後遺障害がなければ100%稼働できたはずが,後遺障害を負ったことにより100%稼働することができずに収入が減少することが予想される,すなわち将来得られるはずの利益を逸失してしまう可能性がある場合を言います。
そして,この場合の稼働できない割合というものは,基本的には後遺障害の等級によって決まります。職業の内容等も影響することがあります。
―後遺障害の等級ですか?
山口:はい。後遺障害は,負ってしまった後遺障害の程度によって1級から14級まで細かく分かれています。例えば,片手の人差し指や中指,薬指のウチの一つを失ってしまった場合には11級,片方の目が失明してしまった場合は8級といった具合です。
そして,その等級によって,稼働できない場合の割合,つまり労働能力の喪失率が変わってきます。11級の場合は0%,8級の場合は45%といった具合です。
また,どれだけの期間の間,労働能力の喪失が認められるかも様々な考えがあり,等級によって変わってくる場合もあります。
―いやあ,複雑ですね。慰謝料も先ほどとは違うんですよね。
菊池:お疲れ様です,山口先生。大変丁寧な説明をさせてしまい,申し訳ありません(笑)。
慰謝料については私からご説明いたします。
と言っても,後遺障害慰謝料は割と簡単でして,後遺障害の等級に応じた慰謝料を請求できるというものです。それしかありません(笑)
―いえ,よく理解できました(笑)。しかし,事故にあったときの賠償請求って複雑なんですね。
菊池:そうですね。もし,そのような状況に御自身が遭ってしまったら,まずは弁護士に相談することです。山口先生のように丁寧でわかりやすい説明をしてくれる弁護士はなかなかいないかもしれませんが(笑)。
場合によっては,事故に遭った後すぐに弁護士に関与してもらう方が,様々なことがスムーズに行くことが多いので,弁護士会の無料相談などを利用して,まずは早めに相談してみてください。札幌弁護士会でも,無料で交通事故の相談ができるセンターを準備していますよ。
山口:そうですね,菊地先生が仰ったように,早めに私たちが関与することで被害者の方が治療に専念できる環境が作れますので,被害にあって色々疑問に思っている方は早めのご相談をお勧めします。
―今日は,前回に引き続き交通事故についてでしたが,とても勉強になりました。ただ,専門的な知識が多く,保険会社との交渉など,一般の方には難しいこともあるので,皆様ももし,事故に遭われてしまったら,早めに弁護士さんに相談してみることが良いと思います。
また,札幌弁護士会の知恵袋の第3回と第4回でも人身事故について取り上げていますので,ぜひ,そちらのバックナンバーを札幌弁護士会のホームページでご確認ください。
さて,本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。札幌弁護士会の知恵袋は,札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また,音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士山口治香,弁護士菊地亮介(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士山口治香,弁護士菊地亮介(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年8月29日