周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
---|---|
放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が今年7月からお送りしている「札幌弁護士会の知恵袋」。
12月の月間テーマは「借金問題(債務整理)」です。
今週は、いくつかある借金整理の方法のうち、「個人再生」を取り上げていきます。
個人再生は、大雑把にいうと「破産」と「任意整理」の中間的な手続です。
住宅ローンを抱えながら、他にもローンを抱えてしまい残高が増えてしまった方、返済余力はある程度あるけれども、借金の総額を返す目処が立たない方などにお勧めの手続です。
自己破産はしたくない、けれども、月々の返済額を返し続けるのは難しいという方は、ぜひチェックしておきましょう。
今週も高須大樹弁護士がわかりやすく解説していきますよ!
放送日 | 2015年12月22日 |
---|---|
ゲスト | 高須大樹 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
債務整理、個人再生、住宅ローン、借金の減額、再生計画案、再生計画の認可、再生計画の取消、弁護士への相談 |
— 今週もはじまりました、「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送していきます。
ゲストは前回と同じく,札幌弁護士会の高須大樹(たかすおおき)さんです。
高須:よろしくお願いします。
第1 個人再生とは
— よろしくお願いします。
さて,4回連続で,借金の問題,債務整理をテーマとして取り上げておりますが,今回はその4回目,最後の回になります。
借金を整理する,債務整理の主な方法としては,「任意整理」「自己破産」「個人再生」という3つの手続がありますが,これまでに取り上げた「任意整理」と「自己破産」を見てきましたので,最後に「個人再生」についての質問を取り上げていきたいと思います。
それでは質問です。
「念願のマイホームを買ったのですが,住宅ローンのほかに消費者金融から借入をしてしまい,いまでは両方の返済で家計が火の車です。マイホームは,夢でもあったので,できる限り手放したくありません。個人再生という方法があると聞いたのですが,どのような方法なのですか。」
という質問です。
まず,個人再生とは,どのように借金を整理する方法なのですか?
高須:「個人再生」とは, 住宅ローンの返済計画を変更したり,住宅ローン以外の借金を減額することによって,持ち家や自宅マンションを手放すことなく借金整理ができる制度です。
ちょうど,ご質問者のようなケースで利用される制度ですね。
— 前回取り上げた「自己破産」だと,持ち家や自宅マンションも,全部取り上げられてしまうのですか?
高須:はい。
自己破産してしまうと,土地や家などの不動産は破産管財人が管理することとなり,最終的には売却されて,「配当」といって,借金の返済に充てられてしまいます。
つまり,自宅を手放さなくてはならなくなります。
— そうすると,自宅を持っている人は,自己破産するのは躊躇してしまいますよね。
高須:そうですね。
持ち家やマンションは,思い入れも強く,手放したくないという理由で,できれば自己破産したくないと思っている人も多くいらっしゃいますね。
— 「個人再生」の制度を使うと,自宅を手放さなくても借金を整理できるのですね。
高須:そうです。
— 使い勝手が良いように思えますが,この「個人再生」とは,どういう仕組みなのですか。
高須:個人再生は,住宅ローンを抱えて借金の返済に苦しんでいる人をむやみに破産させず,自宅を手放さずに生活を再建できるようにする制度です。
住宅ローンのある人のための制度といってもよいくらいです。
住宅ローン以外の担保がついていない借金は減額されますが,住宅ローンはきちんと返していかなければなりません。
— 自己破産に比べて,自宅を手放さなくてよいというのが,「個人再生」のメリットなのですね。
高須:そうですね。
— それ以外にも,自己破産に比べて,メリットはあるのでしょうか。
高須:自己破産手続きの場合には,手続が終わるまで,警備員や生命保険外交員など,一定の職業につけなくなる,資格制限というものがありました。
しかし,個人再生では自己破産のような資格制限はありません。
このような資格制限のある職業に就いている方にとっては,自己破産よりも選択しやすい方法になると思います。
— なるほど。
高須:他にも,自己破産の場合,浪費やギャンブルなどの免責不許可事由があると,免責がされない場合がありましたが,個人再生の場合には,借金の原因に関わらず,申立ができるというメリットもありますね。
第2 個人再生のデメリット
— 浪費やギャンブルで作った借金でも,整理して減額できるのですね。
逆に,デメリットはどのようなことがあるのですか?
高須:住宅ローン以外の借金は減額されますが,無くなるわけではありません。
住宅ローンについても,返済計画を見直すことはできますが,ローンの金額は減りません。
経済的な負担が残るという点が,デメリットでしょう。
— 住宅ローン以外の借金が減額されるということですが,どのくらい減額されるのですか。
高須:具体的には,住宅ローン以外の借金が100万円から500万円の場合には,最大で100万円にまで減額が可能です。500万円~3000万円までの間は,最大で300万円にまで減額が可能です。
また,3000万円から5000万円までの場合には,最大で10分の1にまで減額が可能になります。
— いずれも「最大で」,ということですが,このとおり減らない場合もあるのですか?
高須:はい。
今申し上げたのは,あくまで「最大で」ということです。
お持ちの財産を金銭的に評価した金額が,今申し上げた減額後の金額を上回る場合には,お持ちの財産,すなわち保有財産の価値に相当する額を弁済しなければなりません。
例えば,300万円の借金があった場合,先程の基準からすると,最大で100万円まで減額が可能ですが,200万円の預金があるような場合には,保有財産相当額を弁済に充てなければなりませんので,200万円を弁済しなければなりません。
また,個人再生の手続の中でも,給与所得者等再生手続という方法による場合には,返済しなければいけない金額が大きくなることもあります。
— 必ずしも,思っているほど減額できない場合もあるのですね。
「個人再生」の制度を利用する際には,どのくらいまで減額できるのか,良く確認してから利用した方がよさそうですね。
高須:その通りです。
弁護士に相談すれば,事情に応じて詳しく教えてくれますので,ご安心ください。
第3 個人再生の条件
— 個人再生手続きを利用するための,条件のようなものはあるのですか?
高須:大きな条件が2つあります。
まず,一つ目は,住宅ローンを除いた借金の総額が,5000万円以下であることです。
— 5000万円ですか。
そこまで借りる方は,なかなかいないのではないですか?
高須:そうですね。
あくまで住宅ローンを除いた額なので,事業をやっている方などでない限りは,この条件に該当しない方は,それほどいらっしゃらないかもしれないですね。
— もう一つの条件は何ですか?
高須:もう一つは,「将来に亘って一定の収入の見込があって,住宅ローンを返していけること」です。
サラリーマンはもちろん,事業をしている人でも,一定の収入の見込がある人なら構いません。
— どうしてこのような条件があるのですか?
高須:個人再生は,裁判所が認めた再生計画案に基づいて,一定期間内に免除された借金の残りを分割弁済するという手続なので,収入を継続的に反復して得る見込みがないと,そのような弁済がなされないためです。
第4 個人再生の流れ
— なるほど。
では,個人再生の具体的な手続きは,どのように進められるのですか?
高須:個人再生の手続は,再生手続きの申立,手続きの開始決定,借金額の調査,再生計画案の作成,債権者の議決もしくは意見聴取,再生計画の認可,という流れで進んでいきます。
— 一つ一つの手続きが大変そうですね。
裁判所が再生計画を認めれば,手続は終了になるのですか?
高須:はい,裁判所での手続きは終わりになります。
あとは,申し立てた人が,再生計画通りに借金を返済して行く事になります。
— 再生計画が認可されると,ひと安心,といっていいのでしょうか。
高須:たしかに,裁判所での手続きも終わって,これで取立などに怯えることもありません。
ただ,個人再生の手続では,あくまでも再生計画を守って,きちんとローンの返済をしてくことが大前提になっています。
もし再生計画に沿った返済が出来なかったら,債権者は再生計画の取消を求めることもあります。
この取消が認められてしまうと,借金の減額もなかったことになり,振出しに戻ってしまいます。
— それは大変ですね。
きちんと計画通りに返済して,はじめて安心することができるし,自宅を守ることができるのですね。
高須:そのとおりです。
— 申立をしてから,再生計画の認可までは,どのくらいの時間がかかりますか?
高須:その事案にもよるのですが,標準的なケースですと,再生計画が認可されるのは,申立をしてから約6か月後ということになります。
— なかなか手続きが難しそうですが,個人再生の申立を自分本人ですることはできますか?
高須:自分で行うことも可能です。
ただ,そもそも,債務整理の方針として,個人再生の手続によるのが適切かどうかなどについて,専門的な判断も必要です。
また,おっしゃる通り,手続が比較的難しいと言えますので,個人再生の場合には,弁護士に依頼することをお勧めします。
— まずは,個人再生ができるのかどうかだけでも,相談に行ってみたほうが良いということですね。
高須:そうですね。
個人再生に限らず,債務整理の場合には,できればなるべく早めに弁護士に相談した方が良いと思います。
早ければ早いほど,いろいろな解決方法を取ることができますし,十分な準備もできます。
— でも,なかなか弁護士に相談するというのは,気が引けてしまいますよね。
高須:私たちも,もっと身近に相談できるような環境づくりをしなくてはいけないですね。
費用の点等も気になるかと思いますが,債務整理のご相談は,無料のところが多いですし,弁護士会の法律相談センター等でも無料で相談できますので,少しでも不安に感じましたら,是非ご利用いただければと思います。
— さて,今日まで4回連続で,借金の問題,債務整理の問題を取扱ってまいりました。
高須さん,振り返って,何か言い残したことはありますか?
高須:難しい話ばかりになってしまってすみません。
不安になったらまずは弁護士に相談するということだけでも,頭の片隅に入れておいていただければと思います。
— 髙須さん,本日はありがとうございました。
高須:ありがとうございました。
— 札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士髙須大樹(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士髙須大樹(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年12月22日