執筆:平山 誠 弁護士
最近、自身が亡くなる前の準備として、最後まで自分らしい人生を送るための準備である「終活」をするということが広まってきました。「終活」といえば、遺言を書くこと等を想像される方が多いかと思います。しかし、自身が亡くなるよりも先に訪れることがあります。それは、自身の病気であり、例えば、脳梗塞や認知症等です。このような病気に罹ると、本人は、自らの考えを表明しにくくなる可能性があります。
このような病気に罹った場合、お金の管理等を誰に任せるかを検討する必要が出てきます。本人の判断能力が低下した場合、本人の権利を守るために民法では後見制度が設けられております。民法上の後見制度は、本人の判断能力が低下した後に、親族等が裁判所に申し立てることにより、後見等が開始します。民法上の後見制度は、後見人は、本人の判断能力が低下した後に選任される制度設計であることから、本人の意思が尊重されにくいものになります。
そこで本人が認知症等に罹患した場合に備えて、あらかじめ後見人を選任する方法があります。それが任意後見制度です。任意後見制度とは、本人が判断能力のある元気なうちに、将来の判断能力の低下に備えてあらかじめ自分が選んだ第三者に、自分の生活、療養看護、財産管理について委任する契約を結び、将来、判断能力が不十分になったときに家庭裁判所が選任する後見監督人のもとで支援を受ける制度です。このように、事前に任意後見制度を利用することにより、将来、自身が望まない第三者が家庭裁判所により後見人等に選任されることを防ぐことができます。
また、任意後見制度を利用することにより、予め将来の生活支援体制を具体的に定めておくことができます。例えば、自身が認知症等にかかったとしても、自分の誕生日には寿司屋に連れて行ってもらう…という支援体制を定めることも可能です。
任意後見制度には後見人に取消権がない等のデメリットがありますが、判断能力が低下する前に、自分が信頼できる第三者に、後見人となることを依頼しておくことは、自分らしい人生を送るために重要な準備となるはずです。
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