執筆:平山 誠 弁護士
新型コロナウイルスの流行により影響を受けた中小企業の資金繰りを支援するために政府が設けた、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済開始が令和5年6月以降から本格化しています。物価高騰や人手不足等で資金繰りが悪化した企業が、ゼロゼロ融資を返済することは簡単なことではありません。
経営者の中には、会社を破産させることを考える方もいるかもしれませんが、その名のとおり破産はイメージが悪く、経営者が破産を決断できないまま時間が経ってしまうケースも見受けられます。
しかし、私個人としては、法人破産を選択した経営者は、困難な状況下で、経営者としての最後の責任を果たしたと考えています。その理由は、法人破産にはメリットがあるからです。
まず、会社に破産手続が開始した場合、従業員は未払賃金立替制度を利用できるというメリットが存在します。会社が資金繰りに苦しむ際、従業員の給与を最後まで支払えない可能性がありますが、この制度は、一定の要件を満たした場合に、国が労働者に対し、給与や退職金の一部を支給する制度です。したがって、経営者は会社の資金繰りが危機に瀕した状況では、従業員を守るために破産を選択することが賢明な判断となります。
また、債権者は、債務者が破産した場合に、債務者に対する債権を貸倒損失として損金処理をすることもできます。債権者にとって、長期間返済できない状況が続くのであれば、むしろ破産を選択してくれた方が、都合がいいという側面があるのも事実です。
経営者が、会社を破産させることで、取引先や従業員に迷惑をかけることを恐れることは理解できます。他方で、会社が置かれている状況によっては、会社破産を選択した方が関係者にとってメリットがあるケースも考えられます。もちろん、最初から破産を検討する必要はないのですが、最後の選択肢である破産について正しく知ることは、経営者にとって重要だと感じています。
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