周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
第4週は、神村岡弁護士が「医療事故調査制度」についてお話しします。
いざというときのために知っておいていただきたい制度です。ぜひ、お聞きください。
放送日 | 2017年3月28日 |
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ゲスト | 神村岡弁護士 |
今週の放送 キーワード |
医療事故,医療過誤,医療ミス,調査 |
— はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
3月は第1週目から4週連続で,医療トラブルについて取り上げていきます。今回はその4回目で,ゲストは,弁護士の神村岡(かみむら こう)さんに来ていただきました。神村さん,自己紹介をお願いします。
神村:はじめまして。神村です。
今日は,医療事故調査制度についてお話ししたいと思ってきました。よろしくお願いします。
第1 医療事故調査制度について
— よろしくお願いします。
医療事故調査制度という言葉を初めて聞いたのですが, どのような制度なのですか?
神村:病院などの医療機関で医療行為を受けていた患者さんが亡くなって,それが医療事故ではないかと疑われる場合に,医療機関自ら患者さんが亡くなった原因を調査するという制度です。
— 亡くなった場合に限られるのですか。
神村:はい。
— 医療機関が自分で調査するということですが,自分たちのことをちゃんと調査できるのでしょうか?
神村:医療機関は調査のための委員会を設置し,そこに外部の専門家も入れることになっています。しかし,基本的には医療機関が自分で行う調査ですので,医療機関の姿勢によっては十分な調査が行われない可能性もあります。
そのため,医療機関は調査結果を医療事故調査・支援センターというところに報告することとされていて,必要に応じて,同センターは更に調査を行うこともできます。
— 医療事故調査・支援センターというのはどういう団体ですか?
神村:医療法に基づいて厚生労働大臣が定める団体で,医療機関が行った医療調査の結果について分析や調査を行ったり,医療事故の再発防止に関わる活動を行ったりしています。
— なるほど。医療機関とはつながりがない外部団体がしっかり関わっているのですね。
神村:はい。
第2 医療事故調査と遺族の関わり
— ところで,医療機関による調査には,ご遺族は何らかの形で関わることができるのですか?
神村:はい。
医療機関が院内調査を行った後,その結果について遺族からの意見があった場合,医療機関は医療事故調査・支援センターへの報告の中にその意見の内容を盛り込まなければならないとされています。
— 遺族には意見表明をする機会もあるのですね。
神村:はい。
また,医療機関による調査の後で,遺族は医療事故調査・支援センターに再調査を求めることもできます。
第3 医療事故調査と費用
— それはいいですね。
費用は発生するのですか?
神村:遺族が医療事故調査・支援センターに調査を依頼した場合,遺族も一定程度費用を負担することとされています。ですが,その金額は数万円程度と低めに設定されています。医療機関自ら調査を実施する場合や,医療機関が医療事故調査・支援センターに調査を依頼した場合には,遺族が費用を負担する必要はありません。
— 遺族が調査のために多額の費用負担を求められる心配はないのですね。
ここまでお話しを聞いてきて,医療事故調査制度というのはなかなか使える制度だなぁと思いましたが,遺族としては,ご家族が亡くなられて医療事故が疑われる場合には,まずは医療事故調査制度による調査を病院に依頼するべきということになりますか。
神村:はい。まずは医療調査を依頼していただければと思います。
それと同時に,これは今月の第2週の放送で原弁護士もお話しされていたことですが,解剖を実施してもらうということも重要です。解剖はときに死因を特定するための重要な手段になりますが,解剖まではいいですと断って,後で後悔するケースも少なくないのです。
— 解剖というと抵抗のある方も多いかもしれませんが,場合によっては重要な証拠になるのですね。
第4 医療事故調査を医療機関が実施しない場合
— ところで,病院が調査をしようとしない場合には,遺族は医療事故調査・支援センターに調査を求めることができますか。
神村:いい質問ですね。
残念ながら,それはできません。
— えっ,そうなんですか。
神村:医療機関が医療事故調査制度の対象となると判断して初めて,調査が開始され,医療事故調査・支援センターも関与することになります。
先ほど申し上げた,医療事故調査・支援センターへの遺族からの調査依頼についても,医療機関が同センターに医療事故として報告することが前提となっています。
— それでは,医療機関が医療事故に当たらないと判断してしまったら,何も始まらないのですね。
神村:そういうことになります。
— そのような場合,遺族はどうすればよいですか。
神村:まずは,弁護士に相談していただきたいと思います。
— 弁護士さんの方から,院内調査を行うように病院に働きかけていただくこともできますか。
神村:はい。それは可能です。
ただし,病院に調査を要請するのが良いのかどうかは,場合によると思います。
病院が調査に消極的な場合に調査を求めても,適切な調査が行われない可能性が高く,場合よっては重要な証拠が隠蔽されてしまう可能性もあります。
— 病院が証拠を隠蔽してしまうこともあるのですか。
神村:あまり多くはないと思いますが,残念ながら場合によってはそういうこともありえます。
第5 医療記録の証拠保全
— 病院が証拠を隠蔽する可能性が疑われるときは,どうすれば良いのでしょうか。
神村:医療機関が証拠隠滅をするかもしれないと疑われる事案では,証拠保全手続をとることをお勧めしています。裁判所が関与して,証拠を隠したりする時間を与えずに,カルテなどの医療記録を押さえることができます。
— そのような制度も用意されているのですね。
神村:はい。
— 今日は医療事故調査制度を中心にお話しいただきました。
ありがとうございました。
神村:ありがとうございました。
— 札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士川島英雄,弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士神村岡(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士神村岡(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年3月28日