執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
平山 誠 弁護士
コロナウイルスの流行に起因する不況の中、勤務先でのサービス残業が増えたという方も多いのではないでしょうか。「サービス残業があるのが当然だ。」という言説は誤りで、法定労働時間を超えて働いている場合には残業代が発生します(ただし、法定労働時間内であっても契約上働くこととされている時間(所定労働時間)を超える「法内残業」にも残業代が発生することがあります。)。具体的には、労働基準法では、原則として週40時間及び1日8時間を越えて労働させてはならないと定められております。この法定労働時間の定めは、正社員、派遣社員、パート等を問わず、労働者に一律に適用されるものです。法定労働時間(1週40時間及び1日8時間)を超える場合、残業代は、1時間あたりの基礎賃金額に25%の割増率を乗じた金額とされております(なお、残業代の割増率に関しては他にも定めがありますが、紙面の都合から割愛いたします。)。
勤務先に対し残業代を請求する場合には、労働時間を立証するために証拠が必要です。例えば、タイムカード、シフト表、業務日報、労働時間管理ソフト、入退館記録、パソコンのログイン・ログアウト履歴等が、労働時間の立証のために有用な証拠といえます。これらの証拠は、勤務先を辞めた後では収集が難しいものが含まれますので、退職する前に、証拠を収集することが重要です。
残業代の請求は、労働者が勤務先を退職した後にも請求できます。もっとも、残業代の消滅時効は、2020年3月以前に発生した賃金は2年、2020年4月以降に発生した賃金は3年となっておりますので、残業代を請求したいと考えている方は、早めに弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
他方で、経営者は、労働者に適法に残業代を支払っていない場合には、ある日突然、労働者から多額の残業代を請求される可能性があることになります。そのような状況を避けるために、就業規則や従業員の労務環境を定期的に見直すことが重要です。
残業代は身近な法律問題の一つですが、いずれの立場であっても、交渉のためには法的知識が要求されます。残業代で気になることがございましたら、弁護士に是非ご相談ください。
以上