執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
平山 誠 弁護士
離婚を考えた時、多くの方はお金について一度は考えると思います。お金に関する「財産分与」や「養育費」という言葉は思い浮かぶかもしれませんが、「婚姻費用」という言葉は聞きなれないのではないでしょうか?
離婚を意識している方は知っておいて損はない法律用語ですので、今日は婚姻費用の簡単な解説をしたいと思います。
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を営む上でかかる生活費を意味します。夫婦が同居して生活している場合には、家庭内で婚姻費用(生活費)を負担し合っていることになります。
ところが、夫婦が別居を開始する際には、婚姻費用を適正に分け合っているかが問題となります。例えば、専業主婦であった妻が子供を連れて別居を開始した場合には、一時的に婚姻費用が不足することとなります。この場合に、妻が夫に、不足する婚姻費用を負担するように求める請求を婚姻費用分担請求といいます。
具体的な婚姻費用の額は、請求する側と請求される側の年収差で判断され、婚姻費用算定表と呼ばれるグラフから、おおよその婚姻費用を計算します。
もっとも、婚姻費用ついては、夫から妻に支払われる額が低すぎるとして批判が多いところでした(男性の年収と女性の年収を比べて、男性の年収の方が高いという統計を前提に述べられたものです。)。こうした批判がある中、最高裁が検討を重ねた結果、令和元年12月23日に、新たな婚姻費用の算定表などが提案される運びとなりました。この新たな婚姻費用の算定表などの具体的内容は現時点では不明ですが、婚姻費用分担請求調停や離婚調停に大きな影響を及ぼすことは間違いないところです。
具体的に、婚姻費用をいくら請求できるかは、年収が多くない方にとって、別居後の生活費を確保する観点から重要な視点です。他方で、請求される側からしても、婚姻費用の額を知らないと別居後の生活に困ることになるかもしれません。
最近、別居を考え始めた…という方は、一度お近くの法律相談センターで、いくら婚姻費用を受け取る、また、支払うことになるのか確認してみてはいかがでしょうか。
以上