周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
司法過疎問題と若者の消費者被害について
第2、目次
(1)司法過疎問題とは
(2)頻回相談とは事業者が個人情報の保護のために意識すべきこと
(3)相談内容について
(4)すずらん基金法律事務所及びひまわり基金法律事務所について
(5)今後の司法過疎問題について
放送日 | 2017年12月5日 |
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ゲスト | 菊地顕太 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
司法過疎地、地域司法対策委員会、頻回相談、すずらん基金法律事務所、ひまわり基金法律事務所 |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今日は、「司法過疎問題」というテーマについて取り上げていきたいと思います。
今日のゲストは、札幌弁護士会所属の菊地顕太(きくちけんた)さんです。
菊地:弁護士の菊地と申します。よろしくお願いします。
―よろしくお願いします。先生は、お若いですよね。
菊地:そうみえますか。弁護士登録して1年目です。
私の経歴を簡単に説明しますと、北海道の倶知安という小さな町で生まれ育ちました。その後、北海道大学を出て、札幌のすずらん基金法律事務所に入所し、現在も、そこで弁護士として活動しています。
第1、司法過疎問題とは
―そうだったんですね。
では、早速、今回のテーマについてなのですが、司法過疎問題とは、一体どういったことなのでしょうか。
菊地:はい。
司法過疎問題という言葉を聞いたことがない方が多いと思います。
司法過疎問題とは、弁護士等の法律家がいない又はいてもその地域の人々の法的問題に対処するには不十分である場合に、その地域が法律家に接触することが困難な問題をいいます。
例えば、地方ですと高齢者の方が多いと思いますが、将来自分が亡くなった時のために遺言を残しておきたいと思っても、近くに相談できる弁護士がいないため、遺言が作成できずに亡くなってしまい、後に相続人同士で遺産分割の際にもめるということが考えられます。
また、突然、損害賠償請求の裁判をおこされた場合、一般の方にとっては裁判を起こされることはほぼ経験しないことですから、弁護士に相談できずに放っておいて、そのまま裁判では相手方の請求が認められてしまうということも考えられます。
そういった、地方に住む方々が法律家にアクセスできないことによる不利益を回避するために取り組む問題が司法過疎問題ということになります。
第2、頻回相談とは
―なるほど、なかなか大変な問題のように思いますね。その司法過疎問題の解消にためには、具体的にはどのような活動が行われているのでしょうか。
菊地:はい、まず、札幌弁護士会では、頻回相談という活動を行っています。
―頻回相談とは、一体どのようなものなのですか。
菊地:はい。
まず、北海道はあまりに広いため、弁護士が全然いない又は少ない地域がまだ存在します。これを司法過疎地といいます。
そして、頻回相談とは、札幌弁護士会の中に地域司法対策委員会という委員会があるのですが、その委員である弁護士が交代で司法過疎地に行き、現地の人から法律相談をうけるというものです。
地域によって差はありますが、1カ月に1、2回程度それぞれの自治体で担当の弁護士が法律相談を受けています。
―なるほど。札幌弁護士会には無料の法律相談が受けられる法律相談センターというものがあると思うのですが、それとは別なのですか。
菊地:そうですね。
法律相談が無料という点では一緒ですが、札幌弁護士会の法律相談センターは相談できる場所が、札幌地方裁判所の管轄地域内で9箇所と限られています。
北海道は広いため、そこまで法律相談に来れないという人も多くいると思います。
特に、高齢者の方や障害をお持ちの方、仕事が忙しい方等、なかなか遠出できないものの法律について相談したいという人は数多くいると思われます。
そのため、そういった方々から法律問題について相談を受け、解決できるように活動するために頻回相談が実施されています。北海道の面積の広大さという特殊性から出来た制度とも言えますね。
―菊地先生も活動しているのですか。
菊地:はい。
私も地域司法対策委員会の委員であるため、頻回相談に行っています。頻回相談は、委員会の中で地域によって班が分かれています。
具体的に言いますと、夕張班、浦河班、うなづき班、苫小牧班、南空知班、三笠班、滝川班、室蘭班、北後志班があります。
私は夕張班と南空知班に所属しているため、今年は夕張と長沼町に法律相談に行って来ました。
第3、相談内容について
―菊地先生は頻回相談に行かれて、実際にどのような相談を受けられたのですか。
菊地:そうですね。
私が担当した時には、相続問題や借金問題の相談に来られる方がいました。
また、農家の方が野菜を売ったにも関わらず相手がお金を支払ってくれないがどうしたらよいのかと相談に来られた方もいます。農家の方からでしたので、なかなか札幌では受けない相談だと感じました。
―頻回相談では、そのままアドバイスだけで終わるのですか。
菊地:いえ、それは場合によって異なります。
相談はあくまで初めの窓口に過ぎません。
相談して、弁護士が助言指導して終わると判断した場合には、助言指導をして、もしまた困ったら頻回相談等で相談して下さいとお伝えします。ただ、相談内容から、これは弁護士が依頼を受けて行動しなければならないと判断した場合には、自分の名刺をお渡しして、後日法律相談を継続します。
―札幌から遠い地域の方とかは相談に行くまでも大変そうですね。
菊地:はい。私は現在、札幌の法律事務所に所属しているため、その後、継続的な打合せをするためには、依頼者に継続的な距離的負担を強いることになります。
そのため、近くの法律事務所がある地域を紹介して、そこの弁護士に依頼するようにお伝えすることもあります。
第4、すずらん基金法律事務所及びひまわり基金法律事務所について
―なるほど。
菊地先生はすずらん基金法律事務所という事務所にお勤めになっていると伺ったのですが、その法律事務所も司法過疎問題と関係があるのですか。
菊地:はい、私が所属しているすずらん基金法律事務所は、司法過疎問題に取り組む弁護士を養成する事務所でして、その法律事務所で2、3年養成を受けた後に北海道内のひまわり基金法律事務所に赴任して弁護士として活動することになります。
―すずらん基金法律事務所とひまわり基金法律事務所は何が違うのでしょうか。
菊地:すずらん基金法律事務所もひまわり基金法律事務所もどちらも司法過疎問題に取り組む法律事務所であるという点では同じです。
しかし、すずらん基金法律事務所は北海道弁護士会連合会が設置している事務所で、ひまわり基金法律事務所は日本弁護士連合会が設置している事務所であるという点でまず、設置母体が異なります。
―そうだったんですね。そのような事務所は結構あるのでしょうか。
菊地:ひまわり基金法律事務所を日本弁護士連合会が設置していることから、ひまわり基金法律事務所は全国49カ所に存在します。
そして、その内約4分の1の12のひまわり基金法律事務所が北海道に存在するのです。私の生まれ育った倶知安町にも、ひまわり基金法律事務所が存在します。全国には、47都道府県あるわけですから、全国の約4分の1のひまわり基金法律事務所が北海道にあるということは、北海道の司法過疎問題が他の都道府県に比べても大きな問題になっていることが伺えると思います。
そして、北海道内の司法過疎問題は、北海道の弁護士で取り組んでいこうということから作られたのがすずらん基金法律事務所なのです。
―そうなると、菊地先生も今後北海道内のどこかのひまわり基金法律事務所に赴任するのですか。
菊地:そうですね。
私はすずらん基金法律事務所に入所してまだ1年なので、もう1年ほど事務所で経験を積むことになりますが、その後には北海道内のひまわり基金法律事務所に赴任することになると思います。
第5、頻回相談とは
―それでは、今後の司法過疎問題はどうなるのでしょうか。
菊地:今後、北海道内の人口は札幌に一極集中していくことが予想されます。
弁護士も北海道内に平成29年現在では980名いるのですが、その内773名の弁護士が札幌弁護士会に所属しております。
つまり、北海道の弁護士の約78パーセントが札幌地方裁判所の管轄地域内に集中しているのです。
―そうなんですね。
菊地:はい。この傾向は今後も続くものと思われます。
そのため、今後も司法過疎問題に弁護士が取り組まなければ、北海道の地方の人々は札幌や近くの比較的大きな都市に出てこなければ弁護士に相談できない状況が続くものと思われます。
ただ、今の若手弁護士の中にはなかなか司法過疎問題に興味を持っていない方が多いように思われます。
元々弁護士は大都市志向が強いと思われますが、全国的には東京等の大都市にかなりの弁護士が集中している状況が拡大しています。
そのため、今後ずっとというわけではないのですが、今後司法過疎問題に若いうちの数年間取り組んで北海道の地方の人々のために活動し、自分自身の経験も積みたいという弁護士の方が今後少しでも出てきてくれたらと考えております。そして、それが地方で困っている人々の生活の支えに少しでもなればと思っています。
―なるほど、今後も司法過疎問題がまだまだ続く以上、それに対応する弁護士が今後も必要になっていくということですね。
残念ながら本日はそろそろ時間が来てしまったようです。
今日は司法過疎問題についてお話を聞くことができました。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大
弁護士田村暢健(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士菊地顕太(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士菊地顕太(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年12月5日