周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
近隣トラブルについて
第2、目次
(1)近隣トラブルの具体例
(2)近隣トラブルの対処方法
放送日 | 2017年10月3日 |
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ゲスト | 佐藤敬冶 弁護士、髙橋健太 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
近隣トラブル,マンション,戸建て住宅,騒音,境界,水漏れ,受忍限度 |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今月は5週連続で、近隣トラブルについて取り上げていきます。
初回のゲストは、札幌弁護士会に所属の髙橋健太さんと佐藤敬治さんです。
髙橋・佐藤:どうぞ、よろしくお願いします。
―髙橋さんは以前にもご出演いただいたことがありますが,改めて簡単に自己紹介をお願いします。
髙橋:はい。札幌弁護士会に所属しております弁護士の髙橋健太と申します。前回は昨年の7月に弁護士の見つけ方などのテーマでお話させていただきました。今回もよろしくお願いいたします。
―続いて佐藤さんからも自己紹介をお願いします。
佐藤:はい。札幌弁護士会に所属しております弁護士の佐藤敬治と申します。私は弁護士7年目になるのですが,1年目から札幌弁護士会の広報委員会に所属しておりまして,現在は副委員長を務めています。普段はこの番組とは別の業務を担当しておりますので,番組に出演するのは初めてです。
―髙橋さんと佐藤さんは同期だと伺いました。同期だと仕事で接する機会も多いのでしょうか。
佐藤:同期だから多いというわけではありません。髙橋先生とも,たまたま相手方当事者の代理人に就いたことは何度かありますけれども,委員会以外で一緒に仕事をしたことはないですね。髙橋先生は弁護団もいろいろ参加されていると思うので,同期と一緒に仕事をする機会も多いのかもしれませんが。
髙橋:そうですね。弁護団では事務所の枠を超えて仕事をすることが多いので,他の事務所の同期と一緒に仕事をする機会もありますね。
―他の事務所の同期の方と一緒に仕事をするというのは,同じ事務所の弁護士と仕事をするときと違うものですか。
髙橋:はい。やはり腹を割って話せる関係の方が多いので,やりやすいですね。打ち合わせの後の飲み会が多くなってしまいがちという面もありますけれども。
第1 近隣トラブルの具体例
―飲み過ぎには注意ですね。では,そろそろ本題に入っていきたいと思います。今月は近隣トラブルというテーマですが,近隣トラブルには具体的にどのようなものがあるのですか。
佐藤:近隣トラブルというのは,要するにご近所の住民やお店などとの間でのトラブルのことで,多種多様なものがあります。
近くに大きな建物が建って日当たりが悪くなったとか,最近は近所に保育園ができて子どもたちの遊ぶ声がうるさいといった騒音トラブルの例も耳にします。次回以降に扱うお隣の土地との境界の問題や雨水・雪に関するトラブルなども近隣トラブルの一例です。
―そういったご近所さんとのトラブルに関する相談というのは,実際によく寄せられるものなのですか。
佐藤:はい。私の場合は,不動産関係の会社のご相談を受ける機会が多いこともあってか,お隣の土地との境界に関するトラブルでご相談を受けることが多いです。そのほかにマンションの騒音トラブルの相談もよく寄せられているように思います。髙橋先生はどうでしょうか。
髙橋:私も騒音トラブルの相談はよく耳にします。マンション以外でも,ペットの鳴き声や子どものピアノの練習の音など,いろいろな音を気にされる方がいらっしゃるようです。
―ご近所同士でもいろいろなことでトラブルになることがあるんですね。今,戸建てのお宅の話とマンションの話が出てきましたが,戸建て住宅とマンションとでトラブルの傾向に違いはあるのでしょうか。
佐藤:戸建て住宅の場合はお隣さんとの間のトラブルが中心かと思いますが,マンションの場合は隣の部屋だけでなく,上階の騒音や上階からの水漏れ,ベランダのたばこの煙や吸い殻のポイ捨てによるトラブルなど,上下階の間でのトラブルも見られるのが特徴的です。
―たしかに,マンションは上にも下にも人が住んでいますから,気を遣う範囲も広くなりますよね。それにマンションだとご近所さんとの人間関係も戸建ての家とは違ってきますかね。
髙橋:そうですね。マンションの場合,お隣さんでもなかなか顔を合わせることがないなど,ご近所付き合いらしいものがないケースも多いかと思います。上の階や下の階の方となると,なおさらお付き合いは持ちにくいでしょうね。
―あまり付き合いがないということがトラブルに影響することもあるのでしょうか。
髙橋:もともと顔を合わせる機会が少ない上,管理会社が入っていれば管理会社を通して苦情を伝えることもできてしまうので,苦情を伝えることに対する心理的な抵抗が弱くなりがちかと思います。そういう意味では,戸建てよりもトラブルが発生しやすいのかもしれません。
―なるほど。逆に戸建ての場合にはトラブルに発展しにくいということでしょうか。
佐藤:毎日のように顔を合わせることのあるお隣りさんなので,不満があっても遠慮して伝えないという方もいらっしゃると思います。
―やはり毎日顔を合わせるような人とトラブルを起こしたくはないですよね。騒音などはお互い様という面もありますしね。
佐藤:そうですね。ただ,いったん不満を抱いてしまうと,ちょっとしたことも次々と目につくようになって不満がどんどん鬱積していくということもあります。そのせいか,いったんトラブルに発展したときには,戸建ての方が収拾がつきにくい傾向があるように思います。
第2 近隣トラブルの対処方法
―:不満を溜め込みすぎるのも問題ですね。それでは,ご近所さんの行動に何か不満を抱いたとき,どのように対処するのがよいのでしょうか。
髙橋やはりご近所という関係性は将来まで続くわけですから,まずは冷静になって,自分が抱いている不満がご近所付き合いの中で我慢すべきレベルのものなのかどうかを考える必要があります。
―我慢すべきレベルのものとなると,法律的にも我慢しなさいということになるのですか。
髙橋:はい。法律の世界では「受忍限度」という言葉を使いますが,日常生活を送る中で我慢すべきレベルの問題であれば,損害賠償等の請求は認められないことがあります。
―冷静に考えた結果,どうしても我慢の限界を超えるとなったときにはどうすべきですか。
佐藤:いきなり怒鳴り込んだり,権利を振りかざして対策を要求するといった対応は避けるべき場合が多いかと思います。まずは日常の会話の中でそれとなく不満を伝えて,自主的に対応してもらえるように促すのがよろしいかと思います。
―大人の対応というやつですね。それでも相手がこちらの不満をなかなか理解してくれなかったり,何も対応してくれないということもありますよね。
佐藤:そういったときには,より直接的にこちらの言い分を伝えざるを得なくなってくるかと思います。ただ,その場合でも一方的な主張に終始するのではなく,相手の言い分も聞きながら,お互いに譲り合って話し合いで解決するのが第一でしょうね。
―円満な関係を維持するのが最優先ということですね。
とはいえ,当事者同士の話し合いではどうしても決着がつかないということもあるかと思います。そのようなときにトラブル解決のために利用できる手段としては,どのようなものがあるのでしょうか。
髙橋:訴訟も選択肢の一つではありますが,やはり話し合いでの解決を念頭において裁判所や民間の紛争解決機関での「調停手続」を選択することも多いかと思います。
―調停というのはどのような手続なのですか。
髙橋:基本的には第三者が間に入って話し合いを行うものです。第三者が間に入ることで冷静に話し合いを進めることが期待できます。双方の言い分を踏まえた調停案を示してもらうことで,一気に紛争が解決に向かうこともあります。
―第三者の目から見た客観的な評価を伝えてもらうことで冷静に物事を捉えられることもありそうですね。調停案に納得できないというときはどうなりますか。
髙橋:調停はあくまでも話し合いの手続ですので,調停案が気に入らなければ応じなくても構いません。どうしても折り合いがつかなければ,調停は不成立となりますので,次のステップとして訴訟等による解決を検討することになります。
―やはり最後は訴訟に行きつくのですね。近隣トラブルの訴訟の特徴のようなものはありますか。
佐藤:訴訟にまで至るようなケースだと,特に感情的な対立が激しいことが多いので,裁判の決着にも時間がかかってしまいがちです。時には何十年も前の恨みつらみを語られることもあります。
―何十年も前のことから始まるとなると,聞く側も大変そうですね。
佐藤:打ち合わせに2,3時間かかることもありましたが,背景事情として大事な話が含まれていることもあるので,私はできるだけ聞くようにしています。
和解協議のときに2時間以上かけて私の依頼者の話を聞いてくださった裁判官もいました。じっくり時間をかけて話を聞かなければならないときもあるというのも,この種のご相談の特徴の一つかなと思います。
髙橋:和解協議のときに裁判官に直接ご本人の話を聞いてもらうことはありますけども,一方当事者の話を2時間以上もかけて聞いてくれるというのは驚きですね。その間相手方はずっと待っていたんですか。
佐藤:相手方は代理人の弁護士だけが来ていたのですが,ずっと待っていただく形になったので,さすがに申し訳なかったですね。ご本人は2時間以上かけてもまだまだ話したりない様子でしたが。
―積年の恨みはおそろしいですね。
さて,本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
今回は、近隣トラブルの概要についてお話をいただきましたが、次回は、今回に引き続き佐藤敬治弁護士を迎えて、お隣の土地との境界をめぐるトラブルについてご紹介したいと思います。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士佐藤敬冶、弁護士髙橋健太(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年10月3日