周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
司法過疎問題と若者の消費者被害について
第2、目次
(1)若者の消費者被害の概略
(2)架空請求による被害について
(3)マルチ商法の被害について
(4)消費者被害への対処法
放送日 | 2017年12月19日 |
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ゲスト | 出村洋介 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
若者、消費者被害、仮想通貨、投資、サイドビジネス、マルチ商法、詐欺、カードローン、借入れ、SNS |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今日のゲストは、札幌弁護士会所属の出村洋介(でむらようすけ)さんです。
出村:出村です。よろしくお願いします。
―よろしくお願いします。
出村さんは、今年、弁護士のお仕事とは別のことで、新聞に載ったことがあるそうですね。
出村:はい。私事で恐縮なのですが、実は今年北海道新聞に載ったことがありました。
趣味でAI将棋ソフトの開発をしておりまして、世界コンピュータ将棋選手権で準優勝したことなどを取り上げていただきました。
―え。世界選手権で準優勝ですか。
将棋といえば、今年は、藤井聡太棋士の話題もありましたが、AI将棋ソフトを開発している弁護士の先生に私、初めてお会いしました。
出村:そういう意味では、少し変わった趣味を持っている弁護士かもしれないのですが、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
第1、若者の消費者被害の概略
―先生の趣味のお話も大変興味があるのですが、時間も限られておりますので、早速本日のテーマに入っていきたいと思います。
今回は、若者の消費者被害がテーマですね。消費者被害というと高齢者の被害が多いような印象もありますが、いかがでしょうか。
出村:確かに、最近は少子高齢化社会ですので、消費者被害というと、高齢者の被害について話題になることが多いと思います。
実際、2015年度に消費生活センター等に寄せられた相談では、65歳以上の高齢者の相談が約27%であるのに対して、20歳代の相談は約9%程度です。
なので、全体の割合からすると、若者よりも、高齢者の消費者被害のほうが多いというのはその通りだと思います。
―なるほど、やはり高齢者の被害が多いのですね。
では、なぜ、今回、若者の消費者被害をテーマとしたのでしょうか。
出村:時代の変化によって、若者の消費者被害に対しても、しっかりと注意を向けていく必要性が高まっていると感じたからです。
―時代の変化ですか。どのような変化が影響しているのでしょうか。
出村:はい。
まず、一つ目の変化としては、スマートフォンやSNSの普及などにともなって、若者の消費者被害の様子が変わってきているということが挙げられます。新技術の普及によって、新しい手口が出てきている、ということですね。
また、もう一つの変化としては、将来的に成人の年齢が18歳に引き下げられる可能性があるということが挙げられます。成人の年齢が18歳になると、18歳から「大人」として一人で契約などができてしまいますので、若者が悪徳業者などから狙われる可能性が今後出てくるのではと思います。
こうした時代の変化があるので、最近は、改めて若者の消費者被害にも注目すべきだと思っています。
第2、架空請求による被害について
―では、最近の若者の消費者被害としては、どのような手口が多いのでしょうか?
出村:依然として数が多いのは、架空請求による被害です。
よくあるのは、「アダルト情報サイトを見ようとしたら、突然『登録完了』といった画面が表示されて、高額な料金が請求された」というようなトラブルです。
―確かに、そのようなトラブルが多いという話は、テレビなどでも目にしますよね。
そのような架空請求の被害は、現在ではどのくらいあるのですか?
出村:消費生活センターなどへの相談件数は、依然として多いです。
2016年の統計では、20歳代の人から消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、全国で3500件近くありました。
―以前と比べると、そのような架空請求の被害は、増えているのですか。
出村:一時に比べると、若者の架空請求の被害は、減少傾向にあるようです。
この一因としては、スマートフォン等の普及に伴って、アダルトサイトの架空請求トラブルへの対処方法が、若者に浸透してきているということがあると言われています。
つまり、アダルトサイトなどに「連絡しない」「お金を払わない」という基本的な対処方法が、広まってきているのだと思います。
ただし、減ってきているとは言え、やはり相談件数としては依然として何千件もあります。
ですので、架空請求には今後も注意していく必要はあると思います。
第3、マルチ商法の被害について
―なるほど、架空請求は、減少傾向とはいえ、まだまだ注意が必要だということですね。よく分かりました。
それでは、逆に、最近増えてきている若者の消費者被害はあるのですか。
出村:最近増えているのは、「マルチ商法」というタイプの被害です。
―その「マルチ商法」というのは、どういうものですか。
出村:友人などから「いい仕事がある」「もうかる」などと誘われて販売組織に入会させられた人が、さらに別の入会者を誘っていき、会員数を増やしていくという手口です。最近では「ネットワークビジネス」と呼ばれることもあります。
―マルチ商法と言われるより、ネットワークビジネスと言われた方が、語感が格好良いので若い人が引っかかってしまうかもしれませんね。
出村:そうなんですよ。
若い人は、人生の経験がまだ乏しいので、簡単に儲かる、格好いいという点などに欺されやすいんですね。
―具体的には、どのくらい増えているのですか。
出村:消費生活センターなどに寄せられた相談件数は、2011年では2500件程度でしたが、2016年には4300件程度まで増えました。
相談件数は、5年間で約1.7倍になっています。
―1.7倍ですか! 結構増えていますね。
最近になって被害が増えてきたのは、なぜなのでしょうか。
出村:ひとつ言われているのは、ここ数年で「SNS」が急激に普及したことです。
SNSで知り合った友人からのメッセージで、「これは稼げるので、良いサイドビジネスになる」といった話で勧誘されるケースが増えているようです。
友人から誘われるので、つい信じてしまったり、なかなか断りづらかったり、ということがやはりあるのではと思います。
―どういう手口による被害が多いのでしょうか?
出村:「外国の仮想通貨に投資しないか」とか、「最新技術で作った新商品に投資しないか」といった投資話などを良く聞きます。
最近の社会の動きを反映して、いかにも儲かりそうな話を作り上げているものが多い印象です。
―そう聞くと、確かにそうですね。
出村:また、手口として私が要注意だと思うのは、最初に少しだけ配当を出すという方法です。
つまり、とにかく少額でもいいから1度若者に契約させて、その若者に業者が実際に少しだけ配当を渡すのです。そうすると、その若者は、配当が実際にもらえたことに安心してしまって、業者にさらに大きな金額を渡してしまいます。
そして、ある程度大きな金額をだまし取ったところで、業者は「急に経営状況が悪くなった」などと言って、若者に配当を出すのを突然ストップするのです。
やはり、一度配当金がもらえると、信じてしまいやすいのだと思います。そういう心理につけ込んだ、巧妙な手口だと思います。
―確かに、それは騙されてしまうかもしれませんね。
では、実際にそういう業者に引っかかってしまった場合、どのような被害が出ているのですか。
出村:気付いたときには、投資した金額が何百万円にもなってしまい、それが全額返ってこなくなったという人もいます。
そうすると、何百万円もの被害が出てしまいます。
―何百万円もですか!?
でも、ほとんどの若者は、そのような何百万円もの大金を持っていないのではないですか。
出村:確かに、若者自身が何百万円ものお金を持っているという人は必ずしも多くありません。
そこで、最近の悪徳業者の中には、消費者金融や銀行などから若者にお金を借りさせて、借りたお金で投資するように勧めてくる業者もいるようです。
若者であっても、定職に就いていて安定した収入がある人であれば、消費者金融や銀行は、百万円単位でお金を貸してくれることが良くあります。
それに、最近は、インターネット上から申込みをするだけでお金を借りられる時代なので、お金を気軽に借りられるようになっています。
そこで、悪徳業者は、そうした便利さを逆手にとって、若者自身に百万円単位でお金を借りさせて、投資するように勧めてくるのです。
―なるほど。それで、若者でも何百万円もの被害が出ることがあるのですね。
では、借りたお金を投資して、それが戻ってこないときには、どうなってしまうのですか?
出村:投資したお金が戻ってこない場合、何百万円もの借金だけが残るということになります。
そうすると、当然すぐに何百万円もの借金を返せるわけではないので、被害にあった若者は、借金の返済に苦しむことになってしまいます。
―それは大変ですね。
第4、消費者被害への対処法
―では、そうした被害に遭わないためには、どうすればよいのでしょうか?
出村:まず、一つ大事なのは、SNSの友人からの誘いであっても、投資話やお金儲けの話には要注意ということです。特に、業者からお金を支払うように要求されたり、借り入れを勧められたりしたら要注意です。
また、もう一つ大事なことは、少しでも怪しいなと思ったら、誰かに相談するということです。やはり、まずは家族に相談するのがいいのではないでしょうか。
―とはいえ、被害に遭ってしまった後では、なかなか家族には相談しにくいという人もいるような気がします。
家族に相談しづらいときは、どこに相談すれば良いのでしょうか?
出村:まずは、消費生活センターに相談してみるのも良いと思います。
また、札幌弁護士会でも、15分間無料の電話相談窓口がありますので、こちらもご活用いただければと思います。
早め早めにご相談いただければ、被害が大きくなる前に対処することも十分可能です。
―なるほど、~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
残念ながら本日はそろそろ時間が来てしまったようです。今日は若者の消費者被害の概略についてお話を聞くことができました。来週のテーマは、若者の消費者被害に対する対応策についてです。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大,弁護士田村暢健(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士出村洋介(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士出村洋介(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年12月19日