周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
近隣トラブルについて
第2、目次
(1)雨水・雪に関するトラブルとは
(2)雨水に関するトラブル
(3)雪に関するトラブル
放送日 | 2017年10月17日 |
---|---|
ゲスト | 佐藤敬冶 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
雨水、雪、落雪、雨樋、雪止め |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今回は「隣地の雨水・雪のトラブルについて」というテーマで放送します。ゲストは、前回に続き札幌弁護士会所属の佐藤敬治さんです。
佐藤:よろしくお願いします。
第1 雨水・雪に関するトラブルとは
―さて、今回は隣地の雨水や雪に関するトラブルということですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。
佐藤:まず雨水に関しては、たとえば高低差のある住宅地で高い場所にある土地から低い場所の土地に雨水が流れ込んでくるとか、屋根や車庫の雨垂れが隣の土地に流れ込んでくるといったケースがあります。
―隣の土地からの雨水が流れ込んでくると、どのような不都合が生じるのですか。
佐藤:流れてくる雨水の量にもよりますが、地盤が多量の水を含んで緩んでしまったり、床下の湿度が上がって建物の基礎が傷んでしまう場合もあります。また、雨水が流れてくる場所に水溜りができてしまったり、苔が生えてしまったりと、見た目にも影響が出てくることがあります。
―なるほど。雨水程度と馬鹿にはできないものなんですね。雪に関しては、どのようなトラブルがあるのでしょうか。
佐藤:よくあるのは、屋根からの落雪が隣の土地に落ちて建物や車を傷つけてしまったとか、歩行者に落雪が当たって怪我をさせてしまったというケースです。そのほかに、自宅の前に雪かきした雪を積んでいたら道路の見通しが悪くなって交通事故につながってしまったということでトラブルになるケースもあるようです。
第2 雨水に関するトラブル
―人に怪我をさせてしまうというのは大変なことですね。さて、具体例を教えていただいたところで、まずは雨水のトラブルについて詳しく教えていただきたいと思います。
居住者としては、まず隣の土地から雨水が流れ込んでこないようにお隣さんに対処してほしいと思うのが普通かと思いますが、法律上はどうなっているのでしょうか。
佐藤:雨水が流れ込んでくる原因によって違ってきます。民法では、土地の所有者は隣の土地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならないとされています。隣の土地との間に高低差がある場合、高い土地から低い土地に水が流れていくのは基本的には自然な水の流れですので、隣の土地から水が流れてくるのを堰き止めることはできません。
―それは困りましたね。水が流れ込んでくるままになってしまうのでしょうか。
佐藤:隣の土地からの水を堰き止めずに処理するとなると、敷地内に排水溝に至る水路を設置するなどして、水の通り道を作ってあげることになります。ただし、そのための工事費用は基本的に自己負担になってしまうでしょう。
―なんだか踏んだり蹴ったりという感じですね。トラブルを回避するための注意点はありますか。
佐藤:隣の土地との間に高低差がつくことは現地を見ればわかりますので、土地を買う前に現地を視察して、水の流れや境界付近の地盤の状態をよく確認しておく必要があります。その上で、排水についてお隣さんや施工業者と相談しておくとよいでしょう。
―ここまでは自然に流れ込んでくる雨水についての話でしたが、違った原因の場合には法律上の取り扱いも異なってくるのですか。
佐藤:はい。民法では直接雨水が隣地に流れこむような構造の屋根等を設けてはならないとされています。屋根や車庫等の雨垂れが直接隣の土地に流れてくるような場合には、雨水が流れ込まないように雨樋の設置などの対処をするように求めることができます。
―境界ギリギリに屋根や車庫を設置しているような場合でしょうか。
佐藤:そのような状況であることが多いと思います。また、屋根からの雨垂れが直接隣地に落ちてくるようなケースでは、そもそも屋根が空中で越境しているような場合もありますので、越境の有無も確認すべき場合が多いでしょう。
―屋根が越境していた場合には、どうすることになるのですか。
佐藤:越境している部分の屋根を撤去するように求めることが考えられます。
ただし、屋根の撤去に高額の費用がかかる場合や、屋根の一部を撤去することでその家に雨漏り等の不具合が生じる恐れがあるような場合には、屋根の撤去の請求は認められないこともあります。そのような場合には、「雨樋」の設置等の対処にとどめざるを得ないことになります。
第3 雪に関するトラブル
―越境している側の事情も汲んだ判断になることもあるのですね。さて、それでは次に雪に関するトラブルについてお聞きしたいと思います。雪については、まず屋根からの落雪によるトラブルが多いということでしたね。これはやはり落雪を生じさせた人の責任ということになるのでしょうか。
佐藤:はい。建物を所有している人は、その建物の管理等が不十分であったことによって他の方に損害を与えてしまった場合には、その損害を賠償する責任を負います。
屋根に雪止めを設置したり、定期的に雪下ろしを行うなどの対策をしていなかった場合には、落雪によって生じた損害を賠償しなければならないことになる可能性が高いです。
―屋根の雪下ろしは札幌では避けられない問題ですね。でも、お隣の土地や道路に雪が落ちてしまうのが問題なのはわかりますが、自分の敷地の中に落ちてくる雪についても、きっちり対策しないといけないものでしょうか。
佐藤:雪が落ちてくる場所によると思います。たとえば、玄関フード付近など、人が通ることが想定されるスペースであれば、やはり雪下ろしは必要になってくるでしょう。これに対して、裏側の庭などの空きスペースで、普通は人が入ってこない場所であれば、それほど高度な対策は求められないかもしれません。
―なるほど。ところで、雪が溜まっている場所だとか、大きなツララができているような場所は、普通の歩行者は立ち入らないけれども、子どもの遊び場になってしまうこともありますよね。子どもたちが遊んでいたら雪やツララが落ちてきて怪我をしてしまったというケースはどうでしょうか。
佐藤:微妙なところですね。基本的には遊んでいた側の落ち度が大きいと思いますが、普段から子どもたちが遊んでいることを認識しながら黙認していた場合には、責任を問われる可能性も否定できません。
―思わぬ事故とは言えなくなってくるということでしょうか。もしものときの責任を問われないようにするためには、どういった対策が必要でしょうか。
佐藤:トラブルを未然に防ぐためにも、子どもが立ち入っている様子があれば、親御さんから立ち入らないように指導してもらうようにお願いしたり、まめにツララを落としたり、危険な場所に入らないようにロープを設置したりといった対策をしておいたほうがよいでしょう。
―責任を問われないとしても、事故が起きるのは避けたいですよね。雪遊びをしている子どもたちの楽しそうな姿は微笑ましいですけれど、大人として安全対策をとらなければならない場面も出てきますね。さて、そのほかに雪に関するトラブルの例はあるでしょうか。
佐藤:雪捨て場に関するトラブルがあります。
―雪が増える時期になると、雪捨て場がなくてお困りの方もいらっしゃいますよね。どのようなトラブルに注意する必要がありますか。
佐藤:たとえば、ご自宅の敷地の端の方に雪を寄せている場合、お隣さんとの境界付近に雪が溜まることになります。雪が増えてくると、境界線がどこなのかわかりにくくなってきますので、気づかないうちに境界を超えて雪を捨ててしまったり、雪の重みで境界付近のフェンスがゆがんだり、庭木を傷めてしまったりといったトラブルを招くおそれがあります。
―お隣さんの土地の状況を見ながら、どこまで雪を捨てられるのか考える必要がありそうですね。雪捨て場というと、近くに空き地があれば空き地に捨てたり、適当な雪捨て場がなくて自宅前の歩道に積み上げているという方もいらっしゃるかと思いますが、そういった方法に問題はありますか。
佐藤:長年空き地になっている土地だと、慣例的に近所の方が雪捨て場として利用しているということもあるかと思います。空き地の所有者の方も基本的には黙認状態であることが多いとは思いますが、所有者が変わったとか、新しく建物を建てることになったなどの事情で雪捨てを断られることもありますので、いつまでもそこに捨てられるとは限らないと思っていたほうがよいでしょう。
―やはり自分の土地ではないので、自由にはならないのですね。歩道への雪捨てについてはどうでしょうか。
佐藤:歩道に捨てざるを得ない場合もあるとは思いますが、自動車や人の通行の妨げにならないように配慮する必要があります。通行の妨げになるような捨て方をしてしまうと、場合によっては道路交通法違反になることもありえますので、注意が必要です。
また、駐車場の出入り口に高々と雪を積み上げてしまうと、道路の見通しが悪くなって危険ですので、積み上げる場所への配慮も必要になるかと思います。
―道路が危険な状態になると、自分自身の身も危なくなりますから、気をつけたいですね。
さて、本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
今回は、境界トラブルについてお話をいただきました。次回は、髙橋健太弁護士を迎えて、近隣での騒音トラブルについてご紹介したいと思います。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士佐藤敬冶(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年10月17日