あなたの知りたいコンテンツのジャンルは?

アーカイブ検索
2013/01/22

今が給費制復活への最大の山場!~「司法修習生の給費制復活を求める市民集会」が開催されました!

司法修習費用給費制維持緊急対策本部 事務局長 瀧澤啓良
ビギナーズ・ネット北海道支部 代表 橋本祐樹

広報委員会

市民集会の目標
ウココロWeb10月25日掲載記事で広報させていただきました,「司法修習生の給費制復活を求める市民集会」について,報告させていただきます。

2012(平成24)年11月3日,「司法修習生の給費制復活を求める市民集会~きみは,なぜ,法律家を目指すのか。」が開催されました。

今回,この市民集会での目標は,(1)市民のみなさんに弁護士の公益的側面を知っていただき,貸与制の移行による弊害および給費制の意義を改めてご理解いただくこと,(2)市民のみなさんに貸与制のもとで修習をする手修生の実態を知っていただくこと,(3)「法曹養成制度検討会議」で給費制の復活を含む経済的支援の在り方が問題となっている「今」がとても重要であることをご理解いただくことでした。

市民集会では,(1)(2)(3)の目標を達成するために,充実した議論や報告がなされました。

パネルディスカッションの概要
パネルディスカッションは,コーディネーターに佐藤のりゆき氏,パネリストに丸山淳士氏(五輪橋産科婦人科小児科病院名誉理事長),飯嶋千尋氏(NHK記者),磯田健人弁護士,高橋智美弁護士の4人を迎えて行われました。

佐藤氏は,聴衆のみなさんを飽きさせないように自由自在に話題を展開しつつも,重要なテーマについては,的確な司会進行で,パネリストの方々のお話を引き出していました。

驚きの現状報告
ディスカッションに入る前の説明において,髙橋弁護士から,「修習終了時には,法科大学院時代から積算して1,000万円もの借金を負っている人が現実に少なからず存在する」と厳しい現状を報告した際,パネリストの方々のみならず,聴衆のみなさんからも驚きの声が漏れました。

追い打ちをかけるかのように,磯田弁護士から,「国税庁の発表によれば,昨年は約4800人の弁護士が年収70万円以下だった」,「昨年12月時点で,修習修了者のうち約2割の就職先が決まっていなかった」などのショッキングな報告がなされました。聴衆のみなさんにとって,これまでの「弁護士」のイメージと異なる事実が,次々と出てきました。

貸与制についての各界からの意見
このような法曹をめぐる状況下での貸与制実施については,パネリストの方々から疑問視する発言が多く出されました。

丸山氏は,「厚労省の8020(ハチマルニーマル)という政策により,歯科大学が乱立し,歯科医の世界はめちゃくちゃになった。司法がこの二の舞になってはいけない」と発言され,法曹養成において国が責任を持って司法を担う人材を育成することの重要性を解かれました。

また,飯嶋氏は,市民の目線から,「通常の民間企業では,研修の費用は当該企業が負担するのに,修習生には税金からお金が出る。このような仕組みになっているのは,修習生の育成が,市民の利益につながっているからだと思う。市民1人ひとりにそれを実感してもらえれば,税金から給費を支出することにも,国民の納得が得られるのではないか」と指摘しました。これは,司法修習が,市民が困ったときに利用する司法制度および司法を担う人材が信頼に足るものにするためにあることを前提に,給費制がこのような司法修習を経済的側面から支えるものであることを,わかりやすく示したのでした。

法曹の公益性
パネルディスカッションにおいては,現役の法科大学院生・修了生3人が登壇し,佐藤氏からのインタビューに答えるというコーナーがありました。

北大法科大学院未修1年の女性は,「自分は東日本大震災のとき,福島県内の実家にいて被災した。避難所で法律相談に取り組んでいる弁護士たちの姿を目の当たりにして感銘を受け,ロースクールに進学した。しかし,震災や原発事故の影響で,学費の工面にはかなり苦労した」と,弁護士の公益活動を通して法曹を目指した志望動機とその後のリアルな体験を語りました。

聴衆の方々の多くは,このような志がある人には,法曹になってほしいと思うでしょうし,このような法曹の育成に税金が投入されることは国民の理解も得られるのではないかと思いました。

きみは,なぜ,法律家を目指すのか。
ビギナーズ・ネットから,「きみは,なぜ,法律家を目指すのか」というサブタイトルに対する回答の意見表明がありました。

11月末から,貸与制の下での司法修習を受ける萱野唯さんから,「困っている人を助けたい,人権活動をしたいと思い,弁護士を目指した。貸与制の下での修習で,弁護士になってから借金を返さないといけないけれど,この志を貫くために,努力を惜しまずがんばる。」との決意表明がありました。

ビギナーズ・ネットによる決意表明

会場の反応
200人が入る会場は,ほぼ満員の盛況っぷりでした。会場からは,佐藤氏のフリに丸山氏がおもしろおかしく答える際にたびたび笑いが起こり,他方で,法科大学院生および修了生が自分の経験や志を述べる際は真剣な雰囲気になりました。パネルディスカッションが充実していたことから,アンケートも多く回収できました。

佐藤氏ファンにも来ていただいたことで,これまでに司法修習だとか給費制という言葉に馴染みのない方が一定数いました。このような方も,アンケートにおいて,「税金をなぜ弁護士になる人だけとパネラーの方も(市民の声として)述べていましたが,私は,本当に必要なことには大いに使ってほしいと思います。無駄遣いがザル水のごとく,目にすることが多い昨今ですが,それくらい,同じレベルでは考えてはならないと思います。」(73歳女性)と感想を述べています。

その他,「この問題の重大性そして深刻性について,強く認識させられた。この問題を早急に解消しないと社会の根幹インフラである司法が機能しない事態が発生する恐怖を感じています。復活できることを強く願っています。」(52歳男性)と,給費制と市民のための司法との関連についての感想もありました。

さらに,「今回の集会で,改めて司法制度に対しての経済的負担の持つ意味,影響というものに気づかされました。それはすなわち,法曹の世界を目指す人たちの志そのものに,経済的な事柄が影響してしまうということなのですね。」(26歳男性)とあるように,法曹の公益的性格について言及する感想もあり,私たちが目指した(1)の目標は一定達成できたのではないかと考えています。

また,「きびしい現実を改めて知りました。是非給費制は復活させて欲しいと思います。苦労し努力している人には応援して行きたいし,国も支援して欲しい。」(78歳男性)とあるように,当事者の声,修習生の置かれている現状報告などを通して,貸与制の下における修習の実情も少しはご理解いただけたと考えております。よって,私たちが目指した(2)の目標は一定達成できたのではないかと考えています。

給費制の今後について
「法曹養成制度検討会議」で給費制の復活を含む司法修習生への経済的援助が話し合われていること自体は,パネルディスカッションでも前提知識で触れられましたし,当日ご参加ないしメッセージ送付の国会議員の先生方からもご意見をいただいていました。ですので,市民集会において,(3)「今」の重要性についても,それなりにご理解いただけたと考えています。

市民集会が終了して,2か月が経ち,「法曹養成制度検討会議」の議論は本当に山場を迎えます。2013(平成25)年1月30日に,給費制の復活を含む司法修習生への経済的援助が話し合われます。

市民集会に参加いただいた市民のみなさんのアンケート結果においては,給費制の重要性を指摘し,給費制復活を求めるものが多くありました。しっかり説明すれば,ご理解いただけるのだと改めて実感しました。

このような市民の声,当事者の声,そして裁判所法の改正審議において「司法修習生に対する経済的支援については,司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し,必要に応じて適切な措置を講ずること」について「特段の配慮」をすることを附帯決議で求めた国会の意思を踏まえて,「法曹養成制度検討会議」は2013(平成25)年1月30日に実質的な議論をしなければなりません。

そして,「法曹養成制度検討会議」において,給費制復活という結論が出ることを期待しています。