声明・意見書

集団的自衛権行使等を定めるいわゆる新安保法制に反対する会長声明

 政府・与党は、今通常国会において、集団的自衛権の行使を可能とするために、自衛隊法等を改正するとともに、新法を制定しようとしている(以上を包括して「新安保法制」という。)。

 新安保法制は、これまで憲法に違反するとして認められていなかった自衛隊の活動を可能とするものである。すなわち、新安保法制は、我が国が攻撃されていない場合にも自衛隊による実力の行使を認め(自衛隊法、武力攻撃事態及び存立危機事態安全確保法)、周辺事態に当たらない場合であっても米軍及び米軍以外の他国軍隊に対する支援を可能とし(重要影響事態安全確保法)、一部の活動については現に戦闘行為が行われている現場での実施も可能にするものである(国際平和支援法等)。

 そもそも、憲法前文及び第9条は、我が国が先の大戦とそれに先行する侵略と植民地支配によりアジア諸国をはじめ内外に多大な惨禍を与えたことに対する深い反省と教訓に基づき、戦争及び武力行使を放棄し、軍隊を保持せず、交戦権も認めないという徹底した恒久平和主義に立脚している。

 当会は、昨年7月1日になされた「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」との閣議決定(以下「本閣議決定」という。)について、恒久平和主義を定める憲法前文や第9条及び立憲主義に反するもので違憲無効であるとの会長声明を発し、本閣議決定を前提とする立法の成立阻止に向け取り組むことを表明した。
 新安保法制は、集団的自衛権の行使を認め、周辺事態以外の事態においても米軍及び米軍以外の他国軍隊の支援を可能にし、自衛隊による戦闘現場での活動などを可能にする点で、まさに本閣議決定を前提とし、その具体化を図るものである。
 したがって、新安保法制は、これらの点において、本閣議決定と同様、憲法前文や第9条に反し、許されないものである。

 68回目の憲法記念日に当たって、当会は、社会正義の実現と基本的人権の尊重を使命とする弁護士会として、人権保障の前提である恒久平和主義に抵触する新安保法制の制定に強く反対し、戦後70年を迎えた今、政府・与党が深い反省と教訓に基づき、平和憲法の理念の下に、他国との対話による平和構築に向けた積極的な取り組みをなすことを強く求めるものである。

2015年(平成27年)5月3日
札幌弁護士会
会長  太田 賢二

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