執筆:平山 誠 弁護士
近年、建物の老朽化や、建物の周辺地域を再開発するために、賃貸人が賃借人に対し、建物から立ち退きを求めるケースが散見されます。賃借人としては、立ち退きに応じるかを判断するにあたり、そもそも立ち退きに応じる必要があるのか、また立退料が具体的にいくらになるのかを予め把握したいと考えるのではないでしょうか。
まず、立ち退きに応じる必要があるかどうかは「正当事由」の有無により決まり、この「正当事由」の有無は、当事者双方の利害関係や建物の利用状況、その他の諸事情を総合考慮して判断されます。先ほどの例で挙げた建物の老朽化や周辺地域の再開発という事情だけで正当事由が当然に認められるわけではなく、その他の事情を総合的に考慮して判断されることになります。
他方で、「正当事由」には、立退料も考慮要素に含まれます。実は立退料には、定まった算定方法があるわけではなく、仮に訴訟になったとしても、立退料は裁判所の裁量で決められることになります。主に用いられる算定方法として、①「移転のための実費・損失の補償額から算出する手法」、②「賃借人の地位(借家価格)の財産的価値を算出する方法」③「①と②を総合考慮して判断する手法」等が存在します。この点については具体的な事情に基づいて判断することとなりますが、一例を挙げますと、建物で事業をされている方のケースでは、事業を継続できた場合に得ることができた利益を立退料として主張することが想定されます。
立ち退きは、賃借人の生活、事業に大きな影響を与えるところですので、立ち退きに応じるか否か、仮に立退きに応じるとしても立退料の金額をどのように主張するかは重要となります。建物からの立ち退きが問題となった場合には、早い段階で、法律の専門家である弁護士に、正当事由の有無や立退料に関してご相談されることをお勧めいたします。
以上
※ 5月10日付で日高報知新聞に掲載されました内容に誤りがありました。
また、12日付で同紙において訂正の記事を掲載しております。
お詫びして訂正いたします。
誤「高田英明法律事務所 大山洵弁護士」
正「浦河ひまわり基金法律事務所 平山誠弁護士」