周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
個人情報の保護について
第2、目次
(1)個人情報の取得・利用の際に守るべきこと
(2)個人情報の保管・提供の際に守るべきこと
放送日 | 2017年11月21日 |
---|---|
ゲスト | 川島英雄 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
個人情報、保護、目的、取得、利用、要配慮個人情報、保管、提供 |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談に寄せられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今月は「個人情報の保護について」というテーマで放送します。ゲストは、札幌弁護士会所属の川島英雄さんです。
川島:よろしくお願いします。
―川島さんは今月のテーマについては今回が初めてですが、以前にもご出演頂いたことがありましたよね。
川島:はい、半年くらい前に、「医療トラブル」(第73回知恵袋)のテーマでお話させて頂きました。
―今回お久しぶりの登場ということで、改めて簡単に自己紹介頂けますか。
川島:はい。実は、前回はほとんど自己紹介していなかったんですよね。
―そうでしたか?それはもったいないので、ぜひ自己アピールしてください。
川島:ありがとうございます。でも、私を売り込みにきたわけではないので、控えめにさせていただきます。
札幌弁護士会に所属している弁護士の川島です。弁護士になって15年くらい経ちます。前回お話しした医療過誤事件はそれなりに経験がありましたが、今回お話しする個人情報の保護は、それほど多く扱っているわけではありません。すいません。
―ありがとうございます。それほど多く扱っていないと正直にお話しされましたが、そんなこと言ってしまって大丈夫ですか?
川島:大丈夫です。東京ならともかく、札幌ではたぶん、個人情報の保護を多く扱っているという弁護士はいないと思いますので。何十回と扱っていなくても、大事なことはきちんと知っていますから、安心してください。
―わかりました。では、安心して質問させていただきます。
さて、今月は「個人情報の保護」をテーマにお話を頂いていますが、前回の放送にご出演頂いた大野弁護士も、普段の業務の中で個人情報の保護に関する相談を受ける機会はそれほど多くないと仰っていました。弁護士さんは、個人情報保護に関する相談を受ける機会はあまり多くないのでしょうか。
川島:他の弁護士のことはわかりませんが、私の感覚としては、離婚事件とか、相続問題とか、そういう相談と比べれば確実に少ないと思います。
―そうなんですね。相談を受けるとすれば、どんな相談があるんですか。
川島:個人情報が流出したのでどうしたらよいか、という相談はあまりない気がします。あるとすれば、企業からの相談で、取引先との契約書の中に個人情報の保護の規定を盛り込むことを相談されるとか、そんなことでしょうか。
第1、個人情報の取得・利用の際に守るべきこと
―なるほど。
では、今日の本題へと入りたいのですが、今回はどのような内容をお話頂けますか。
川島:はい。前回までは、「個人情報」とは何かということや、個人情報を保護する義務がある事業者とは誰のことなのかということが説明されたと思います。今回は、個人情報保護法が実際に適用される場面で、事業者はどのようなことをしなければならないのかということについてお話ししたいと思います。
―そうですね、前回までの放送では、個人情報保護法の適用を受けるかどうかというお話でしたよね。今回は、事業者が、法律上守らなければならないことについて説明していただけるということですね。
川島:はい、そうです。といっても、時間の制限がありますし、ちょっと複雑なところがあるので、大きな枠組みに絞ってお話させて頂きます。
突然ですが、田島さんは、個人情報保護法には、事業者がどのようなことをしなければならないと書いてあると思いますか。
―え、いきなりですね。えー、そうですね、お店で自分の名前や住所を書くときって、何かを申し込んだり、アンケートを書いたりするような時だと思うんですけど、そういう用紙にはよく、目的外利用はしませんというようなことが書かれていたと思うので、そんなこととかですかね。
川島:素晴らしい回答ありがとうございます。正解です。
―正解ですか。よかったです。
川島:少し細かく言いますと、個人情報保護法では、事業者が個人情報を取得したり利用したりする場合には、主に4つのことを守るよう定められています。一つは、利用目的をできる限り特定すること。二つ目は、特定した利用目的に必要な範囲で個人情報を取り扱うこと。三つ目は、個人情報を不正の手段で取得しないこと。これは当たり前ですけどね。そして、最後四つ目は、個人情報を取得する際には、利用目的を知らせることです。
―先ほど私が答えたアンケートの話は、今の4つのことが全て関係しているということですね。
川島:そうなりますね。
―ただ、利用目的といっても、色々あると思うんですが、読んでわかりにくい書き方をされれているような場合も、それで問題はないのでしょうか。
川島:いえ、それはケースバイケースの判断となりますね。法律上は、できる限り特定するようにとしか書いていないのですが、事業者の事業の内容や、対象となる個人情報の性質など、さまざまな要素を踏まえて、個人情報を利用される人が、どの範囲で利用されるのか想定できる内容になっているかどうかがポイントになると思います
事業者側ではわかっていても、利用される側がよく分からないということであれば、特定されていないと判断される可能性が高いと考えてよいかもしれません。
―利用目的を特定するのは、個人情報を利用される人に利用範囲を知らせるためだからですね。
川島:そういうことです。
―ところで、事業者としては、一度取得した個人情報を違う利用目的に利用したいと思ったら、どうすればいいのですか。もう一度最初から利用目的を説明して個人情報を取得しなければならないのですか。
川島:それは、利用目的の変更の話になります。もともと、利用目的を特定して取得しているので、基本的には違う目的に利用することはできません。ただ、変更前の利用目的と関連性がある範囲内であれば、特に同意を得ずに利用目的を変更してよいことになっています。
この範囲を超えて利用しようとする場合には、本人から事前の同意を得る必要があります。一番最初と同じように利用目的を説明して、それから個人情報を書いてもらってということはしなくてもいいですが、違う目的に利用する前に同意をもらわなければなりません。
―そうなんですね。
川島:ところで、いま関連性があればという話をしましたが、関連性があるかどうかという判断は難しいところなので、個人情報を取得する際には、最初に取得する段階で、利用目的について十分検討しておくことが大事だと思います。
あと、関連性がある場合でも、利用目的を変更したら、再度利用目的を知らせなければならないことになっていますから、それも事業者には多少負担になるかもしれません。
―そうなんですね。
ところで、今も利用目的を知らせなければならないという話がありましたが、、これはどのような方法で行う必要があるのでしょうか。
川島:法律上は通知又は公表と書かれているだけで、それ以上は特に方法に制限はありません。通知であれば、文書を直接渡したり、メールやFAXを送ったりすることが考えられます。公表に関しては、ホームページに掲載したり、目につく場所に張り紙をしたりすることなどが考えられます。通知と公表はどちらでもよいので、事業者は状況に応じて方法を選ぶことができます。
―なるほど。ところで、今までのお話を伺ってきて少し疑問に思ったのですが、個人情報を取得するときには、本人の同意はいらないんですか?。
川島:鋭い指摘ですね。確かに、今まで話してきた、単なる個人情報については、情報の取得にあたっては同意は必要とされていません。しかし、今回の法改正によって、本人の同意が必要な「要配慮個人情報」というものが新たに加えられました。
―配慮が必要な個人情報ということでしょうか。
川島:そのとおりです。人種や病歴、前科などがそうなのですが、取り扱いに特に配慮を要するものということで、取得には原則として本人の同意を得る必要があります。
第2、個人情報の保管・提供の際に守るべきこと
―やはり、同意を得る必要のある情報もきちんと規定されているのですね。
ところで、今まで伺ってきたくらいのお話ですと、事業者が守らなければいけない内容といっても、それ程大きな負担ではないようにも思うのですが。守らなければならないのはこれだけなのでしょうか。
川島:いえ、先ほど述べた4つのことは、個人情報を取得したり利用したりする場合に必ず守らなければならない最低限のルールです。まだまだいろいろ守らなければならないルールがあります。
―たとえばどんなことがありますか?
川島:例えば、個人情報データベースを保有するようになると、守らなければならない内容は増えます。
―「個人情報データベース」については、前回の放送で大野弁護士に解説してもらったので覚えています。顧客リストみたいなものでしたよね。
川島:はい、そんなイメージでよいと思います。データベースを保有するようになると、検索が簡単になります。事業者が利用するには便利なのですが、情報を利用される側からすると、漏えいの危険が増えることを意味します。その意味で、事業者が守らなければならないことが増やされるということです。
―なるほど。便利な一方で危険も増えるから規制を強くするということですね。
具体的にはどのような義務が増えるのでしょうか。
川島:細かく言えばいろいろありますが、大まかに簡単に言うと、安全に管理するために必要かつ適切な措置をとることと、情報を第三者に提供する場合は事前に本人の同意を得ることです。
―情報の漏えいなどは時々ニュースで大きく取り上げられますから、個人情報のデータベースを安全に管理するというのはとても大事ですよね。
川島:そうですね。この安全管理措置については、次回の放送で少し触れられればと思います。
―他にも、事業者が守らなければならないことが増える場面というのはあるのでしょうか。
川島:はい、あとは、利用目的などの情報を知らせなければならないことや、本人からの開示や訂正、削除などの請求に応じなければならないことなどでしょうか。
―開示請求に応じなければならないということは、逆に言うと、情報を利用されている本人の側からは、開示などを求めることができるということですね。
川島:そうです。このように、個人情報保護法は、情報の利用による危険を取り除くことと、事業者の負担とのバランスに配慮しているということができます。
―事業者とすれば、自社で取り扱っている情報をきちんと把握した上で、適切な対応が求められるということですね。
さて、本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
今回は、個人情報保護法が定める事業者の義務の内容についてお話頂きましたが、次回は今回に引き続き川島英雄弁護士を迎えて、個人情報の保護に関してお話頂きたいと思います。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士川島英雄、弁護士大野昇平(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士川島英雄(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年11月21日