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2022/04/21

子育て終了=夫婦も終了? アラフィフ世代が知っておくべき離婚にまつわるお金の話:北海道新聞 どうしん電子版

札幌弁護士会

※以下の記事は、北海道新聞社のどうしん電子版に2021年10月から12月まで掲載された広告記事となります。
当会が作成に協力したもので、北海道新聞社の許諾を得て掲載しております。

 子どもが大きくなって子育てが一段落。50代前後のいわゆる「アラフィフ世代」には、これまでの不満が溜まった夫婦関係やこれからの自分の人生を考えて「もう我慢したくない」と離婚を考える人が少なくないのではないでしょうか。とはいえ感情に任せて離婚へ突っ走るのは禁物。離婚後の生活を支えるお金についても、きちんと考えておく必要があります。後悔しない人生を手に入れるために、やっておくべきこと、知っておきたいことをご紹介します。

データで見るアラフィフ離婚のリアル

離婚は減少傾向。しかし潜在的な離婚希望者は…?

 2020年の全国の離婚件数は19万3253組で、前年の20万8496組より1万5243組減少しました。しかしコロナ禍に伴うテレワークで夫が自宅にいる時間が増えたことで、それまでやり過ごしていた不満や価値観の違いが浮き彫りになり、将来的な離婚を考えている方は少なくないと考えられます。
 実際に弁護士のもとに寄せられた相談の中には「子どもを自主休校させる・させないといった考え方の違いから離婚を考え始めた」「長引く自粛生活にイライラが募って些細な夫婦げんかが暴力に発展した」など、コロナ禍が引き金となったケースも散見されるそうです。来年以降の離婚件数がどのように変化するのか気になるところです。

子育て終了をきっかけに離婚に踏み切る人が増えている?

 同居期間別の離婚件数を過去30年間の推移でみると、同居20年以上の離婚件数が右肩上がりに増えています。長期間の別居を経た離婚も多いため、データに含まれない数も踏まえると、子どもが成人するようになった年齢から離婚に踏み切るケースが多いことがわかります。
 子育て中は夫に不満があっても「子どものため」と我慢し、教育費の心配や家のローンなどに追われて離婚を諦めている人も少なくありません。しかし子どもが独立して夫婦ふたりの生活になり、過去の夫の言動が「あれはモラハラだった」と気づいたり、夫の退職金のメドが立って財産分与の金額が見えてきたことで離婚を決断するケースも多いのではないでしょうか。
 子育てが終わり、その先の人生に思いをはせて「自分らしく自由に生きたい」という思いが湧き上がるのは、ひとりの人間として自然なこと。中には80代になって「夫と同じ墓に入りたくない」と離婚を選ぶ人もいるほどです。

離婚後の生活を支えるお金をどうするか?

婚姻期間が長いほど財産分与が大きくなる

 離婚後の生活を考える上で重要なのが財産分与です。財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際に分配する制度。婚姻期間が長いほど貯蓄や資産が増える夫婦が多いため、財産分与額は婚姻期間が25年以上になると600万円を超えるケースが約4割に上ります。

 財産分与の割合は1/2が基本ですが、財産形成にあたっての貢献度や過度な浪費など、夫婦それぞれの事情を踏まえて調整されます。
 財産分与にあたっては、共同名義の不動産や共同生活で使用した家具や家財はもちろん、夫婦いずれかの名義になっている不動産や預貯金、車、有価証券、学資保険など、婚姻中に夫婦が協力して取得したと言える財産はすべて対象となります。ただし独身時代の貯蓄や自分の親から相続した遺産などは財産分与の対象外です(特有財産)。
 夫の退職金も「妻は夫の勤続に一定の貢献をしている」という考え方により、財産分与の対象となります。まだ在職中でも退職金の支払いがほぼ確実であれば対象となります。

知っておきたい、年金分割の注意点

 年金分割は、公的年金のうち厚生年金保険と共済年金について、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する年金額を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。国民年金や厚生年金基金・国民年金基金などは対象外のため、夫が自営業などの場合は請求できません。
 夫が会社員や公務員である専業主婦やパートタイマーなどで国民年金3号被保険者の場合、気をつけたい点があります。分割する年金の割合は2008年4月1日以降の記録分については、合意なく分割でき、割合は一律で2分の1と決められていますが、それ以前の記録は、最大2分の1までの範囲で、夫婦の話し合いや調停によって決めることになっています。また、いずれも離婚成立から2年以内に手続きをしなくてはなりません。
 年金分割の調停を申し立てる場合、将来の年金額を計算する上で必要な情報が記載されている「情報通知書」を取得する必要があります。年金事務所に必要書類を提出してから取得まで3~4週間かかるため、早めに申請することをお勧めします。
 調停を行わない場合は、夫婦で年金事務所に出向いて手続きを行わなくてはなりません。円満離婚ならともかく、「もう関わりたくない、顔も見たくない」と思う方も多いことでしょう。きっぱりとけじめをつけて新しい人生へ踏み出すために、年金分割も含めた調停申し立てを弁護士に依頼するのもひとつの方法です。

「離婚」を突きつける前にできることがあります

同居している間に夫の財産情報を確保する

 財産分与を有利に進めるポイントは、夫名義の財産に関する情報を徹底的に調べること。離婚の際に夫が進んで財産を差し出すことはまずありません。預金通帳や株式、生命保険証券などはできるだけコピーを取っておくこと。郵便物から隠し口座のある銀行が判明することもあります。
 給与明細や確定申告の控除項目から知らなかった財産が明らかになることもありますし、夫の収入が把握できない場合は市町村役場で収入証明を取得することも可能です。これらはすべて同居している夫婦だからできること。勢いあまって「離婚」を突きつける前に、できることを粛々と進めましょう。

我慢の同居、覚悟の離婚、そして「猶予の別居」という選択肢

 ここまでアラフィフ世代の離婚にまつわるお金の話をしてきましたが、財産分与と年金分割を行って離婚する人もいれば、結局我慢して今まで通りの生活を送る人もいます。しかし実はもうひとつ、「離婚せずに別居する」という選択肢があることをご存じでしょうか?
 別居中は、夫婦のうち収入が多い方が少ない方の生活費=婚姻費用を分担する義務があります。調停を利用した場合、夫が在職中であればその時点の収入を基に算出され、婚姻費用とする金額を定めます。その後に夫の収入が減って夫から減額調停が申し立てられ変更がされない限り、先の調停で決められた金額が支払われ続けることになります。
 別居したまま法律上の夫婦として人生を終えるかもしれないし、やっぱり完全に縁を切りたいと思うかもしれない。もしかしたら適度に距離を置くことでお互いを思いやれるようになるかもしれない──いずれにせよ、すぐに離婚しなくても夫と離れて暮らすことで気持ちが整理でき、自分にとって最良の選択が見えてくるかもしれません。

離婚問題は法律のプロに相談を

女性弁護士による無料電話相談もあります

 婚姻期間が長い夫婦の離婚は、金銭的にも感情的にも簡単に割り切れないことが多いもの。ひとりであれこれ抱えて思い詰めるより、あらゆる法律の専門家である弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
 札幌弁護士会では「男性には話しにくい」「男性と話すのが苦手」という女性のために、女性弁護士が対応する無料電話相談「ほっとらいん ぶ~け」(以下、ぶ~け)を開設しています。ぶ~けは、2012年に女性特有の問題に応える電話相談窓口として開始されて以来、多くの女性の方々に利用されています。「こんなことを弁護士に聞いて大丈夫かな?」というような気兼ねは要りません。一緒に解決の糸口をみつけられるかもしれません。どうぞお気軽にご相談ください。

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