交通事故ストーリー その1

主婦の「賃金センサス」は旦那の給料より高い!?

布団、干そうかな。

雲間から差した光に気づいた私は、子ども部屋のある2階に向かう。夫と小学生の子どもを慌ただしく送り出すと、私ひとりの一日が始まる。どこにでもある平凡な、でも幸せな一日。
物干し竿に布団をかけるのに少し手間取る。私の左腕は肩より上に上がらない。 一休みして、今度は掃除機を取りに行く。左足を引きずりながら。

私が事故に遭ったのは3年前のことでした。
夫の運転する車の助手席でウトウトしていた私は、一瞬の衝撃と悲鳴で目を覚まし、それからすぐに意識を失いました。次に気がついたのは、病院のベッドの上でした。

信号無視で交差点に突っ込んできた相手の車は、そのまま私が乗っていた車の側面に衝突したそうです。一緒に乗っていた夫と子どもは打撲ですみましたが、私は緊急手術を受け、それから約2ヶ月間の入院することになりました。退院してからも、リハビリや検査のために通院することになり、自宅では家事もできずにほとんど横になっていました。
退院して半年が過ぎたころ、主治医から症状固定を告げられました。リハビリに頑張ってきたのに・・・私の左腕はこれ以上あがらず、子どもと一緒に走り回ることもできないのです。涙が頬を伝いました。

自賠責から後遺障害の等級認定を受け、相手方が入っていた任意保険会社から示談の申し込みを受けました。治療費、通院交通費、慰謝料、一つ一つの項目と金額を追っていった私の目は、「休業損害 なし」「逸失利益 なし」と書かれたところで止まりました。
主婦の方は収入がないので休業損害や逸失利益は認められないんですよ、問いかける私に、保険会社の担当者はそう答えました。毎日の料理、掃除、洗濯・・・一日働いていても、主婦の仕事は評価されないんだな、モヤモヤしたものを抱えながらも、そのときはそう思いました。

弁護士に相談してみよう、きっかけは、買い物に出かけた駅の広告でした。交通事故の相談は相談料無料、看板にはそう書かれていました。
主婦の仕事が評価されないなんてとんでもない、賃金センサスというもので計算するんです。 賃金センサスでやってくださいと言ってみなさい。少し声の大きい弁護士さんは、私にそうアドバイスしてくれました。
聞き慣れないその単語を保険会社に伝えると、担当者は驚いた声を上げました。 そして、1週間後には新しい示談額の提示がありました。「休業損害」「逸失利益」、主婦である私の仕事が、正しく評価されていました。私は、その提示額を持ってもう一度弁護士さんのところに相談に行き、弁護士さんの説明を聞いて納得し、示談書にサインをしたのです。

夫が帰ってきた。今日はちょっと機嫌が悪い。慣れない手つきで家事を手伝ってくれる夫だが、たまにはこんな日もある。 そんなとき、私は少し意地悪して言ってみたくなる。知ってる?私の賃金センサスはあなたのお給料より高いのよって。

その他のページ

法律相談センター 交通事故相談ページ