執筆:平山 誠 弁護士
1 誰もが一度は医療機関に通ったことがあるかと思います。医療機関が身近であることからすれば、医療機関とのトラブルも身近な事件の一つに含まれるのかもしれません。他方で、医療事件は、通常の民事事件とは異なる特徴がある分野です。
2 まず、医療訴訟は、一般事件に比べて、原告の勝訴率が低いという特徴があります。
医療訴訟以外の民事事件の認容率は約61%であるのに対して、医療訴訟の認容率は約22%にとどまっています(この数字だけを見れば、医療訴訟の勝訴率がかなり低いですが、訴訟提起前に和解しているケースがあると考えられるため、必ずしも絶対的な数字とはいえないことに注意を要します。)
医療訴訟の勝訴率が低い理由として、医療訴訟に高度の専門性が要求されることや、重要な証拠であるカルテ等の医療記録が医療機関に保管されており、患者側がすぐに医療記録を確認することができない等、複合的な要因が挙げられます。
また、医療訴訟の平均審理期間は約2年です。これは、通常の民事訴訟の平均審理期間が約8ヶ月であることからすると、医療訴訟の審理期間が長いことがわかります。
3 このように、医療訴訟は、勝率が低い上に審理期間が長いことから、当事者は医療訴訟を提起することそのものにハードルを感じるかもしれません。そのため、医療事件では、すぐに訴訟提起をするのでなく、カルテの開示を含めた事前調査をすることや、裁判提起前における医療機関との交渉が重要となってきます。
4 医療事件は、専門性が高く弁護士の能力が問われる分野です。札幌弁護士会法律相談センターでは、特定分野別弁護士紹介制度という特定の分野に積極的に取り組む弁護士を紹介する制度があります。医療事件について相談されたい方は、同制度のご利用をご検討ください。
以上