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2012/10/31

北海道弁護士会連合会定期大会記念シンポジウム 「再生可能エネルギー基地北海道-北海道の新たなる可能性-」報告

弁護士 芦田 和真

公害対策・環境保全委員会

4 パネルディスカッション

最後に,3人のパネリストと菅澤紀生委員(札幌弁護士会)を交えてパネルディスカッションが行われました。

始めに,そもそも再生可能エネルギーは頼りになるのかというテーマで討論が行われました。

再生可能エネルギーは,気候条件に左右されやすく安定供給が難しいのではないかという意見がありますが,これに対しては,基調報告で述べられたスペインの一括制御システムが参考になりますが,太陽光が使えない夜間には風力で補う等様々な電源を効率よく使うことが重要で,総合的に見れば気候条件による影響は平滑化されるということでした。

また,電気料金が値上がりするのではないかという指摘に対しては,確かに再生可能エネルギーの導入により一時的には上昇するものの,反対に,現在の電気料金に含まれている原発開発のための電源開発促進税や,化石燃料価格の変動によって電気料金が変わる燃料費調整制度の影響も低下するため,電気料金を下げることも十分可能であるとのことでした。

さらに,コスト面の問題については,今後の技術革新により風力や太陽光の発電効率はまだ上昇の余地があるとのことで,コストカットの余地は十分にあるとのことでした。

次に,制度設計,インフラ整備等の問題について議論がされました。

まず,固定価格買取り制度は,再生可能エネルギー普及促進の目玉となる制度ですが,梶山氏によれば,今回の買取り価格設定は高額であるとの指摘があり,この価格が何年も維持できるものではないとのことでした。

また,特に風力発電に関しては北海道では道北地域の送電網が不十分であるという問題があります。

これについては,公的な負担をしてでも再生可能エネルギー拡大のためのインフラ整備を進める必要があるとの指摘がある一方で,資源エネルギー庁の試算では1300億円の設備費用がかかるとの指摘もあり,他方,鈴木氏の試算では国鉄の軌道跡地に建設すれば400億円くらいで済むとの指摘や,何でも役所任せにすると高コスト体質から結局費用が高くかかってしまうという梶山氏の厳しい指摘もありました。

三つ目に,熱エネルギーの利用促進について議論がされました。再生可能エネルギーというと電気ばかりが注目されがちですが,実は熱エネルギーも非常に重要なエネルギー源です。

この点については,熱エネルギーの普及促進が急務であるとの見解で一致しました。特に北海道では林地残材が豊富にあるためいくらでも利用可能であり,木質バイオマスに対してもっと関心を高める必要があるものの,専門的に助言を出来る人がいなく普及が進んでおらず,非常に勿体ないとのことでした。

また,発電の際に生じる余熱の利用,いわゆるコージェネレーションについても日本では関心が少なく,これについても早急に利用を促進する必要があるとのことでした。

最後に,日本における再生可能エネルギーの普及は固定価格買取り制度の実施が決まり,ようやく本格的に始まったものの,技術・知識の共有が乏しいため統一的な普及が出来ておらず横断的な活動が必要であること,国による経済的支援は必要だが高コスト体質に繋がりかねないこと,熱エネルギーの利用についてはまだまだ改善の余地があること等が指摘され,特にエネルギー資源が豊富な北海道においては,自治体を含めて経済,環境の横断的な活動が必要であることが指摘され,閉幕しました。

5 感想等
参加者の感想は概ね好評で,特に海外視察の基調報告や,再生可能エネルギーによる地域経済の活性化などのテーマについては,「興味深く勉強になった」,「もっと細かく知りたい」,「地域の活性化の視点がよく分かった」との好意的な感想が多数寄せられました。

また,今後の再生可能エネルギーの導入についてという質問に対しては,太陽光パネルやペレットストーブの設置,市民風車への出資を検討したいという回答も少なからず見られ,参加者の中には実際に再生可能エネルギーを積極的に利用したいと考えている方もいらっしゃることが窺えました。

6 まとめ
再生可能エネルギーの普及はタイムリーなテーマと言うこともあり,平日の午前開催にも拘わらず多くの方々にご参加いただきました。

今回のシンポジウムを通して,北海道における再生可能エネルギーの潜在性が非常によく分かった一方で,地域経済の活性化という視点からすると,これをただ拱手傍観しているのではなくもっと積極的に普及促進活動をしていく必要があるのではないかと,強く感じさせられました。

午後の道弁連定期大会では,再生可能エネルギーの普及促進に関する提言が採択されましたが,今後は各弁護士会,各弁護士一人一人が,再生可能エネルギーの普及促進を自らの問題と捉え,積極的に関わって行く必要があると感じられました。

皆さんも,自宅に太陽光パネルや,ペレットストーブを設置してみませんか。

以 上